ポートレート
なるべくコンパクトフィルムカメラcontax T3は持ち歩くようにして、メモのようにスナップを撮っている。愛用二眼レフ、ミノルタオートコードを持ち歩こうといつも思うのだが、結局かさばってしまうのが嫌だな、と思ってとりあえずT3をカバンにボスッと入れてしまう。人それぞれスタイルやファッションがあるように、使用するカメラにもライフスタイルが浮き出る。
コンパクトカメラのいいところはシャッターボタンを押せばいいだけなので、誰にでも託せる。ねえ、ちょっと撮ってください、と他人に言えるのが良い。二眼レフは説明しなければならないので、託しづらい。
そういうわけでたまに撮ってもらう。このとき、いつもはカラーネガなのに、なぜかモノクロフィルムを入れていた。多分部屋に余っていたものを持ってきた。一回モノクロで撮ると、何回かハマってモノクロフィルムを連続で使うが、いつの間にかカラーネガにまた戻っている。その繰り返しだな。
現在、新宿御苑のPlace Mで瀬戸正人さんの展示、「Silent Mode 2018 vol.4」が開催中、女性の顔のポートレートで、私の顔も額に入っている。瀬戸さんの撮影を実際に被写体として体験して、とても刺激になった。というか、かなり影響を受けて、ポートレートに興味が湧いた。
正直、これまで人の顔を撮ることや写真として見ることに、ほとんど興味がなかった。友人や家族の写真は何度でも見れるが、知らない人の顔の写真を見ても「あ、そう」と思うだけで、それ以上何か考えることもなく目の前を通り過ぎていった。
実際、瀬戸さんの作品を瀬戸さんに説明されながら見ていて、また、プリントされた自分の顔を見て、人の顔という存在に対して、何か不思議な気持ちを持つようになった。家族の思い出とか、写真としての記録とか、そういうものではない、何かよくわからない物体に思えてきた。これまでポートレートに興味を持てなかったことは明確に説明できるのに、興味を持ち始めたらどうして気になるのか、明確にはよくわからないのも不思議だ。
よくわからない不思議な気持ち、というものを大切に抱えつつ、ポートレートも撮影していこうと思う。
瀬戸正人さんの展示は、8月12日(日)までです。