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【アイナナ5部考察】求められる「器」(ネタバレ)

早いもので5部7章・8章が公開された。
前回の更新分については、私にしては珍しくネガティブな気持ちになったのだが、今回は例の番組案件は小休止となったので、心穏やかに…なはずがなかった。

おそれていた和泉一織周辺の地殻変動が開始されてしまったではないか。

なんだか増田さんの演技も、すごく…不安げというか。それでいて速いテンポでしゃべると感情が見えないというか…
とにかく不安をあおられる7章・8章であった。

※5部考察の基本方針は、最初の記事↓を参照いただきたい。


今回の更新分について思ったことは、やはりアイドルというのは「偶像」…「形」「器」が大切なのだなということである。

もちろん彼らを見るファンも、その「器」に魅了されたりするわけだが、アイドル本人もその「器」に縛られるのだな…と。あたりまえのことを思ったりした。
そしてそれはアイドルには限らない…と。

以下、5部8章までのストーリーのネタバレはもちろん、妄想・願望を大いに含んだ、考察という名の二次創作を書き散らしていく。ご不快に思う方はUターンしていただきたい。
また、画像は全て©アイドリッシュセブンからの引用である。

1.家族のかたち―アイナナ寮の解体

「家族」を自称してきたアイナナだが、ついにその解体が始まりそうである。

ここで問われるのは、「共同生活をしていたから家族だった」のか、それとも「家族だったから共同生活をしていたのか」の問いであろう。

「器」があるから、中身もそうなるのか
中身がそうだから、おのずと「器」になるのか

これは結構この作品の根源的な問いである。

そして大問題なのは、アイナナのメンバーの場合、その「家族のかたち」というものを、明確につかめている人が少ないということだ。

未だ明らかにならない和泉家を除き、ほぼ全員、それぞれが抱く「家族のかたち」が違う。


全員共同生活という「器」をなくしたら、「家族のかたち」がわからなくなるだろう。
それは、アイナナというグループの形がわからなくなることに等しい。

一方で、アイナナという「器」がなくなることで、「個のかたち」が見えだすというのもある。この流れはやはり止められないようだ。

4部なんて全然平和だったじゃないかと思えるほどの、大打撃が来てしまいそうで私は怖い。きっとそれは、最も家族について不安をかかえる、MEZZOから始まるに違いないのだ…

2.「器」を守るために―九条鷹匡

暗い話になってきたので、個人的に今回「結構救いがありそうだな」と思った話をしたい。

九条鷹匡だ。

(というか、急にTRIGGERたちが「九条に言われたから話を聞きに来た…」と話していたのだが、そんな場面あったか?夢かもしれない)


ゼロの半生を描くミュージカルのため、周辺人物の調査を進める八乙女楽と十龍之介。その副産物として、我々はゼロ・九条・桜春樹の関係性について、新たな情報を得ることができた。

最初に言い訳をしておくが、ミュージカルの配役の都合上、「楽の考え方=九条に近い」「龍の考え方=春樹に近い」と捉えてみることにする。恐らくそれで合っていると信じている。

【桜春樹(龍)の場合】※ナギからの情報+龍の考え方
・愛(=目に見えない感情?)の扱いがうまい
・ゼロを死ぬまで探し続ける、ゼロのことを幸せそうに語る
・春樹が曲を贈ったのは、ゼロ・九条・ナギ(→音晴に委譲)の3名
・春樹は九条に「遺作」を託した
〇楽(九条)・天(ゼロ)が姿を消した場合、龍は二人を「探し続ける」
 (会いたい、必要だから)

【九条鷹匡(楽)の場合】※若干の紡からの情報+楽による自己完結
・九条に似ているのは「一織>紡」
・紡の目的は「アイナナの名前を世界に知ってもらうこと」(現在は迷いあり)
・楽は天を「ゼロ」から解放したい→九条「それは違う」 
〇龍(春樹)・天(ゼロ)が姿を消した場合、楽は二人を「待ち続ける」  
 (寂しいけれど、彼らが戻ってくる「TRIGGER」という場所を守るため)

上記のように整理してみた。龍にくらべて、相手の話ではなく、自問自答で自己完結していく八乙女楽に笑ったのは内緒だ。


とはいえ、なるほど、こう考えれば納得の配役かもしれない。
ただし、同じことが3部でできたかと言えば、それは違うだろう。
3部の楽に「待つ」はできなかっただろうし、龍に「探しに行く」は無理だったと思うからだ。そういう意味では、3部は本当にTRIGGERにとって必要は道のりだったと思える。


もう少し踏み込んで、ゼロのことを考えてみよう。

桜春樹は「ゼロ」の「中身」である、ゼロ本人の行方を探した。
考えてみれば当然のことである。
だって彼は、ゼロの、いわば「中身」である楽曲を作る人間だったのだから。

スーツケースが池に落ちた話でも、物体そのものや形にこだわらなかったというのがわかる。春樹は「アイドルの形をしていないゼロ」を探し続けたのだ。

一方、九条はというと、やはり「ゼロ」の「器」の部分を探し求める人ではないかと思うのである。

そういうと、「ゼロを超えるアイドルを~」というところばかりが注目されてしまうが、これはちょっと誤解があったかもしれないと、今回私は思った。

そもそも九条は、ゼロのステージングを手掛けていたのだし、「ゼロの外側」を作る専門だったわけである。内面は桜春樹が担当していたのだから、彼が「器」にこだわるのは至極当然のことなのだ。

それを踏まえた上で、九条が「ゼロを超えるアイドルをつくる」ことを目指している理由を考えるべきだろう。

そこでヒントになるのは、八乙女楽の言葉である。

「地の果てまで探しに行きたいけど、俺までいなくなったらTRIGGERが消えちまうからな。2人を待ちながら、1人で歌ってるよ。そうしてTRIGGERを守っていく」

つまりは、「器」を守るということだと思うのである。

これを九条鷹匡に置き換えてみれば、ゼロの失踪により、中身も器も失われてしまったわけである。九条は、自分ができることとして「ゼロの器」だけでも、再現して守ろうとしたのではないか。

ゆくゆくはそこに「ゼロが戻ってくるから」かもしれないし、彼(と自分と春樹)が作り上げた「アイドル」という概念の入れ物を、どうにか形として残したかったのかもしれない。

ゼロのコスプレをしてしまうほど拗らせた九条だ。春樹のように「中身」だけではだめだったのだろう。目に見える形で、どうにか「ゼロ」を残し、守りたかったのではないか。

ゼロの「器」を求めて、天や悠を振り回した九条の行いは褒められたものではないかもしれない。しかし、その根底に「ゼロ失踪への自責の念」があり、ゼロが戻ってくる場所を守りたい思いがあったのだとしたら…簡単に彼を責めることはできないように思う。

ある意味、アイナナに楽曲提供をした桜春樹と、同じ思いだったのではないか。
彼らは、ゼロと夢見た「アイドル」というものを、失いたくなかったのではないかと思うのである。


3.「器」を完成させる者―九条天


目下、「ゼロを超えるアイドル」の筆頭候補にいるのが九条天だ。
そして、彼は、ゼロが主演するはずだったミュージカルで、ゼロの役を演じる。ついに九条天が、ゼロの再来になるのではないか…という気配がしている。

今回気になったのは、九条鷹匡が八乙女楽に言ったとされる言葉である。

「俺は天を自由にしたい。あいつから解放してやりたいんだ。だけど、それは違うと九条に言われた」

言葉があいまいなので難しいが、どういうことなのか考えてみたい。

八乙女楽が言う「解放」というのは、天が背負う「ゼロを超えるアイドルになる」という役割からの解放であろう。つまり、ゼロとは無関係に、アイドルをさせてあげたい…ということだろう。
それこそが「天が自由になること」だという思想だ。

九条が否定しているのは、「それは天の自由とイコールではない」ということではないかと思う。

言い換えれば、天は「ゼロの器」を再現するという役割を全うすることにより、自由になる…ということではないのか。


振り返れば、天はずっと九条に同情的だった。
ゼロのコスプレをして乱入してきたときも、こっそり逃がしていた。

「ゼロ」としての器が完成する直前で、彼そのものが失踪してしまった九条にとっては、ゼロが残した楽曲を聞いたところで、満たされるはずもない。
物体として、「器」として完成された状態で再現されなくては、長年空いたままの九条の心の洞を埋めることはできないのだろう。

反対に九条天にしても、これまで「ゼロを超えるアイドル」としての器を、九条と共に作ってきたのだから、その完成形を極めない限り、その器のなかの「九条天」そのものも、外に出て来られないのではないかと思うのである。

つまりは、「ゼロを超えるアイドル」をカタチにすることは、九条だけでなく天のことも救うと…そういうことなのではないか。

それが「春樹の歌を天に歌わせて、この時代にゼロを蘇らせる」という最終プロジェクトなのであろう。

そう考えれば、天が七瀬陸にミュージカルを見せたくない気持ちも、なんとなくわかる。「不安だ」というのもあながち嘘ではないと思うのである。

まず、七瀬陸や家族を捨てた上で作り上げた「器」を、他でもない七瀬陸に見せることへの不安があるだろう。

一方で、もう少し別の不安もあると思うのである。

彼はこれまで、「ゼロを超えるアイドル」の「器」としての役割を一度も手放していない。それをいざ手放そうとするとき、その内側からどんな「九条天」が出てくるのか…それがわからないから不安なのではないだろうか。

幼少期の七瀬陸の前で歌って踊っていたころの自分がそこにいるのか、あるいは、TRIGGERの一員としての自分なのか、それとも、兄でも何でもないまったく違う何かなのか…

ゼロの「器」を離れた九条天が戻るべき場所こそ、八乙女楽が守ろうとしているTRIGGERの「器」なのだと思うが、ドキュメンタリー番組という不安要素を抱えた今、はたしてそれが守れるのか…わからない。
祈るような気持ちでストーリー更新を待ちたいと思う。


4.弟の「器」―和泉一織


今回の更新分のメインともいうべき、和泉一織パートである…これは相当にしんどかった。

和泉兄弟の事情に踏み込む前に、七瀬兄弟のエピソードと並行して描かれていたことに注目しておきたい。

【七瀬兄弟】
・現在は「家族ではない」
・兄(天)が弟(陸)に「隠し事をしている」

【和泉兄弟】
・現在は「家族である」(アイナナ=家族、という意味で二重に「家族」)
・弟(一織)が兄(三月)に「隠し事をしている」

恐らく終盤に差し掛かっていると思われる本作、やはり最後はこの二組の兄弟がポイントだと思わせるものがある。

ある意味、一織は「三月の幸せのために、三月の代替として、七瀬陸をコントロール」している節があり、この二組の兄弟がいびつな結びつきをしてしまっているのが怖いところである。

前述したが、九条天の場合、「家族ではない」スタンスを貫く砦であった「ゼロの器」という体裁が、もしかしたら外れるかもしれない局面に来ている。だとしたら、陸と「家族に戻る(兄に戻る)」という展開が待っているかもしれない。


一方、和泉一織である。

今回の一織の言葉のはしばしから感じ取れたのは、
「あくまでも「弟」であろうとする」姿勢
であったと思う。ここ最近のストーリーで「実弟」であることを強調していたのも、このためだったのかもしれない。

もう一度彼の言葉を詳しく見ていこう。

「私は一度、私を兄さんに売ろうとして、失敗しているんですよ。だから、こっそりあなたというパッケージに隠して、私を食べさせている状態なんです」


かつて一織が「売ろうとして失敗した一織」とは、どんな一織か。
ひとことでいうなら、「弟らしからぬ一織」である。

本来なら兄に頼り、兄に守られ、兄に甘えるべき「弟」の領域を超えた一織だ(と、少なくとも一織は思っている)

だから、「弟らしくない自分」は、「マネージャー小鳥遊紡」の包装紙にくるまないといけなかったのである。それは三月に「不要」とされたものだったから。

では、一織が「売ろうとして成功した一織」とは何か?
――「弟らしい一織」だ。

アイナナ内であろうと、アイナナ外であろうと、「弟」というパッケージを破ってしまったら、三月に嫌われる恐れがあると考えている。

そして、三月(=兄)に嫌われたら、アイナナ(=家族)が壊れるとも考えている。


「弟」というアイデンティティへの固執、必死さ
……というか、「弟」でなければ求められない、ニーズがないと言わんがばかりではないか。
そしてそのニーズがなければ、「家族」という居場所を失うと言っているようにも思える。

天が「ゼロの器」を求められたのと同じように、一織もまた「弟の器」というものにニーズを感じ、その求めに応じてきたのではないかと思うのだ。

当然ながら、今後、その「弟の器」から逸脱したプロデュース行為が、三月やメンバーに知られることとなる。そのとき、「本当の一織を広告」する必要が出てくるわけだが…

「弟に隠し事をされていた」ことでショックを受ける三月に、本来の一織を受け止める余裕があるのか。心配である。

(4部で「(一織が隠し事をしていたら)俺が人間的に信用できないのかって、さすがに立ち直れない」と大和に言っている)


たとえ他のメンバーが受け入れたとしても、三月に拒絶されれば一織は崩れるだろう。やはり「Mr.Affection」MVで示唆されていた通り、本作後半の重要なキーマンは、和泉三月だと思うのである…




今回も論拠の少ない妄想を書き散らしてしまった。申し訳ない。

個人的には、これまでどうにもつかみあぐねていた九条鷹匡の内面に少し触れることができたようで、よかったと思っている。

ここにきて一気に不穏な気配が漂ってきた、七瀬兄弟・和泉兄弟には心配が尽きないが、次回更新分からはじまるであろう、ドキュメンタリー番組も大変心配である。

どうも、Re:valeが懸命にたぐりよせたコネクションを、ポッと出の宇津木が利用し、強行した番組だというところが、不安なのだ。
Re:valeが起こそうとしている革命、その名前はめっきり聞かなくなってしまった。かといって、その革命がドキュメンタリー番組によって成功するとは到底思えない。

アイドル界自体の「器」にも、また一波乱ありそうである。そしてまたTRIGGERが憂き目を見そうである…(もう勘弁してくれ…)

長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!


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