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#2 そうそう『わたしをOyOyにつれてって』

われわれが、OyOyのおいしさに迫るために必要な資料がある。それは、お店のメニューに書かれている説明文だ。(インスタグラムに載っている場合もある)

例えばこんな感じ。

【甘酒とココナッツのぜんざい】
自家製の甘酒に豆乳とココナッツミルクを加えて作ったベースに、キウイのジャムを加えてつくったあんこ、レモンのコンフィ、香ばしく焼いたもちをトッピング。
甘酒のさわやかなお米の甘味と小豆のホクホクとした食感、ココナッツやキウイのトロピカルな香りが華やかでたのしい、お正月にぴったりのデザートです。
(2022年12月30日投稿分より引用)

レシピ本などがない現状においては、これが唯一の公式解説であり、僕はこれを、おいしさの秘密に迫るための、重要参考文献と呼んでいる。各自、食べる前には熟読するように。(この一覧をまとめたものがほしい)

さて、いま紹介した「甘酒とココナッツのぜんざい」。これは前回僕が、「おいしさに衝撃を受けた」と書いたもの。なので、推し活をはじめるにあたって、まずはこのぜんざいを紹介したい。

先ほどの文献を読むとわかる通り、これは「正月のぜんざい」だ。けれど使われている材料は、実家で食べていたあのぜんざいとは、明らかに様子が違う。ココナッツ、キウイ、コンフィ…田舎から急に都会に出てきて、目に映るものを片っ端からファッションに取り入れてしまった若気の至り、みたいな雰囲気が漂う気がしなくもない。

しかし、それは杞憂に終わる。僕が食べた当時に書いた日記があるので、それを見てみよう。

自家製甘酒に、ココナッツミルクと豆乳を加えたベース。具は、香ばしい焼き餅。トッピングには、キウイジャム入りあんこと、レモンのコンフィ。添えに塩味の昆布。

はい?と思うでしょう??ごちゃ混ぜインパクトスイーツかと思うでしょう??でも違うんです。
はじめましてなのに同居する安心感と、調理科学の上に建つ頑強性と、ギリギリ立っているジェンガ後半戦のようなバランス感覚。食べながら「これは天才」と言っちゃうおいしさでした。

「ココナッツの油脂分で土台を作って甘酒とあんこという甘々コンビに、キウイの酸味を合わせることで… 」
感動したときには、ナゼウマイカ?を語り出すというクセも発覚するくらいです。
OyOyさん、これがお正月限定って寂しすぎますってー(2023.1.5)

年明けそうそう、だいぶ浮ついている。このときは友だちを含めた4人で食べに行ったのだけど、食べながらずっと「これは天才」と連呼していた。なにをそんなに、と思うかもしれないが、ちゃんと理由はある。

そもそもぜんざいは、小豆と砂糖の「甘味」を楽しむ料理だ。塩を入れたとしても、それは甘みを引き立たせるものであって、味覚的なおいしさのほとんどを「甘味」が構成していることには変わりない。

しかし、OyOyぜんざいは、この構造をリノベーションする。ココナッツミルクとキウイ。油脂と酸味。コクとアクセントと言い換えてもいい。ヒトがおいしさを感じる要因を、臆することなく加え、ぜんざいの新しいおいしさを問うてくる。

しかも、このふたつを活かすために、もともと強い甘さをもつ砂糖を、やさしい甘さの甘酒に変え、味のバランスを整えている。このセンス!

さらに、酸味を足すと言っても、柑橘系をのせるだけではなく、あんこに、キウイジャムを入れちゃう。ぜんざいの人格部分であるあんこに、もう酸味を加えちゃう。このセンス!(食べたことある?キウイジャムを入れたあんこ。僕はこのあと家で作って、パンに塗って食べたよ)

文献には「トロピカルな香りが華やかでたのしい」とあるけど、まさにその通り。こんな感情が動くものを、楽しいというほかない。年が明けて、せっかく外で食べるのなら、家の落ち着いた味とは異なる「ハレのぜんざいを」という作り手の思いが、思い出しても伝わってくる。

そしてあまりにおいしいと、ヒトって二杯目を考えちゃうらしい。(もっと食べたい、まだ食べられるもん…)食べながら、そう内省していた。自分でびっくりする。でも、全員が食べ終わったタイミングで、次の予定もある場面で、追加注文する勇気はなかった。(ほ、ほら限定商品の買い占めはよくないし)

きっと、このときの腹六分目ぐあいが、今も僕を動かしている。OyOyの方向に。

(※年末年始メニューなのであしからず!)

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