現実
GrimesのREALlTiを聞きながら、夜の街をふらふらすると、彼女のミュージック・ビデオさながらの体験をすることができるのよ。しばらく聞いてなかったけど、やっぱり良い曲だと思い知った。ビデオとアルバムでは、アレンジが少し違うの。最初はビデオの方に耳が慣れていたけれど、今はアルバムの編曲の方が自然に聞こえるわ。
それでね、横断歩道の赤信号で立ち止まって、彼女の音楽を聞いているとね、私ったらどうして、一体なぜここ居るのだろうと思って、それが全く分からなくなるの。ほとんど全てのことを知らない、分からないって、急に気付いてしまうの。
それなのに、数え切れないこれまでの、何一つ忘れられないことが、確かに目の前に見えるのは、とても不思議だと思わない?夢か現か幻か、大昔の人が言ってたような言葉が、平気で私の頭をよぎるわ。
私は彼女の、素晴らしい楽曲や強い信念、それに伴って貫くスタイルを尊敬し憧れているのだけど、それ以上に、彼女に共感を覚えるの。尤も、生粋のポップミュージシャンであるから、リスナーにそう思わせる計算があるのかもしれない、けれどね、たった一人きりで、部屋の中で作っているイメージが私の中にずっとあるの。それって私自身のことだって、思っちゃうの。
彼女の醸し出す孤独に対して、私は共感しているんじゃないかって、ずっと思ってる。それも変な話よ、孤独に共感するって。人の数だけある孤独が、同じなはずないのに。でも実際に、街の中を一人きりで歩いて、イヤフォンでREALlTiを聞くと、共感してしまうの、とても勝手にね。
さっき、私がなぜここに居るのか分からないって言ったじゃない?今ね、それで良いのだと、話しながら気付いたわ。多分、過去も未来も現在も同じ空間にあって、その空間っていうのが現実で、全て現実のなかに存在してるって、何となく今、ピンと来た。だから、どこにいるかなんて、誰にも分からないのかもしれないわね。
私たちはみんな孤独だけど、同じ空間に存在している、それが現実よ。ただそれだけが現実。