タイム・オーバー
期限切れのフィルムを見つけた。これは姉が学生時代に使いそびれた一本のフィルムだと思われる。女子高生がみんなフィルムカメラを持っていた時代の名残である。これは期限切れのフィルムであるが、どんな写りになるのか気になって、試してみたのであった。
仕上がりを見たら、昭和レトロと言われている私の故郷が、本当にいつの時代なのか分からない風景になっていた。青はより青く、粒子が粗く散りばめられている。光の粒が同じではないことを感じる。
期限が切れたら使えない、なんてことはない。最高のコンディションとは言い難いが、それはまたそれで良いと思う。むしろ、私が見つけたタイミングでしかこのような写真は撮れないのである。ベストタイミングなのであった。
シャッターを切る瞬間はいつか、何を思って撮るのか、と友人に聞かれた。正直自分ではよくわからない。テーマを決めて撮ることはあっても、シャッターを切る瞬間まではさすがに計算できない。だからほとんど撮らされている。全てのことは私の意志ではない、他のものによって突き動かされているかもしれない。2年前くらいに『タイム・オーバー』というタイトルで、私は一気にzineを作った。これは期限切れという意味ではなく、時間という概念を超えていくという意味である。
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