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【まほやく 雨待花イベ考察】愛すべき「傷」③(ネタバレ)


本日終了したまほやくのイベント「花咲く森に真実の愛を」(これ以降、「雨待花イベ」と表記する)。カイン・オーエン、シャイロック・ムル、の四人について、大変な供給がたくさんあったことは、皆様も周知のことであろう。

基本的にはイベントストーリーは考察対象としない、と思っていたのだが、これはちゃんと考えておかねばと思い、記事にすることにした。その準備として、の記事でシノ・ヒースクリフの考察を経由してみたわけである。

今回はメインストーリーはもちろん、イベントストーリーについても盛大なネタバレ記事になる予定である。不快に思われる方はUターンをお願いしたい。また、毎度のことであるが、カード・親愛ストーリーは全く読んでいない上での妄想である。ご容赦願いたい。ほぼ二次創作である。
また、記事中の画像は全てゲームアプリ内の引用である。


これまで考察してきた内容を踏まえての記事となるため、初めての方は下記の記事参照頂ければ幸いである。

①身のつながり、魂のつながり①(カイン・オーエン編)
②身のつながり、魂のつながり②(シャイロック・ムル編)
③愛すべき「傷」①(「傷」総括・オーエン編)
④愛すべき「傷」②(シノ・ヒースクリフ編)


1.「真実の愛」


今回のイベントストーリーのメインモチーフである「雨待花」だが、その花言葉は「真実の愛」だという。ジューンブライドを意識したイベであるため、魔法使いたちが女性に対して「真実の愛」を…という要素を感じる設定だが、メインはそこではない。

おそらく今回の主眼は、
「相手の真実の姿を知り、その上で、愛することができますか」
という魔法使いたちへの問いかけである。

もちろん相手は初対面の女性たちではない。
それぞれに因縁を持つ、魔法使い同士の問題である。

言い換えれば、今回のストーリーに登場した魔法使いたちは、誰も「真実の愛」を掴みきれていない、あるいは、避けている・避けられている…ということになる。

それぞれの魔法使いがどんな「真実」から目を背けているのか、それを知った時に、どんな反応を示し、どんな風に相手を「愛する」のか…という部分が、垣間見えたストーリーであった。それぞれ確認していこう。


2.シノ・ヒースクリフ―見えない「真実」の気配


今回ヒースクリフ本人はイベントストーリーに登場しない。登場しないが、シノの考察を進めるにあたり彼の存在は不可欠であるので、便宜的に2名について考えることにする。

まず、イベントの重要なキャラクターとして
 白い狼(森の精霊)
 狼に捧げられた人間の花嫁

がいる。

この白い狼。明らかにヒースクリフの存在を意識したものだと考えられる。ヒースクリフは、シノが案内人をつとめるシャーウッドの森も近い、東の国のブランシェット城出身。そして、厄災の傷により「黒い獣化」する。

白い狼の噂を耳にしたシノが、ヒースクリフを思い浮かべなかったはずはない。ところが、彼は驚くほどそれを表に出さない。
これはやはり、未だにシノが、ヒースクリフ=黒い獣という概念を受け止めきれていないことの表れであるように思う。傷のせいで獣に憑依されたくらいに考えているのであろう。前回の記事でも触れたが、黒い獣は、ヒースクリフの本性であると私は考えている。

黒い獣=ヒースの本性(真実)、である可能性は、今回のイベントストーリーで、さらに強調されたように思う。

シノは白い狼の噂を耳にした当初は、
「狼が牙を剥く前に森に入って始末したほうがいい、放っておけば脅威になるぞ。」
「(狼の声を)聞いたところで、狼の言い分なんてわからない」

と、「狼とわかりあえるはずがない、排除するべきだ」という姿勢を崩さない。

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つまり、狼=人に害をなすもの、という固定観念から、狼の本性・真実から目を背けているということである。
この姿勢、ヒースの獣化にも同じことが言えるのではないか。メインストーリー終盤で獣化したヒースに対し、シノは「戻ってくれ」と声をかける。それは獣化が異常な状態である、という考えからなのだろうと思う。あの状況では、確かにそうとしか思えないだろうが…少なくとも、ヒースにとっても、シノ自身にとってもネガティブなものとしか捉えていない

雨待花ストーリーでは、結局白い狼は、人に害なすものではなく、人との約束どおり、雨をもたらすポジティブな存在であった。

ヒースの獣化も、ネガティブな傷ではなく、ポジティブなものなのでは…と考えることもできるのではないか。
メインストーリー中盤からずっと二人の間の溝となっている、ヒースが「魔法使いであることを誇らない」問題も、獣化のメカニズムや、獣化した状態の彼を知ることで、その糸口がつかめるような気がするのである。黒い獣は、おそらくヒースが知らず知らずのうちに抑圧した、「真実」の彼の表象なのだ。

雨待花ストーリーの最後で、シノは白い狼に向かって鎌を振り上げるが、白い狼と視線を交わし、思いとどまっている。
そこでシノはこんなことを言っている。

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「オレはもう、孤独と飢えしか知らなかったあの頃とは違う」

ヒースとの出会いによって得た「約束」や「愛情」によって、シノは、「わかるはずのない狼の言葉を理解した」ということである。
だとしたら、獣化してシノのことを忘れ果てているかのような状態のヒースに向き合い、彼の「真実」を理解することも可能なのではないだろうか。そうすれば、ヒースの「傷」は、ただの「傷」ではなくなるだろう。
そんな希望を感じさせるイベントストーリーであった。


3.シャイロックとムル―愛情と、「同化」

登場場面こそ少なかったが、シャイロックとムル…この二人も衝撃的な発言が多かったことを忘れてはならない。以前の考察記事からしつこいくらいに述べているが、この二人のキーワードは「同化」だ。

今回の雨待花ストーリーでは、シャイロックとムルはアーサーの依頼で酒造りをしている。それは大変微笑ましいのだが、会話の内容は、しんどいものであった。
話題は自ずと「結婚」へ…

シャイロックは「結婚」も「約束」だというスタンス
月に恋するムルに、「月と結婚の約束ができるか」と尋ねるのである。

心臓がヒュッとなったのは私だけだろうか。
前回の泡沫イベで、旧ムルを取り戻しかけている新ムルにこのド直球な質問である…

ムルは「俺は永遠の約束がほしいわけじゃないよ。ただ焦がれているだけ。恋に理由はいらないんだ!」と答える。

平行線以外の何物でもない議論である。
シャイロックは「あなたの好きは罪深い」とつぶやいている。

以前の考察記事でも述べたが、恋は、惚れた相手にひれ伏す行為であり、対等な約束などというものを結ぶものではない。
だからこそ、ムルは月のために、魔法科学兵器に手をだしたのだし、自分の魂が砕けてもその身を捧げたのである。

イベントストーリーの終盤で、白い狼と、半分精霊化した花嫁を見て、こんな感想を述べている。

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「…嫁いだ姫君は、森の精霊と愛を交わして、彼と同化する運命を選びました。いつかムルも「大いなる厄災」と同化する…そんな日が来るかもしれませんね」

これはまた…えぐられるような切なさである。

賢者は「それもシャイロックはムルの友達だ」と慰めているが、そんなことで彼の心は満たされない。
シャイロックが望むのは、友達でも恋人でも、ましてや伴侶でもない。

ムルとの「同化」なのだ。
精霊と同化する姫君は、ある意味シャイロックにとって憧憬の対象だ。彼女は、人間であれば理解しえなかった「森の精霊(=白い狼)」を理解し、そこに愛をかよわせ、その結果として、白い狼と「同化」したのだ。それは一方的な行為ではない。双方の理解と愛情があるから為せることなのだ。

シャイロックは長らく、ムルを理解したい、ムルに理解されたいと願いながら、それが叶っていない。その欲望は根深く、旧ムルの魂のかけらを自ら食べ、ムルを理解し、同化しようとしているのである(前回考察記事参照)。

しかしそれも、一方的な行為でしかない。ムルがシャイロックを理解しない限り、完全な同化はありえないのだ。ムルが求めてこない代わりに、シャイロックは自らの魂をすり込むように、ムルに「情操教育」を施す

こんなに狂おしい「乞い」があろうか。
こんな想いをずっと抱えているから、シャイロックは厄災の傷で「心臓が焼ける」などという痛みを顕現してしまったに違いない。

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新ムルに旧ムルの魂が満たされたとき、ムルは再び月を乞い、今度こそその身を捧げてしまうだろう。それがシャイロックのいう「月との同化」なのだとしたら…シャイロックはその「月」をどう扱うのだろうか。それを打ち滅ぼして、手中に収めたいのか。それとも、ムルを取り込んだ月に、さらに自分を取り込ませたいのか…
いずれにしても、破滅的な道しか見えない。

泡沫イベントでほんの少し、旧ムルを取り戻しつつあることが示唆されたムルである。しかし、シャイロックの前では旧ムルの気配は影を潜めている。
ムルに「シャイロックを食べろ」とは言わない。大いなる厄災を諦めるというのも無理な話だろう。せめて、ほんの一瞬でいい。旧ムルとして、シャイロックを理解し、彼のこの狂おしい「乞い」を認め、受け止めてほしいものである。そうすればきっと、違う可能性も見えて来るはずである…シャイロックの心臓は焼けるのではなく、あたたまるくらいになるはずである…


4.カイン・オーエン―代わりに「見る」、同じ真実を「見る」

今回の大本命である。私がまほやくを考察しようと思ったきっかけであるカイン・オーエンの因縁組だが、今回は衝撃的なことが多く、正気を保つのが難しかった。

そもそも、二人がバディとして白い狼のもとに向かっていること自体が、これまでの二人の関係性を思えば、奇跡に近い。各種イベントストーリーを経て、オーエンが本来の性格(「傷」により表面化する性格)を、少しずつ普段にもにじませている影響なのか。ともあれ、個人的には嬉しいとしか言いようがない。

アーサーの依頼で白い狼が、その声で何を伝えようとしているのかを調査するオーエン、その護衛(?)のカイン。
こんな依頼をすんなり受諾したオーエンをいぶかしがるカインに、オーエンはとんでもないことを告げる。

「あはは、妬いてるんだ?」
…と。

三度見したのは私だけではないと思う。
そのあとがさらに衝撃的であった。オーエンがアーサーに求めた「代償」についてこう告げるのである。

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「…ねえカイン。僕には青い瞳も似合うと思わない?」

これも三度見したのは私だけではないはずである。
ここで気になるのは、一体どちらの瞳を「青」にするかという問題だ。

黄色を青にするなら、オーエンはカインを手放すことになる。
赤を青にするなら、オーエンはオーエン自身を手放すことになる。

オーエンがどちらで発言したかは不明だ。
だが、「俺の瞳をもうひとつくれてやる」と発言したカインは、確実に「両目をオーエンに差し出す」ことを想定している。そして、オーエンの両目を受け入れることを想定している。

これは、わかりやすいようでわかりにくいオーエンの願望が垣間見得るやり取りになっている。

本当なら、カインは「そんなことをするならお前を殺す」と言ったって構わないところである。ところが、両目を差し出すという。カインがオーエンとの「目」による繋がりを忌避していたら、さすがに騎士とはいえこんな言葉は出ないはずだ
  ※ちなみに、泡沫イベントストーリーでも、オーエンに「目玉をいますぐ取り返しにこい」と煽られ、カインは拒絶している。
オーエンはこのやりとりで、まだ「カインと自分が肉体で繋がっていられる」ことを確認しているのだ。

その一方で、この言葉の裏には、カインが「アーサーの騎士」であるという意識を強烈に持っていることが透けて見える。
オーエンは、自分を守ってくれる絵本の中の騎士を、カインの中に見ている。しかし、カインが守るのはアーサーだ。
嫉妬…とは少し違う、もう少し複雑な感情が見え隠れする。

アーサーを守るためにはどんな犠牲も厭わないと宣言するカインに対し、オーエンは

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「あはは、王子様に聞かせてあげたら?きっと泣いて喜ぶ」

と笑顔で告げる。「笑顔で」だ。
これはきっと、「アーサーに向けられる騎士としてのカイン」を、実際に「見る」ことができたための「笑顔」であろう。アーサーの代わりに「見る」ことで、オーエンは騎士様への欲望を満たしている
笑顔の裏の切なさを思うと、少々泣けてくる。カインはきっと何一つ気がついていない。オーエンが「目」だけでなく、カインという存在を、もっと深く求めていることを


少々長くなってきたがもうひとつ。
結局アーサーにオーエンが求めた代償が「ケーキ」だったことが明らかになり、驚くことに、カインはオーエンに謝罪をする。

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「俺が勝手に疑って、決めつけたんだ。きっとアーサーを騙したに違いないって。お前は最初から本当のことしか言ってなかったのに、俺はまともに聞こうともしなかった。すまなかった、オーエン。どうか許してほしい」


ここも三度見した。
これに紐付いて、白い狼のことも上辺だけで判断してしまうところだった、遠吠えにこめられた真実も、理解しようとしていなかったことを、カインは反省している。

以前の考察記事でも述べたが、カインは「見る」ことに対して無頓着なのである。「見える」ものの裏にあるものを凝視し、見えないものを見出すことが不得手なのだ。
それが今回はどうだ。「見え」てこそいないものの、「見えないもの」の存在には気がつき、それを「教えてくれ」と他でもないオーエンに頼んでいるではないか。

なんたる成長、歩み寄りか。

オーエンがカインに惹かれた理由が、「恐怖の目でオーエンを見ないから(=オーエンの本質は恐怖ではない)」だということは再三述べてきたのだが、それは「見る」ことに無頓着だったからとも言える。しかし、今回は違う。きちんと本質を見ようとしている。
オーエンも同じ感動を味わったためなのか、大変素直に白い狼の真実を告げる。そして、その後、白い狼と花嫁の真実を、二人は目の当たりにすることになるのである。

おそらく、まほやくのストーリー上はじめて、同じ理解度で、同じものを、カインとオーエンは目にしたのである。

今回のストーリー中、カインはオーエンと一度も離れることがなかった。そのためか、「触れないと見えない」ということが一度もなかった。オーエンとともにあることで、カインは「見る」能力を取り戻し、「見えない」ものへの理解も可能になる…ということの示唆ではないのか。つまりカインは、厄災によって顕現した「傷」の大元を、克服しつつあるのではないか

それならば、今後オーエンと共に賢者の魔法使いとして在ることで、きっとオーエンの「真実」も見出せることだろう。
カインがオーエンを守り、オーエンがカインに「ありがとう」といい、カインの口から「オーエン、お前素直だな」というセリフが聞ける日が来るのは、そう遠くないかもしれない…そう感じさせるイベントストーリーであった。幸せである。



因縁組の考察が長すぎるという苦情は甘んじて受けたいと思う。今回はあまりに供給過多で我慢ができなかった。毎回思うが、それぞれのキャラクターが持つ、相手への強い思いに打ちのめされて考察を終えることばかりである。

シャイロックとムルにはあまり明るい兆しが見出せなかったが、今後のメインストーリーやイベントストーリーでそれぞれの関係が好転していってくれることを願っている。いずれにしても、「傷」はただの「傷」ではなく、愛することができる「傷」だと思うのである(都合にいい願望かもしれないが…)。
それにしても、メインストーリーの更新はいつごろなのだろうか。それまでには、他の魔法使いたちの考察も終えておきたいものだが…間に合うだろうか。ずっと保留にしてしまっている、フィガロとファウストについては、せめて更新前に考えておきたいものである。

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!

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