ペドロヒメネスと台風接近
毎日かなり遊びまわっていて、充実している。バカンスにでも来たのかよ。そんな数日を過ごしたものだから、今日も今日とて部屋になど篭っていられない、たとえ台風だとしても。ファンデーションを塗るのが面倒だったので、リップとチークを塗りたくってメガネで誤魔化して家を出た。そんなナリでも、艶っぽいねえ、と、この街の長老に褒められて気分が上がる。ウフフ。最近、やたらとみんなが私を褒めてくれるような気がする。それに対して、1ミリも謙遜せずに「どうもありがとう!」とニコニコで応える。いや、都合のいいものだけ覚えているお調子者だから、褒められたことしか覚えられてないのかもしれない。今日はもう終わりだから、明日から気をつけよう。田辺聖子さんを読みながら、シェリーを頼む。気取ってやがる。シェリーは、とてもとても甘いペドロヒメネスに。これ、ベタべタに甘いですよ?と忠告を受けたけど、いーのいーの、私はコレが飲みたいの、と聞き入れなかった。でも!これは、本当に、めちゃくちゃに甘い。耐えきれず氷を入れてもらうと、キシッとすぐにヒビ割れてみるみる溶けていく。黒糖やキャラメルや蜂蜜を溶かして飲んでいるみたい。この世の甘いものすべてがこの液体に入ってる。口のまわりもベタべタしてきた。…今誰かとキスしたら、めちゃくちゃ甘いって言われるだろうなあ、などとエロいことを考え始めていた。大人しく黙っている時ほど、人の頭の中はカオスになっている。歯が溶けそう、喉は既に溶け始めてる、でもなんだかチビチビ飲んでしまう。やめられないのってこういうものかもしれない。氷を入れてるけど、糖分摂取量は変わらないし、なんならズルズル長引いてこれはなんだか、よくないことのように思ったりする。でも、なぜか後悔なんてしていない。台風がどんどん接近してきていてムッとした空気に街は包まれていた。いよいよ雨が降ってきた。まだ口に残っているペドロヒメネスのくどくてしつこい甘さと良く合っていると思った。ベロが黒くなってた。吸血鬼になった気分。
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