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【まほやく〜21章考察】身のつながり、魂のつながり①(ネタバレ)


2019年11月末に配信が開始されたゲーム「魔法使いの約束」。このたびようやく現在配信済のメインストーリーを全て読了した。
一言で言えば、「関係性フェチ」な方にとっては、たまらないゲームである。こんなに拗らせているのも珍しい。

今回は、最もこじれている
西の魔法使い シャイロックとムル
中央の魔法使い カイン と 北の魔法使い オーエン
について妄想を散らかしてみたい。彼らの関係性の特徴は、「肉体」にかかわりがあるという点である。そこが大変興味深いのだ。

他記事同様にネタバレと妄想を大いに含む、二次創作考察記事だと思っていただきたい。神々による考察は一切読んでおらず、カードのストーリーはまるで読んでいない上での、独断と偏見による妄想であることをお許しいただきたい。また、記事中の画像は全てゲームアプリ内の引用である。


考察を始める前に、ストーリーをざっとおさらい。
いわゆる主人公異世界流離もので、主人公は魔法使いが生きる世界で「賢者」として召喚される。魔法使いたちは賢者のもとで、「大いなる厄災」と呼ばれる「月」を押し返し、国々の被害を軽減するという役目を負っている。国は東西南北中央の5つに分かれており、それぞれ個性的な魔法使い21人がそこから集められ、魔法舎で共同生活をしつつ、翌年の「大いなる厄災」襲来に備える…
といったところである。
ストーリー21章までは、どちらかといえば、魔法使いと賢者が「人間の世界」にどうにかこうにか受け入れられ、共同生活をする気になるまで、を描いたものだと言える。おそらく今後、厄災に向けての鍛錬やらなんやらのストーリーが展開されるのだろう。


1.人物関係の整理

複雑に絡まる魔法使いたちの関係性。これを整理するのは大変である。とりあえず、今回扱うカイン、オーエン、ムル、シャイロックだけ簡単にまとめておく。ご存知の方は読み飛ばして欲しい。


シャイロック:5カ国の先生の中では最も若い。酒場経営者だった。魔法科学兵器の開発には反対。現在のムルの保護者のような存在だが、かつてのムルとは、魔法や宇宙の理などを夜通し議論する仲だった。ムルには適わない自覚はあるが認めたくない。結果、ムルの魂の欠片を食べる(!)

ムル:月に恋をしすぎて魂が砕け散った哲学者。魔法化学兵器には積極的。そのせいでシャイロックの地元が壊滅的になったので、恨まれている自覚がある。現在はネコ化したが、もともとの魂は宝石となって砕け散り、全国に離散。月がめちゃくちゃ接近したので、魂の欠片が実体化しているものもある。

カイン:元騎士団長だったが、魔法使いだとバレて地位を剥奪された。アーサーを主君と仰ぐ。およそ魔法使いっぽくない人。オーエンに片目をえぐられており、代わりにオーエンの片目を所持(=オッドアイ)。人の気持ちに疎いという自覚有り。オーエンを怒っているといいつつ、彼を気にかけたり介抱したりする。

オーエン:トランクにケルベロスを飼っており、獣と意思疎通できる魔法使い。カインの片目を奪い、自分の片目を与える。言動は大変な天邪鬼で、常にニヤニヤしている状態。オーエンと話したらダメと言われる。気まぐれにあらわれ、煙のように消える。実力ではミスラに及ばない。甘いものが好き。


ムル・シャイロック・カイン・オーエンの因縁がすごすぎて、他の関係性は、ちょっとこじれてるくらいで可愛く見えるという性質あり。
シノとヒース、ファウストとレノなんて、ほぼ解決したも同然。2部があるとして動きがあるりそうなのは、フィガロ・ミチル、くらいしか思いつかない。


2. カインとオーエン―「目」と一体化

何と言っても「目」の設定である。

かつてオーエンはカインの左目を魔法で奪い、代わりに自分の左目を与えているのである。こんな関係性が公式で展開されるなんて…良い時代になった。

カインが目をえぐられた当時のことは、詳細に語られていない。無理矢理えぐられた、痛かった、に加えて

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「しばらく俺の言うことも聞かずに、勝手によそのものを見ようとする」

とのこと。ここは注目すべきポイントだろう。

少なくとも、オーエンの眼球は、「オーエンの意思で動いている」ということになる。「オーエンが見たいもの、見ているものだけを、カインは見ている」のである。
「しばらく」そうだったということは、一定期間過ぎたあとは、オーエンの眼球がカインに従順になったとも受け取れるが、私はそうは思わない。むしろ、「カインがオーエンに慣れてしまった」ということになるまいか。オーエン優位の状態で、一体化してしまったということだ。

時系列があまり整理できていないが、カインは賢者の魔法使いになる前後で、オーエンに眼球を奪われたものと思われる。カインは、およそ魔法使いらしからぬ人物である。騎士団への未練も見える。すぐには魔法使いとしての自分に馴染めなかっただろう。
しかし、オーエンという「至極魔法使いらしい」人物の体の一部を得て、彼の目線で物事を強制的に見たことにより、カインは「魔法使いらしさ」というものを、得ていったのではないか。


さて、オーエン側からも考えてみよう。カインへの執着は後述するとして、オーエンにとって眼球とはなんなのか、というところだ。

オズが賢者にオーエンとの接触について忠告する場面で、こんなことを言っている。

「オーエンは魂を隠している。そのため、何度でも死に、何度でも蘇る」

この魂の隠し場所。メインストーリーでは明らかになっていない。私はこの「魂の隠し場所」こそが「カインに与えた眼球」なのではないかと考えている。
そうなれば、オーエンはカインに魂を預けているということになる。なんたる…なんたる重さ。想いが重すぎる。

彼らの「目」の共有は、単なる肉体の一部の共有ではない。そこには確実に魂や思考の連動があるはずだ。でなければ目というパーツが選ばれるはずがない。そのあたりをもう少し考えてみよう。


3. カインとオーエン―見えるもの、見えないもの

大いなる厄災の接近の影響で、魔法使いには傷がついている。
カインの場合は、「触らないと相手が見えない」ということであった。触らなくても見えるのは、オーエンだけである。なぜなら、左目がオーエンのものだから。(ここは少々気になるので後述)

しかしカインのこの傾向、厄災の影響だけではないと思うのだ。もともと、カインは「はっきりと見えないもの」「実体のない、よくわからないもの」に疎いと思うのだ。最たるものが人の感情で、そのことについてはカイン本人にも自覚がある。(追い詰められたニコラスの感情に気が付かなかった)

それがよく分かるのが、オーエンがニコラスの件で行方不明になり、再び現れた時だ。居合わせたのはヒースクリフ、シノ、カイン、加えてホワイト&スノウもギリギリ間に合った。(今思えば、ヒースの傷関連のメンツでもあるので、伏線といえば伏線か)

ここでオーエンは、退行現象でも起こしたように、素直で従順な幼子のようになってしまう。そしてニコラスが魔法使いに憧れるがあまり厄災を呼ぶ呪詛に加担し、国に被害を出したのを気に病んで自害したことが明らかになる。ニコラスのことを思い出すにあたり、オーエンは、「思い出せたらえらい?」というスタンスである。カインもヒースも、雑に「えらい、いい子」とオーエンを褒める。

シノとヒースは、素直なオーエンの方がやりやすいというが、カインは違った。

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「いつもの方がいい」

という。なぜオーエンがこうなっているのか、この人格はなんなのか、得体がしれないからカインは嫌なのだ。考えていることがよくわからなくても、普段の不敵な笑みを浮かべたオーエンならば、間違いなくオーエンだとわかるのだ。

ホワイトとスノウが「これは別人格というより、オーエン本来の人格では……?」と瞬時に気がついていることからも、いかにカインが鈍いかがわかる部分である。鈍いというか、感性がズレているのだ。

他の人にとっては「わかりやすい」素直なオーエンが
カインにとっては「わかりにくい」
というのである。

この場面に居合わせたシノは、ヒースの傷を知りながら隠す。それはヒースが傷つくのを避けるためであった。一方オーエンはカインに傷を知られ、それについて口止めをする。おそらくそれは、オーエン自身が本来の自分をカインに知られることで、傷つくのが嫌だったから…

しかしオーエンは気がついているだろうか、カインはアレが本来のオーエンだったなどとは、これっぽっちも気がついていないのである。「見えているのに、見えないもの」なのだ。



ところで話は戻り、なぜカインはオーエンしか見えなくなってしまったのだろうか
カインの傷はおそらく「肉体でわかるものしか見えない」呪。だから手をたたけば見えるようになる、触れば見えるようになる。
反対に言えば、常に見えるオーエンのことは「肉体でわかる」ということである。それは目のつながりに保証されたものだ。

さらにこれを転倒させて考えると、たとえオーエンのことであっても、「肉体のつながり」ではわからない部分は見えないのである。つまりそれは、退行現象を起こした過去のオーエンのことにほかならない。

傷人格のオーエンのことが理解できたとい、カインははじめて厄災の「傷」を克服することになるのだろうと思う。ある意味、月をどうにかしなくても克服できそうなので、治癒は早いかもしれない。
そのためには、オーエン自身もまた、過去の自分の人格に向き合う必要がある。恐らくそのきっかけは、カインがもたらすのだろう。


4. カインとオーエン―「肉体」のつながり、その奥に

このように肉体で繋がったカインとオーエンだが、この繋がりは双方から望まれてできたものではない。オーエンが一方的にカインの眼球を欲した結果としてできたものだ。

その理由として考えられるのは、オーエン本来の人格で語られた以下のエピソードである。

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「暗い、湿ったところ。ねずみともぐらしかいない、僕がいたところ。寂しかったけど絵本があった。はんぶん、土になった騎士様の話だよ。悪いひとをやっつけて、困った人を助けてくれるんだ。やっと来てくれた」

大変重要な情報である。
恐らく、オーエンの生い立ちに関わる部分だろう。

絵本の騎士に憧れ、救いを求めるオーエンは、騎士団長であるカインに惹かれた。これは間違いない。「絵本の騎士様だ」と直感したに違いない。

眼球を奪った理由はおそらく2つ。
ひとつは、「はんぶん土になった」の部分である。金色の瞳で正義にあふれ、穢れのないカインでは「半分土」ではない。だから、半分を自分と交換して、汚したのだ。オーエンの自己評価がわかる部分でもあるし、騎士を取り込むことで自らに穢れない箇所を作ろうとした、渇きのようなものも感じられる。

もうひとつは、純粋に、カインを知り、繋がりたいという欲望。オーエンはケダモノと親しく、本能的なやりとりを得意としている。獣ヒースとも肌の触れ合いによってはじめて接近したところがあった。まずは血を流しあって分かり合うようなこともあっただろう。カインとも、まずは肉体から彼を理解しようとしたのではないか


では、オーエンはカインという「騎士様」に、どんな助けを求めているのだろうか。それはまだ明らかになっていない。

メインストーリーの中で、オーエンは幾度となくカインを助け、守っている。イベントストーリーでは、瀕死にまでなるカインだが、オーエンの目のおかげで命を取りとめている。カインは尽くそのことに気がついていないようだが。(反対に、カインは表立ってオーエンの体調を気にかける。)

オーエンはじめ、北の魔法使いは孤独で、ワンマンだ。オーエンもカインと馴れ合いたいわけではなかろう。しかし、カインとの肉体のつながりを死守するオーエンの心の奥にちらつくのは、「承認欲求」である。本来の彼がしきりに「えらい?」とたずねるシーンからもそれが読み取れた。
ただし、通常運転での魔法使いとしてのオーエンは、真正面からカインに賞賛されたいわけではないはすだ。彼の目にどう映るか、いや、むしろ……彼の視界に入るかどうか、で自己評価というか、自分という存在が何なのかを探っているのではないか。

オーエンは賢者とのファーストコンタクトでこんなことを言っている

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「僕のことに詳しくないんだよ」

これは嘘偽りない彼の本音だろう。
オーエンは自分のことがよくわからないのだ。だからこそ、ニコラスの投身自殺時だって、周囲から非難されてはじめて安心し、オーエンは「俺が殺した」という考えに至っている。人の目、人の評価を通してしか、自分を知ることができないのだ。
彼と話をすると心を蝕まれるのは、オーエンが持つその原初的な不安が、話し相手にも伝播してしまうからだ。

ところで、カインの前に限らず、オーエンは本心と逆にことを言っている節がある(天邪鬼の所以である)

知らない→本当は知っている
面白くない→本当は面白い

それもこれも、オーエンへの周囲の評価に沿う形の言動を心がけているからだと考えれば、納得がいく。



カインは賢者にオーエンを見ること、会話することを避けるように言うが、当の本人はそれを避けない。
恐らくそれは、カインが自分にも相手にも、心というものに鈍感だというところがあるだろう。加えて、目という肉体を通して、オーエンを感じられていることも影響していると思う。彼は心ではなく、肉体でオーエンを捉えているのだ。だから不安の種類が周囲と違う。オーエンを恐れの感情だけで見ないのだ。

賢者とのファーストコンタクトの際、オーエンは怯えた様子の賢者をみて
「またその目……」
と寂しげな様子であった。恐怖におおわれた目では、オーエンという存在を捉えることができない。オーエンは賢者とのかかわりの中で、自分を知ることができない。だから落胆した。

それに対してカインはどうだ。
「頭がおかしくなる、くらくらする」といいつつも、オーエンから目を背けない。無視しない。なぜならそこに自分の目があるからだ。
従順な様子の彼に対して「演技をやめろ!」と言い放つことから考えても、オーエンの煙に巻く様な言動に惑わされず、彼の表と裏のギャップを少なからず感じていることがわかる。ただし、オーエンは何かを誤魔化そうとしての演技ではなく、誰かに求められる人格をこなすために演技をしていることを、カインはまだ理解出来ていない。

なぜなら、オーエン自身が「本来の自分」をカインに見せまいとするからだ。あくまでもオーエンは、カインの思うオーエンを生きたいのだ。

オーエンは孤独を愛しながらも、周囲がいなければ自分を見失う、そもそも感じられない。その飢餓感と不安の矛先は、肉体感覚に優れ、目を背けない強さを持つカインに向けられた。
オーエンがカインに絡みに来る時、それは自分を見失いそうで、でもなんとか縋ろうとするときなのだ。そしておそらく今後のストーリーの中で、オーエンが「カインに本当の自分を見てほしい、認めてほしい、愛してほしい」という時が来るのだろう。オーエンとカインとの肉体の繋がりの奥に見えるのは、オーエンという、ひどく不安定なひとりの人間の姿なのであった。

今後のストーリー展開として考えられるのは、「はんぶん土」であるカインの肉体と精神に何らかの異常がでてしまったり、あるいは、カインとオーエンが双子のようにそれぞれに受けたダメージを受けてしまったり、というあたりか……
肉体のつながりによって、せめてカインがオーエンという人間を(本来の彼含めて)真正面から理解できるといいなと思うが、果たしてオーエンがそれを望んでいるのか……という疑問も残る。ただ繋がっていること一方的にを感じたいだけで、双方向は求めていないのが今のオーエンだ。本来の彼の状態が長く続けば……或いは……どうだろう。


以上、肉体の繋がり、という観点から、まずはカインとオーエンについて考察してみた。
長くなってしまったので、シャイロックとムルについては次回考えていきたい。

※最新のカイン・オーエンの考察は以下のふたつ↓(2020/5・11追記)

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

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