【まほやくステラートイベ考察】愛すべき「傷」⑩(ネタバレ)
七夕イベントとして開催されている「零れた夢のステラート」。
SSRにファウストがいた時点で胸がザワついたのだが、予想通り、ひさびさにフィガロとファウストの関係性について考えさせられるイベストであった。思わずカエルと向日葵イベストを読み直してしまったほどである。
今回は「石」を手掛かりにして、2人の過去から現在に続くすれ違いとがなぜ容易に解消されないのか、そして解消されるときはいつなのか、ということを考察していきたい。
以下、各種ストーリー未読の方は、盛大なネタバレにつき、十分にお気をつけいただきたい。不快に思われる方はUターンを推奨する。また、毎度のことではあるが、カードストーリーは一切読んでいない上での妄想である。ほぼ二次創作だと思っていただきたい。
また、記事中の画像は全てゲームアプリ内の引用である。
※過去のフィガロとファウストの考察記事を踏まえているため、未読の方はこちらからどうぞ。
・【まほやく 南訓練イベ考察】愛すべき「傷」④(ネタバレ)
・【まほやく 東訓練イベ考察】愛すべき「傷」⑤(ネタバレ)
・【まほやく 中央バラッドイベスト考察】自分の在り処(ネタバレ)
・【まほやく1周年イベ考察】愛すべき「傷」⑧(ネタバレ・フィガロ/ファウスト編)
1.同じものを見て、共感する―「石」を見ること
今回は星露の石(幸運を集める石≒願いを叶える石)をめぐって、複数組の「友情」にスポットがあたったエピソードであった。
ミチルはリケに石を見せたいといい、シノはヒースクリフに石を見せたいと言った。
中央の国辺境の石の洞窟の中でファウストが思い出したのは、他でもないアレクのことであった。
彼は以下のようにアレクのことを述懐している。
「二回目に来たときは、友人と。あいつにもこの美しい景色を見せてやろうと思って…」
ファウストは、この洞窟(中央の国の辺境)出身だと言っていた。
つまり、彼は若くしてアレクと出会い、幼馴染のような存在として交流していたことがわかる。それはまるで、同年代の友人のように。
向日葵イベストの際、ファウストはフィガロに
「長寿の運命に悩んでいた時に、一緒に生きていこうと言ってくれて嬉しかったよ」
と告げていた。
恐らく、「長寿の運命に悩んだ」原因は、アレクとの関係性にあるのだろう。
彼と共にいても、同じように年を重ねることはできない。
その結果、(ある意味生き急ぐ形で)、アレクと共に革命に加担し、「アレクと一緒に何かを成し遂げる」という方向に舵を切ったのだと思われる。
さて、友人と共に「石」を見ることに、魔法使いたちはどんな意味を見出しているのだろうか。
ミチルがファウストに語る言葉から読み取っていこう。
「特に、リケとは一緒のものを見て、一緒にその時の気持ちを分け合いたいんです、大切な友達だから」
そして、一緒に見れば時間が経っても、あとから一緒に思い出せるというのだ。
この言葉を聞いたファウストは微笑み、ミチルを例の洞窟に案内することを決心する。
恐らく、ファウストはミチルに共感したのだ。
かつて、アレクに対して抱いた感情が、ミチルに共鳴したのだ。
しかし、忘れてはならないのは、アレクとファウストの友情の末路である。
アレクは魔法使いに敵意を向け、あろうことかファウストを火刑に処したという。
つまり、ファウストは、「アレクと一緒に石を見た」にもかかわらず、「あの時きれいだったね」と一緒に思い出すことはできないのである。
一人、過去を思い出していたファウストのそばにいたのは、賢者であった。
ファウストは賢者に告げる。
「きみのお守りは僕が作ろう、今度こそ、無事に守り切れるように」
その少し前に、ファウストは、無鉄砲極まりないアレクに「星露の石でお守りを作って渡してやった」というエピソードを明らかにしている。
このあたりをつなぎ合わせて考えてみよう。
アレク=石を一緒に見て、お守りを渡した=友人
賢者=石を一緒に見て、お守りを作ってあげようと思っている=友人
ということになる。
言うまでもなく、賢者は人間である。現在のファウストの身近で、アレクの代わりになりそうな存在は賢者しかいない。
そしてファウストは賢者の「肉体と精神」を「厄災から守る」というのである。
なぜ「肉体と精神」を分けているのかが気にかかる。
やはりここでもアレクの存在を無視することはできまい。
アレクが革命によって肉体的にダメージを負った…ということは今までのエピソードでは指摘されていなかったように思う。
(追記→アレクの利き腕欠損エピソード有り。ご指摘ありがとうございました!)
アレクは革命の最中で、自分をも上回るようなファウストの力を目の当たりにしたり、人を惹きつける力を目の当たりにし、肉体のダメージに加えて精神的に揺らいでいったのではないか。なおかつ、アレクと違ってファウストには長寿というアドバンテージがある。同じ理想に向かって共に歩んでいたはずのファウストに、アレクは何らかのコンプレックスを抱いたのではないか。
それゆえに、魔法使いへの態度を翻し、火刑という極端な手段に出てしまったように思う。
(永遠の命のために、石になったファウストを食べる…というところまでは考えていなかったと思いたいが)
いずれにしても、ここにきての賢者に対するファウストの態度が和らいできた背景には、「自分と同じものを見る人間を、守り、共に歩む」ことのやり直しに、わずかな希望を見出し始めているからだと思うのである。
ファウストは過去を、賢者を通してやり直そうとしている。
後ろ向きなようで、彼にしては前向きな一歩であると言えよう。
ところで、ファウストは敢えて忘れたふりをしているのだろうか。
かつて、ファウストと同じものを見たいと望んでいた魔法使いがいたことを。
フィガロである。
2.同じものを見た過去―「革命」の傷
今さら確認するまでもないことだが、フィガロはファウストの師である。
ひと時革命の戦線に立つものの、フィガロは離脱し、ファウストのもとを去っている。
その理由について、フィガロは向日葵イベストで以下のように述べている。
「でもわかったんだ。アレクが死んでも、きみは死ぬまでアレクを忘れない。俺は結局ひとりぼっちだ。そんなのやってらんないよ」
さらに
「うまくいけば、俺ときみで、中央の国とアーサーを見守っていく幸せな世界があったのに…」
とも言っている。
これを今回の「石」を通して考えてみよう。
ファウストはアレクと一緒に「美しい石」を見た。そしてアレクにお守りを渡し、一緒に戦った。「もう一度あの美しい景色を一緒に見たいから」である。
そこに、フィガロは中途加入する形で参戦した。
フィガロが目にしたのは、「自分以外の、しかも人間と、「同じものを見ている」ファウストの姿」である。
ファウストは、すでにほかの者と一緒に見ている「美しい景色」をフィガロにも見てもらおうとしたにすぎない。他意はなかった、むしろ、尊敬する師であるからこそ、同じ景色を見せたかったというのが真実だろう。
しかし、フィガロはそう受け取ることができなかったのだ。
アレクはいずれ死ぬ。
そうなれば、「美しい景色」をファウストの隣で見るのはフィガロである。
しかし、その景色は「アレクと一緒に見た景色」なのであり、それを思い出すとき、ファウストの心の中にはフィガロの居場所はないのである。
そこにいるのは、常にアレクなのだ。
そばにいるのに、突きつけられるのは孤独でしかない。
だから、ファウストと共に中央の国を見守ることを、フィガロは諦めてしまったのだ。
「傷つきたくないから」、である。
革命で明らかな「傷」を負ったのは、ファウストだ。
しかし、その傍らで、フィガロもまた癒えない「傷」を負っているのである。
ここで今回のイベストに話を戻そう。
フィガロはここでもまた、「ファウストが誰かと共有したものに、あとから触れる」ことを避けている。
シノとミチルと、お茶をしに行く場面である。
ファウストはフィガロを誘ったと言う。しかしフィガロは、
「自分は遠慮しておくから、ミチルたちと楽しんで」
と断ったようなのである。
ファウストは「呪い屋と行きたくないだけだろう」と拗ねているが、明らかに解釈が違っている。
もしもファウストが、真っ先にフィガロを誘っていたなら、結果は違っていたはずなのだ。フィガロはもう嫌なのだ、あとから仲間入りして、「一緒にいるのに、孤独を感じる」という状況が。
このすれ違いが、この二人の間ではずっと続いているのだと思わせるエピソードであった。
3.「守る」こと、「友情」への未練
ここからは少し見方を変えて、「守る」ということにこだわって考察していこう。
前述したように、ファウストは、無鉄砲な友人:アレクを「守る」という姿勢でいたことが強調されている。それが友情の証だといわんがばかりに。
振り返ってみると、メインストーリー・イベスト、どちらでも、フィガロはファウストを「守る」ことを何度かやろうとしている(宣言している)。
メインストーリー11章では
「きみに投げられる石からも、俺が守ろう、ファウスト」
とはっきり言っている。
そして今回のイベストでも、ファウストの不調を見抜き、媒介とシュガーを贈っている。
それは、大事な弟子を「守る」行動とも読み取れる。
しかし私は、「かつてファウストがアレクにしていたこと」を実践しているのではないか、と思うのである。
アレクとファウストの間には確かに友情があった。フィガロはそれに疎外感と孤独をおぼえ、ファウストのもとを去ったのだ。
ファウストと同じものを「見る」ことに未練があるフィガロは、かつて目の当たりにした「友情」を、今度は自分とファウストの間に構築せんとしているのかもしれない。
不器用の極みとしか言いようがない。
向日葵イベストでも、今回のイベストでも、フィガロはやたらとファウストとサシ飲みをしようと試みている。
向日葵イベストでは軍事会議の延長でそれが実現したわけだが、その時、「ネロとは酒を飲んでいないのか」と驚き交じりに確認をしている。
恐らくフィガロの中では、「友人とはサシ飲みをするもの」という概念があるのだろう。だから、親しくなりはじめていたネロとファウストは、当然サシ飲みをしていると考えたのだと思う。
究極は、「頼ってよ。もうきみの期待は裏切らない。約束したっていいよ」という、向日葵イベストの一言である。
師弟関係とは別に、フィガロはファウストと友人になろうとしている。―「約束」をしてまでも。
それだけファウストへの未練が、切実だということだろう。
ある意味、彼を唯一この世につなぎとめているのは、この友情への「未練」なのかもしれない。いずれにしても、フィガロが石になるか否かの部分では、ファウストの存在が大きな意味を持つことは間違いない。
4.渡されない「石」
今回のイベストで、フィガロの友情への「未練」が少し報われたような気配がした、というのが私の中での第一印象であった。
しかし、それは私の願望に過ぎなかったのだということに気が付いてしまった部分もある。
イベスト10章を見直していこう。
洞窟から石を持ち帰ったミチルはリケに石を渡し、シノはヒースクリフに石を渡す。
そのあとで描かれるのがフィガロとファウストである。
ファウストはフィガロに、媒介とシュガーを贈ってくれたことのお礼を言っている。
ファウスト史上、向日葵イベストの「心から尊敬し、敬っていた」のセリフの次くらいに、素直な言動になっている。
しかし、私が注目したいのはセリフの素直さではない。
ファウストがフィガロに「石を渡していない」ことなのである。
もう一度確認しよう、ファウストは、「賢者」には石を渡そうと言っていた。
ところが、こんなに大量に持ち帰ったのに、フィガロには石を渡さないのである。
繰り返し強調されてきたように、「友人を守る」ことの表象として、石は手渡されている。
言い換えれば、ファウストはフィガロに対し「友人」であるという認識を持っていないことになる。
あくまでも、「尊敬する師」かつ「自分を見捨てた師」なのである。
こんなにしんどいことがあろうか。
もう少し希望のある考え方もしておこう。
ファウストとフィガロの師弟関係とはどんなものであっただろうか。
フィガロは「俺の知るすべてを彼(ファウスト)に残そうとした」と言っている(向日葵イベスト)。1周年イベストでも、それゆえにファウスト全幅の信頼を置き、材料集めを任せている。
(石になるにあたって一番の心配事であるミチルをファウストと親密にさせようとしているのも、ミチルを託そうという思いがあるからであろう…)
魔法は「心で使うもの」である。
すべての魔法を教えるということは「フィガロの心すべてを、ファウストに預け渡す」ということになるまいか。
ファウストが思う友情…
アレクとファウストは、種族も立場も違う。
シノとヒースクリフは、同じ魔法使いだが、性格と立場が真逆だ
リケとミチルとて、教団とその埒外の存在という違いがある
つまり、一見違いがあるのに、同じものを見ることで共通点が芽生える関係性なのである。
だとしたら、やはりフィガロとの関係は異質だ。
ファウストは、その身の内にフィガロの魔法を刻むことで、フィガロの心を継承しているも同然なのだ。それはもはや「同化」にも等しい。
今さら、言葉や物質を使って感覚を共有することなど、不要ということなのではないか…
(だからこそ、何も言わずとも必要な媒介がわかってしまうのであるし)
その表れであるかのように、ファウストは、不器用極まりないフィガロの言動の背景を探ろうとしない。
「わからないよ、あなたが」「茶化すな」と言い捨ててしまう。
フィガロとファウストの間にある、「関係性の捉え方」の違いが、「石」によって浮き彫りになった…そんなイベスト10章であったと思うのである。
5.「石」が渡されるとき
二人の間で、「石」が交わされる日は来るのだろうか。
私は、来ると思ってる。
ただしそれは星霜の石ではない。
フィガロの「マナ石」だと思うのだ。
繰り返しになるが、フィガロは遠からず石になるつもりである。
そのことを、ファウストにだけ告げている。
そして、ファウストは、唯一「すべてを残そうとした」弟子なのだ。
フィガロが自らのマナ石を託すなら、ファウストしかいない。
彼に石を食べてほしいとすら思っているだろう。
そうすることで、今度こそファウストと一緒に、「人間と魔法使いが共存する世界」を見守っていけるのだから。そこではじめて、フィガロの「友情への未練」は解消されるのかもしれない。
メインストーリーを経て、コンチェルトイベスト、そしてステラートイベストで、
過去に傷ついた二人の関係性が、修復されようとしている気配が感じられた。
しかし同時に、そこには大きな乖離があり、二人の思いが重なるには、まだまだ時間を要することも確かなのである。
フィガロの傷は、友情への未練となり、しかし呪いにはならなかった。
フィガロが与えた強さにより、友情で傷ついてもなお、ファウストは呪いに飲まれなかった。
フィガロが石となり、それを受け取ったときはじめて、傷つきながらもファウストは気が付くのかもしれない。
師弟も友人をも超えた、それこそ「愛」のようなフィガロの心に。
またフィガロとファウストについてだらだらと妄想を垂れ流してしまった。
カエルと向日葵イベストまで読み返してしまったため、いろいろとあふれ出てしまった。申し訳ない。
新イベストが「場所」をテーマにしているということで、今回出てきた洞窟やら、フィガロがファウストと修行をしていた家やらが登場し、二人の過去が今後掘り返されていく気がしている。
そして訪れる2周年…メインストーリーの続編についての情報もそろそろ出てくるだろうか。いずれにしても、どうにかフィガロとファウストの関係性を、希望ある方向にもっていってほしいと願うばかりである。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!