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血と家から考えるアイドリッシュセブン⑩(ネタバレ)

【アイナナ考察記事についてのお願い】
・「二次創作」としてお読みください。ストーリーの展開を保証するものではなく、公式やキャラクターを貶めようとするものではありません。
・アイナナに関するすべての情報を把握しているわけではありません。個人の妄想と願望を大いに含む、一解釈であることをご理解ください。

アイナナ6部のストーリーがついに公開された。
来年公開かな?なんて思っていたら、5部終了から半年もたたずに開始されてしまい、心の準備はもちろんできていない。

一方で、私の中では「ゼロ」が七瀬陸と九条天の歌声で締めくくられ、ゼロの魂の鎮魂、ゼロ時代が終わったことで、本作に対するモチベーションがかなり低下してしまったのも、正直なところだ。
(私の中では5部ラストできれいなラストと言う感じ…)

とはいえ、彼らの行く末は見届けたい。残された問題もまだある。
もう考察記事は書かなくてもいいかな…と思いつつも、気になるところだけはちょこちょこ書いていこうかなと思っている。


今回は、TRIGGERと「父」というテーマで駄文を書き散らそうと思う。アニナナの「願い…」の回もちょうど放映されたし、タイミングがぴったりではある。

いつも通り、大変なネタバレと妄想を含むため、苦手な方はUターンをお願いしたい。また、文章中の画像はすべて©アイドリッシュセブンより引用している。

当シリーズの前回記事は↓ なんとまあ、もう10記事も書いているらしい…(お付き合いいただき、本当にありがとうございます)


1.彷徨う船―TRIGGER

3部終了時からしつこく言っているのだが、私はTRIGGERを一艘の船だと考えている。
(詳細は過去記事を参照していただきたい)

簡単に言えば、
船本体:龍(居場所、土台)
動力:楽(リーダー、先鋒)
帆:天(センター、シンボル)

だと思うのだ。

だから三人は龍の家で同居をするのだし、天が折れないように楽と龍は守るのだし、三人が出会ったバーは「DEEP RIVER」なのである。

それを最も象徴する楽曲は「願いはshin on the Sea」なのだが、それ以外でも「水」要素が多い。バラツユも、SUISAIも、DESTINYも、なんらかの水要素が、歌詞やMVに出てくる

そして、「願い…」の龍独唱以降、TRIGGERという船は水底に沈んでいた。
「野良」として活動を再開しても、帰るべき港も、行く先すらもない。
これは完全に、「流離」だ

追い風も、補給物資もなく、航路すらわからない航海だったが、彼らはその身ひとつでどうにか道をこじあけた。
それが「クレセント~」のオーディション突破と成功であり、「ゼロ」の大ヒットにつながった。

ところで日本文学には、聖なる存在が鄙に流離するという話型がある。「貴種流離譚」という。
4部~5部ラストのTRIGGERはまさにこれだったのだ。
一級品だからこそ、罪を背負って、彷徨った。彷徨って試練を経験し、強化されて戻ってきた。
彷徨ったからこそ、TRIGGERが一級品であることが、世に知らしめられた。

5部ラストまでのTRIGGERを、私はこう考えている、ということをまずは述べておきたい。
そして6部2章では、彼らは八乙女事務所に戻った。
つまり、拠点となる「港」を得たことになる。

大航海は、これからである。


2.八乙女楽と「父」

TRIGGERの凱旋を考えるうえで、避けて通れないのは「父」の問題だ。
これも繰り返し書いているのだが、彼らは全員「父」に何らかの問題を抱えている。
(詳細は過去記事も参照してほしい)

これが6部2章に至って、ようやく収束してきていると感じたのが、最もうれしかった。
「血」と「家」をテーマに本作を俯瞰すると、父親関連はなかなかしんどい問題だったので、TRIGGERがそこから一歩踏み出せるのは本当に喜ばしいことである。

まずは八乙女楽から考えていこう。

八乙女楽は、「父親に認められたい」という承認欲求から、アイドル業を開始している。
だから「俺が金になるから引き取られたんだ…(=アイドルとして価値がなければ、楽自身にも価値がない)」という考え方にもなった。
それでもアイドルをやめなかったのは、「父親に認められたい」というもっとも強い欲望、原動力があったからにほかならない。

5部終盤、「ゼロ」のゲネプロ終わりに、宗助は楽に「よくやった」と言っている。


これはアイナナの長いストーリーの中でも、はじめてのことであっただろう。
八乙女楽の頑張りが実を結んだ瞬間である。
そして、「父親のためのアイドル」が、ようやく終わった瞬間でもあった。

「野良」になったことで、八乙女楽は、いかに父親の恩恵を受けてアイドルをしていたかを痛感したはずである。
その証拠に、4部以降は「金儲けのことしか考えてない…」といった反発はもちろんなくなったし、宗助への態度もかなり軟化した。
6部2章では、なんと「自社ビルを守った」こと(=がむしゃらに金策に走ったこと)を、八乙女楽がねぎらっている。こんな日がこようとは。


TRIGGERとの再契約にあたり、宗助は「今度こそおまえたちを守り抜く」と発言しているが、今後は形を変えるだろう。

宗助がTRIGGERを守るように、
楽もTRIGGERを守るし、そして、八乙女事務所(=宗助)も守るのである。

父を知り、父に認められたから、ようやく八乙女楽にはそれができるのだ。
言うなれば、八乙女楽は単純に、父のことが知りたくて、アイドル業を頑張ってきたのかもしれない。それがかなった今、ようやく真の八乙女楽のはじまりである。

「父」問題からの解放、おめでとう!八乙女楽


3.十龍之介と「父」

最近家族の話があまり出ていなかった龍だが、彼も5部ラストで転換点を迎えている。
龍の場合は、父だけでなく「兄弟」のことも考えねばならない。

まず、「ゼロ」の終演後、三人の弟たちに、めちゃくちゃにほめたたえられていることを押さえておこう。花巻すみれスキャンダルやセクシー路線のプロデュースのせいで、龍は弟たちにもろ手を挙げて褒められた存在ではなかった。
それが完全に、「自慢の兄貴」になったのである。

兄として、いや、父のかわりとして弟たちとの関係性を模索しながら、頑張ってきた龍が報われた瞬間であった。
と、同時に、頑張って「兄」「父」になるターンが、終わったともいえるのである。

そして、6部2章。
八乙女事務所と再契約をはたした龍は、宗助に言う。


「今は面白い人生を授けてくださったことに、心から感謝しています。八乙女社長は、俺の第二の父親のような人だと思っています」

常套句のようだが、重大な発言だと私は思った。

そもそも龍には、父親が二人いる。

漁師である実父
ホテル王である養父

実態としては実父を継承しているのだが、アイドルとしての龍は養父の属性を纏っている。
これまで、ホテル王と自分との乖離に悩んできたのが、龍だった。

ところが、この「ホテル王の息子(=セレブ、セクシー?)」の解釈を、龍は大きく変更している。

ホテル王に養父によって生じた偶然の産物ではなく、
八乙女宗助により授けられた、「龍のための、龍だけの、面白い人生」だと捉えているのだ。
そして、養父ではなく、宗助を「第二の父」と称した。

言い換えれば、十龍之介はようやく養父から解放されたということになる。
養父の延長線上を生きるのではなく、「父」とも「兄」とも違う、十龍之介の道がここから始まるのだ。

「父」問題からの解放、おめでとう!十龍之介


4.九条天と「父」


相変わらずの最難関、九条天だが…彼にも変化の兆しが。

まず、5部の「ゼロ」によって、養父である九条鷹匡との関係は明らかに変化した。
なぜなら、天が「ゼロ」を蘇らせ、それを「TRIGGERとして」超えたからである。


今後の九条鷹匡と天の関係性は、よくわからないと言わざるを得ない。
とりあえず言えるのは、養父による呪縛が、かなり緩くなっているということだけだ。
その弛みが何をもたらすかと言えば、九条天の「脱完璧」である。
もう「ゼロ」になる必要はないのだから。

その片鱗が、新番組を受け入れるところに既に垣間見えている。
それでも躊躇があるのだが、そこにはもうひとつ、天が手放したものが作用することになる。

七瀬陸の「兄」―もとい、守護者、保護者の役割の終わりである。
「父」の代替とも言える)

これは5部の「ゼロ」の舞台で、幼いころに約束した「七瀬陸との共演」を果たしたことが大きい。そしてその舞台では、「守るべき存在」だった七瀬陸に「助けられた」のだ。




この経験をもって、九条天の長きにわたる「兄」の役割は一つの区切りを迎えた。

その表れとして、ファンへの意識も変化している。

「(ファンを)大切に守って、素敵な夢を見せてあげたかった」
「だけど僕らのファンは痛みを恐れて、守られている人たちじゃなかった」

これは七瀬陸に対する思いに重なるところがあるだろう。
なぜなら九条天にとって、最初のファンとは七瀬陸なのだから。

「守るべき存在」ではなく、「同志」となったファンと共に、九条天はどんなアイドルを目指すのか。それが新ブラホワにおけるTRIGGERの、ひとつの答えになるのだろう。「約束」のその先になるだろう。

天の「父」「弟」「兄」問題からの解放までは、もうあと一歩であろう。

先にそれらを乗り越えた楽と龍


「もう(気を張る)必要ないんだ。俺たちがいるから」
と言っている。

大丈夫。新生九条天は、すぐそこまで来ている。



ということで、6部のメインストーリーとはちょっとズレてしまったが、TRIGGERの「父」問題を、改めて考えてみた。
以前記事にしたのが、2018年であるから、なんと4年越しの考察である。
TRIGGERは本当によく頑張ったなと改めて思ったのであった。

さて、アイナナのストーリー全体としては、まだまだ「父」問題は残っている。
私としては、二階堂大和の「父」問題をもう少し深堀してほしいのだが、尺を考えるともう難しいかもしれない。
最大の「父」問題といえば、小鳥遊音晴。彼のことである。

新ブラホワの総合プロデューサーに就任した彼。どうやら自分の娘を駒につかってまで、この企画を進めていくようである。
これまで「アイドル界問題」にだんまりを決め込んできた音晴を、私はまだ相当疑っている。アイナナ最大の壁は、ツクモでも鷹匡でもゼロでもなく、音晴ではないかと思っているのだが、どうだろうか。ストーリー更新を待ちたい。

長文にお付き合いいただきありがとうございました!

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