【まほやく~2部17章】「アレク時代」のネガとしてのアイナナ「ゼロ時代」(ネタバレ)
2部も終盤に入ってきたのだろう。
私が最も心を乱されるファウストのターンが来てしまった。
毎度フィガロとファウストに言いたいのは「頼むから腹を割って話をしてください」とそれだけなのだが、今回もそうだった。
お互いにあの日々が美しすぎて優しすぎて、今さらその背景にあったものを知って壊したくなくて、誤解が積み重なっている。
ファウストが思うフィガロ、フィガロが思うファウスト、それぞれが独り歩きしている。
奇しくも世の中では「アイナナexpo」が開催され、私は「Collection Album vol.3」を聴きながら仕事をしていたのだが、
そういえば、本作とアイナナはメインライターが同じである。(何を今さら…)
どうして今まで気が付かなかったのか。アイナナにもこんな関係性がいっぱいあったじゃないか。
世界観やキャラクターはもちろん違うのだが、やはり作者も人間だ。嗜好は似るものだ。
(私も文字書きの端くれとして、自覚がある部分である…)
ということで、大変複雑になってきたまほやく2部を、アイナナという教科書を傍らに置きながら、ちょっと整理してみようと思うのだ。
無謀かつ突飛であることはもちろん自覚している。ただの自己満足である。申し訳ない。
いつも通り、大変なネタバレをする予定であり、妄想も多く含まれる。カードストーリーは全く読んでおらず、ゲーム以外の媒体の情報はほとんどチェックしていない上での、二次創作だと思っていただきたい。神々の考察も読んでいない。
また、記事中の画像は全てゲーム内からの引用である。
1.「アイドリッシュセブン」の解釈
まず、私のアイナナ考察を読んでいない方のために、というか、アイナナを知らない方のために、私のスタンスをざっくり記しておきたい。
アイナナは現在6部まで配信が終わっているが、私の中ではほぼ完結したと思っている。
もちろん、アイナナ・TRIGGER・Re:vale・ZOOLの活躍が続くのはわかっている。
…というのも、私はアイドリッシュセブンは、いわゆる「前史」に核があり、その救済が6部までのストーリーで行われたと思っているのだ。
アイドル系のストーリーなのだから、現在のアイドル達の成長と活躍がメインにきまってるだろ!というご指摘はごもっともなのだが。
その現在のアイドル達の土台には「前史」がねっとりと貼り付いていて…というのが、アイナナがほかのアイドルものと一線を画している部分だと思うのである。
詳しくはこの記事にまとめたつもりなので、一応リンクを貼っておく
簡単に整理するとこうである。
【アイナナ前史】
ゼロ(アイドル)→失踪
桜春樹(作曲)→ゼロを追って放浪、多くの曲を残して死去(九条に渾身の一曲を託す)
九条鷹匡(演出)→ゼロを追わずに「ゼロのかわり」を探し求め、ある意味それを達成する(救済)
【アイナナ本編】
九条天→「ゼロ再来」として九条に育てられる。ミュージカルでも「ゼロ」を演じる
七瀬陸→九条天の双子の弟。「モンスター」アイドル。
→この二人が、ゼロ発案、桜春樹の遺作である「incomplete ruler」を歌唱
※六弥ナギ→桜春樹を後見しようとして見失った。曲を引継ぎ、小鳥遊音晴に渡した
※和泉一織→九条鷹匡になりかけた人
※亥清悠→「ゼロの再来」として期待されたものの、九条に捨てられた
あまりにもひどいまとめ方で申し訳ないが、今回はまほやく考察なので、この程度にしておく。とにかく「前史」が、本編の人間関係を規定しているということを確認しておきたいのだ。
2.「まほやく前史」について
現在の賢者の召還以降が「まほやく本編」だとしよう。
そうなれば先代の賢者も「前史」なのだが、それだとややこしいので、今回の考察では、「アレク生存時」を「前史」としたい。
つまり、中央の国の状況を主軸として、前史と本編を分けるということである(アレクは革命の主導者なので…)
まあとにかく、こちらも整理してみよう。
【まほやく前史】
アレク(人間のリーダー)→ファウストのおかげで善戦するも、ファウストを裏切り火刑にする
ファウスト(魔法使いのリーダー)→アレクとは幼馴染。魔法でアレクを援護するも、疑われて火刑に。その後行方不明になる。
フィガロ(ファウストの師)→オズ未満コンプレックスの北出身魔法使い。革命軍に参加するも、「客扱い」にショックを受けて放浪。
※レノックス(ファウストの従者)→フィガロに弟子入りに来るときもついてきた、筋金入りのフィジカル派の魔法使い兼戦士。
【まほやく本編】
アレク→中央の国建国時のレジェンド、アーサーの先祖、故人
ファウスト→賢者の魔法使い。火刑のあと引きこもって現在は呪い屋。夢が漏れ出す「厄災の傷」あり。
フィガロ→賢者の魔法使い選出1回目。放浪の末、南の国で医者をやっている。前史のことは秘密にしているつもり。
※レノックス→賢者の魔法使い選出1回目。ファウストを探し続けてやっと再会できた。ファウストの解釈においてフィガロと対極にある。
※アーサー(魔法使い兼王子)→魔法使いと人間の橋渡し的な存在。「アレクの再来」と呼んでよいかどうか。
※オズ(最強の北の魔法使い)→ある意味「人間」「愛」がわからなかったが、アーサーにより多少軟化(≒月雲了?)。アーサーを育てた(=和泉一織?)
かなり強引なまとめ方になって申し訳ない。
次節で、これをアイナナとオーバーラップさせていく。
3.アイナナ「ゼロ時代」=まほやく「アレク時代」?
簡単にいってしまえばこうである。
アレク=ゼロ
ファウスト=九条鷹匡
フィガロ=桜春樹
このように私は考えたいのだ(もちろんズレはある…)
薄い根拠を並べるなら以下のようになるか。
◆ゼロはファンや九条たちを「裏切り」、「失踪」した。桜春樹はそれをきっかけに「放浪」、海外で作曲。九条はゼロを「呪って」、ゼロのかわりを探している。
◇アレクはファウストたちを「裏切り」、ファウストは「失踪」。フィガロはファウストを探さず、縁もゆかりもない南の国へ。ファウストは人間への憎悪から「呪い屋」に
微妙に重なっていないか?
特に桜春樹と九条鷹匡付近である。
ファウスト(≒九条鷹匡)は、ゼロ(≒アレク)に似たアーサー(≒九条天+七瀬陸?)に複雑な感情を抱く。
そして、フィガロ(≒桜春樹)はファウスト(≒九条鷹匡)にのみ、死期について語り、たぶん「自分の石」「自分の魔法」を彼に遺そうとしている。
桜春樹が九条鷹匡にしたのと同じように。
レノックスはおそらく六弥ポジションだろう。ただし、桜春樹にではなく九条鷹匡についていることになる。
(※フィガロとファウストは、それぞれに桜春樹九条鷹匡要素を分け合っている感じがする)
2部後半で問題になっている「西の国」と「中央の国」の問題も、どうも「アレク時代」が引き金になっているように思える。
だとしたら、やはりこの世界を落ち着かせるためには、「アレク時代」の問題をどうにかしなければならないのだろう。
アイナナが6部で一つの区切りを迎えることができたのも、九条鷹匡を筆頭とする「ゼロ時代の怨念に取りつかれたひとたち」を救済できたからだ。
つまり、まほやくでも、「アレク時代にとりつかれた者たち」=ファウスト、フィガロ、レノックス、(アーサーはじめ中央の国、ムルはじめ西の国)が救済されなければならん、ということではないのか。
そうなると、現代における「アレク」ポジションにある、アーサーがキーパーソンであることにも納得がいく。
彼は、アレク時代の面々にとって、「アレク時代の亡霊」でもあるのだ。
4.結局「中央の国」とはなんなのか
ストーリーを読み直している時間がなかったので、情報の漏れがあるかもしれない。先に謝っておく。
アーサーが「アレクの再来」として、本作を救済に導く存在だとして。
じゃあ彼が、一度捨てられ、もう一回戻された「中央の国」ってなんなんだよ、と思うのである。
アレクが建国した中央の国。建国時には革命があり、それは邪悪な魔法使いへの対抗ということになっている…
邪悪な魔法使いってなんだろう(これを考え始めるとドツボにはまりそうだからやめよう)
少し見方を変えて、「中央の国」ができる前、この世界の中心はどこにあったんだろうか。
2部後半の雰囲気からして、「西」では?
アレクが革命で叩き潰したのは「西」の「邪悪な魔法使い」なのでは?
それが「ボルダ島」と共に沈んだのかもしれない。
となると、「邪悪な魔法使い」を住まわせていた「西」の人間も、無傷では済まなかっただろう。
王ポジションから陥落したから、西の王族・貴族は、新しい為政者の中央の国に反発するのでは?
そうすると、気になるのはラスティカの存在である。
彼は西の国において、大貴族の息子ということになっている。が、魔法使いだ。
この兼任っぷり…国は違えど、アーサーと同じでは?
もしもアレクの革命がなければ、ラスティカが「アーサー」だった可能性は大いにある。
そのラスティカは人間を鳥に変えて、鳥かごに閉じ込める…なるほど、それが「邪悪な魔法使い」の片鱗だというなら、そうかもしれない。
記憶が無くなるのは、革命でペナルティとして与えられた西の国に引き継がれる「傷」かもしれない。
1周年イベストでも、ラスティカは相当強そうな感じがあった。現在のアーサーではかなわないだろうほどに。
アーサーのダミーがラスティカ?
いや
ラスティカのダミーがアーサー??
「西」になりかわったのが「中央」だとして、その中心にいるアーサーはなんなのか?というのも俄然気になってくる。
もしかして、アーサーこそがこの世界の混乱を象徴する存在では?
5.アーサー≒ノーヴァ≒月、の可能性
ここからはさらに暴論である。妄想もたいがいにした方がいい。申し訳ない。
2部16章でアーサーは、ヴィンセントに「お前が愛しているのは世界だ、この国(中央)だけ特別に思っていない」と言われていた。
特に反論もなさそうだった。
言い換えれば「この世界はまるっと愛している」わけである。
そして、ヴィンセントたち人間と、魔法使いたちが「友達」になることを望んでいると。
さて、この世界は何に愛されているとされているだろうか。
そうだ、「月」である。
アーサー…きみ、「月」なのでは?(或いは、月になるのでは?)
同じく17章で出てきたノーヴァのことも考えてみよう。
この世界の魔法使いなら必ず精霊を使役しているわけだが、ノーヴァの使い方はちょっと違うらしい(ファウスト談)。
「魔法使いでいいのか?」とまで言われている。
しかも、魔法使いたちを見下しながら、憎悪や野心や支配欲がないと。
そして、銀髪(白髪?)、義眼、目の傷
傷…傷?もしや、世界の傷が反転して、彼を傷つけている?
かなり飛躍するが、ノーヴァもまた「月」なのでは?
たぶん神々の考察で既に指摘されていると思うが、アーサーだけノーヴァ系の髪色なのも気になる(ヴィンセントとは微妙に違う)
もしアーサーが「月」と同一の存在なら、魔法使いと人間の共存を望むのも、国ではなく世界を愛するのも納得だ。
そして、その理想に基いたアーサーの行動が、「アレク時代の傷」を救済する、ということになる。
もっといえば、
ノーヴァは「世界を愛せなくなった月(だから傷ついている)」で、
アーサーは「再び世界を愛する月」になるのでは?(愛せない月に堕ちるかもだが)
だいぶ遠回りしたが、アイナナと比較するとこうなる。
【アイナナ】
傷を作った「ゼロ」→「ゼロ」の傷を救済した九条天&七瀬陸
【まほやく】
傷を作った「アレク時代」→「アレク時代」の傷を救済するアーサー(魔法使い兼王子)
九条天と七瀬陸は双子でありながら、天使とモンスターという別属性を持っている。
アーサーもまた、王子兼魔法使いという、別属性をひとつの身に含んでるわけで…
ああ、なるほど…まほやくにおける「媒介、触媒」はアーサーなのだ。
世界の救済のための「媒介」になる…それゆえに、アーサーは「私は長く生きない気がするんだ」という予感を得ているのかもしれない。
(七瀬陸と九条天もそうなりかけたが、2人だったから免れた)
【参考アイナナ記事】
最終的に本作には、月となった「アーサー」との対決、という結末が用意されているのかもしれない。
もちろん、対抗する賢者の魔法使いの筆頭にいるのは「オズ」だろう。
あるいは、オズが九条天のように、アーサーと一緒に「月」を救済するか……うーむ。
アーサーを保護して育てたオズが、アーサーとたたかう(共闘か対峙かは不明)…だからこの二人がメインビジュアルなのかもしれない。
6.得体の知れないアーサーと、視界不良のフィガロとファウスト
ひどい暴論を書き散らしてしまった。申し訳ないことこの上ない。
ほとんどイベストも読了できていないのに、妄想もいいかげんにしたほうがいい。
実はサービス開始当初から、「なんでアーサーがメインなんだろうな…」とは思っていたのである。
オーエンやフィガロのエピソードが強すぎて、ちょっとアーサーは今時の主人公にしては、良い子枠にきれいにおさまりすぎているじゃないか。
しかし、2部になって「長く生きられないかも」という匂わせがあったり、ヴィンセントの発言などがあったりで、「アーサー、得体が知れない子」みたいな雰囲気になってきているのはたしかだと思うのだ。
一番手に負えそうになかったオズが人に近づき、一番いい子だったアーサーが人を離れて世界の脅威になる、という反転があったら大変おもしろいな、と思うわけである。
そしてそのとき、「アレク時代の傷」を抱えたファウストとフィガロはどうするのだろうか、と…
アイナナをなぞるなら、フィガロは死ぬ。このライターならやりかねない(フィガロはメインキャラだが…)
とはいえ、フィガロの「死の予告」という劇薬のおかげで、過去ばかり見ていたファウストが未来の話をしはじめているところに希望が残っている気もする。
「未来」を見せてくれていたアレクに裏切られてから、ファウストの時は止まり、過去に縛られていたわけである…その鎖を断ち切るのが、フィガロであるというのはなかなかに感慨深いのだが、それにしても、頼むから話し合いをしてくれ…
しかし、「アレク時代の傷」組に比べると、カイン・オーエン、ネロ・ブラッドリーをはじめ、それ以外の関係性は、けっこうスッとうまくいってしまいそうな気すらする。
それほどアレク時代の面々は拗らせている。
TRIGGER の「SUISAI(ゼロ時代を表現した曲)」を聴きながら思ったのは、「それほどに優しく愛しい時間だったんだな」ということ。
フィガロについていうなら、ファウストとの師弟時代はきっと「恋(永遠にも似た歓び)」だろうなと…でも当時はそれを「愛」だと思っていて、でも違った。
愛がわからなくなっちゃったら、オズが「愛らしきもの」をつかみかけていて。
そりゃ嫉妬で狂うだろうと。
力でかなわないから、「愛」だけは得ようとしていたのに。
でもねぇ、ピンチの時にファウストが一番に思い出すのはフィガロであり、
ファウストは「苦しまずに死ぬの?」「延命できないの?」と必死に、フィガロと共に生きる方法を探しているのである。
見えていないだけで「愛」はあると思うのだが…気が付いてくれフィガロ。ちゃんと見てくれ!ファウストの今を!!
「愛」が見えるかどうか、でフィガロ・ファウストの救済は形を変えていきそうである。とにかく、話し合いを頼む…(しつこい)
なんだかいつも以上にまとまりがなくなってしまった。
2部は何章までなのか…はあ…
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!