ブルアカ最終編4章を迎えての考察の練り直し(ネタバレ有)
最終編、堂々の完結と考察の練り直し
ブルーアーカイブの最終編4章が公開され、ついにその物語に一旦の終止符が打たれた。その演出の素晴らしさやシナリオの妙、感動などについてはあまりに素晴らしすぎて書き始めると止まらないので、今回は「世界観の考察」に絞って記したい。
前回の記事で、4章公開前の情報から仮説を組み立てて考察を作り上げた。今回は公開された4章を踏まえ、前回立てた考察をブラッシュアップしていく。
世界における先生の立場
まず前回の考察では「キヴォトスは神々の証明のために行われた無数のシミュレーションの果てに生まれた世界である」という仮説を立てた。
その仮説に対しては正解とも不正解ともとれる証拠は追加されなかったが、気になるのはプレナパテス(別世界線の先生)のセリフ「「世界」の責任者」「私の「世界」」というものがあったことだ。
一般論で言うならば「自分の目の届く範囲で、大人は子供を守る義務がある」「世界を担う大人が、子供の責任を負い、見守るべきである」という意見である。しかし、果たしてそのような意図で「「世界」の責任者」「私の「世界」」という言葉選びをするだろうか。
文字通りの意味で、先生はこの世界の運営側、見守る立場にいる(いた)のではないだろうか。正しく人を作りたもうた神のように。そういえば教職者は聖職者とも言う。最後に全裸で地上に降り立った先生はキリストの再誕とかかっているという考察もある。シッテムの箱のパスワードも聖書由来のもののようだ。
つまり先生はこの世界にとって創造主という意味での神(の一端)であり、この世界を見守る者なのではないだろうか。神が人間を見守るように、今度は人間が神(生徒たちは神の化身のため)を見守っているという構図なのでは。
そう考えれば、私の「キヴォトスシミュレーション世界説」に少し説得力が増すだろうか。
未だ強大な影響力を持つ「無名の司祭」陣営
4章で明らかになった真実として、別世界戦におけるシロコの色彩との接触と反転、キヴォトスの滅亡の裏では、無名の司祭が糸を引いていたことが判明した。
「無名の司祭」とは、キヴォトスが今の学園都市として存在する以前に世界を支配していた勢力であり、「名もなき神」という自然災害の概念を崇拝し、超高度な科学技術を有していた。(詳細は前回の考察記事を参照)
無限の兵力を産みだす「Divi:sion」、無敵の空中要塞「アトラハシースの箱舟」、その起動キーを担う「key」と王女「AL-1S」、その他巡航ミサイルなどのオーパーツは全てこの勢力のものである。
前回の考察では、「名もなき神」陣営は今のキヴォトスとの争いに敗れ、Divisionはデカグラマトンに感化されケセドと化し、AL-1SとKeyはそれぞれアリス、ケイとして名を与えられたことで学園都市の概念に吸収されたことで、「名もなき神」陣営は全滅したと述べた。
しかし今回のシナリオによって、無名の司祭は今もなお何らかの手段で活動を続けており、現在の学園都市の概念を得たキヴォトスを滅ぼすことを目的として暗躍していることが明らかとなった。
無名の司祭たちは生徒たちのことを「忘れられた神々」と呼ぶ。このフレーズはエデン条約第4章のタイトルでもあり、前回の考察でも触れたが「神々」=「少女」であり、人類が信仰心を失った結果、世界ごと忘れられた神々の概念が今の生徒であり、それを哀れんだ先生が、そうした世界を生み出した責任を取る形で先生として降り立ったと考えた。
そして「名もなき神」を戴く無名の司祭が、彼女たちを「忘れられた神々」と呼ぶことで、その考察はかなり信憑性を増した。「名もなき神」と生徒たちは対立する概念であり、キヴォトスにおける神の支配権を争っているのだ。(自然信仰と多神教の対立とかかっているのか?)
無名の司祭たちの目的は、今の学園都市となったキヴォトスを滅ぼして、名もなき神々の支配する世界を復権させること。
「名もなき神のように、お前たちも同じ結末へと向かうだろう」とは、世界の主導権を握る争いに敗れ、今はその痕跡がうっすらと残るのみとなった名もなき神のように、学園都市の概念が消滅して滅び去ることを意味している。
「全ての時空から忘れられた神々を滅ぼし尽くすまで」というセリフから、多次元解釈における並行世界全てに存在する学園都市キヴォトスを消し去ろうとしていることがわかる。つまり、学園都市が存続する可能性の一欠けらも残さないということであり、シミュレーション世界説も結構信憑性を帯びたように思う。
無名の司祭と先生との神に対する解釈の違い
無名の司祭は生徒たち(神)を「崇高であり、畏怖すべき対象」であると先生に詰め寄り、先生は「彼女たちはただの生徒だ」と返している。これは神に対するスタンスというか、解釈の違いと考えることができる。
卑近な例だが、例えば「艦これ」は艦隊の擬人化だが、艦隊は戦争のために生まれた武器であり、それを少女の形に変えて愛でる行為を不謹慎だと良く思わない層も存在するだろう。
それと同じで、「神に少女の姿を与えて弱い存在として扱う」というのは、神は崇拝するものであり絶対的な存在であると考える層(宗教ガチ勢)からは到底受け入れられるものではない。(イスラム教などはそもそも神の姿を描くことすら偶像崇拝として禁じている)
「あれはお前の知る生徒(こども)ではない!」という言葉は、「絶対的で崇高な神を無力な子供として描いてんじゃねーよ!」という主張なのではないか。見ようによっては神という絶対的で崇高な存在を創作キャラクターとして貶めているように感じられるかもしれない。無名の司祭はそれが許せないのではないだろうか。
シロコがシロコ・テラーとなるまでの真相
今回のことでシロコ・テラー(以下、クロコと呼称)がいかにして色彩の支配下になったかも明らかになった。
クロコは別の世界線で、現在の世界線と同様に生まれ、同様に学園生活を送っていた。しかし先生が倒れ、仲間たちを失うという「とある事件」を期に絶望に支配され、その苦しみが「色彩」を呼び寄せる。
おそらくこの「とある事件」は無名の司祭が関与しており、どこまで意図したかは不明だが、結果的にクロコ(シロコ)の神としての本質である「死」を色彩によって呼び覚まし、その権能を利用してキヴォトスを滅亡させた。
そのままクロコを色彩の嚮導者として傀儡にし、並行世界上に存在する学園都市キヴォトス全てを滅ぼそうと画策したが、先生が身代わりに色彩の嚮導者(プレナパテス)と化したことで計算が狂う。だがどのみち傀儡は用意できたわけだし、なんならシッテムの箱も支配下におけたわけだからまあいいかという感覚でそのまま計画を続行した。
クロコは自身の「死の神」という本質と、自分のせいで色彩に染まってしまった先生に付き従う形で破壊活動を行っていたが、最後の最後に先生に戻ることのできたプレナパテスに責任を肩代わりしてもらい、今の先生に救われる形で無名の司祭たちの支配から抜け出ることができた。(無名の司祭たちの支配を先生=プレナパテスが引き受けた形になっていたので、プレナパテスの死と同時に支配を断てた)
ということだったのだろう。
つまり前回の考察における「ヤンデレシロコ概念」は完全に的外れだったということだ。しかしそうなると「なぜシロコが記憶を失った状態で突如としてアビドスに現れたのか」「その際の衣服がテラー化した時と同じなのはなぜか」という疑問は残る。
そこで新たな考察なのだが、最初に記憶を失った状態で現れたシロコは「クロコが再反転して神秘に戻り、過去の世界に転生した姿」なのではないだろうか。
「色彩として接触した生徒を元に戻すことはできない、しかしどうしても元に戻したければ自分の下を訪ねろ」とクズノハは語った。そして色彩と間接的に接触したセイアは、自身の未来視という権能を切り離すことで肉体の崩壊を防いだ。
つまり代償さえ支払えば色彩による反転を戻したり、再反転させることも可能ということだろう。
恐怖に反転したクロコを神秘に再反転させる。しかしそうなると、今の世界に神秘のシロコが二人存在することになり、そうなると何らかの悪影響が生じる。それを防ぐために、神秘に再反転したクロコを過去の世界に飛ばすことで、同一世界にシロコが二人いるという状態を防ぐことができる。
記憶を失った状態でアビドスに現れたシロコは、未来の世界で神秘に再反転されたクロコであり、つまり二人いると思われたシロコは同一の存在であるという説だ。
時系列で表すとこうなる
・別世界戦のシロコは色彩と接触して神秘→恐怖に反転、クロコになる
・クロコとなって現在の世界線を襲撃する
・プレナパテスの死によって無名の司祭の支配下を抜ける
・何らかの手段によって恐怖→神秘に再反転、シロコに戻るが過去に飛ばされる
・記憶を失った状態でアビドスに現れ、ホシノからマフラーを貰う
・シロコとしてアビドスで学園生活を送る
・色彩と接触してクロコに変じる or 色彩が襲来し、別世界のクロコと邂逅する……のいずれかに分岐
つまりシロコとクロコは同一存在であり、ループのような概念を構成しているという説だ。結構悪くない考察ではないだろうか。今後のメインストーリーの進行に期待が持てる。まあその場合、クロコがクロコとして先生と共に生活するルートがないため、プレイアブルキャラとしての実装は絶望的になるが。
A.R.O.N.Aとアロナ、いつどこで変質したのか
前回の考察部分で間違っていた大きな部分が、アロナが今のアロナとなったタイミングである。
前回考察では
・連邦生徒会長が自らの存在を消してシッテムの箱に移り、アロナが生まれる
・先生とアロナが活躍することで生徒たちの破滅が回避される
・しかし色彩の襲来とシロコの反転によって先生は死亡する
・先生とアロナが反転してプレナパテスとA.R.O.N.Aに置き換わる
と考えた。
しかし今回明らかになった真実では、プレナパテスに変貌した先生の所持するシッテムの箱にはA.R.O.N.Aがいた。つまりA.R.O.N.Aはアロナが色彩によって反転したアロナ・テラーではなく、むしろ「元々シッテムの箱に常駐しているAIはA.R.O.N.A」であり、今のアロナが特殊な状況にあると考えられる。そしてその容姿と声から、失踪した連邦生徒会長が関与していることも明らかだ。
私は「生徒たちの破滅を回避できなかった連邦生徒会長が失踪してアロナになった」と考えたが、プレナパテスが色彩によって命を落としたタイミングではまだA.R.O.N.A(以下、プラナと呼称)だったことを考えると、ここに関連性はまだないのかもしれない。あるいはプレナパテスが元居た世界では連邦生徒会長が存命であり、連邦生徒会長と先生の二人が共存して自治を行っていたのかもしれない。
そして先生(プレナパテス)の主張と連邦生徒会長の主張は対立しており、先生は取るべき責務を果たせなかった。その結果生徒たちは破滅していき、色彩を呼び寄せることになった「とある事件」も防げず、先生は重症を負い、シロコは絶望して色彩を招き寄せた。
プロローグで連邦生徒会長の語った「私のミス」とはそのことを指しており、それによって連邦生徒会長は自らの存在を消滅させ、シッテムの箱と自分を融合させることで「アロナ」を遺したのではないか。
つまりプレナパテス時空での時系列はこうなる。
・連邦生徒会長と先生の双方が存在する
・しかし世界を救うために取るべき方針が対立し、連邦生徒会長の主張が通った
・結果として先生は大人としての責務が果たせず、生徒たちは破滅を迎えた
・「とある事件」により先生が重傷を負い、シロコが絶望して色彩を招き寄せる
・シロコが反転、先生がプレナパテスとなる
プレナパテスが「生徒から送られた折り鶴」を所持していたため、全てが破滅の結末を迎えたわけではないかもしれないが、概ねこのような流れだろうか。このあたりは今後の展開によってどうとでも変わりそうではあるが、連邦生徒会長の有り様を考察するにあたってここの詳細が明らかになるのを待ちたいと思う。
先生が昏睡状態となった元凶の事件とは何だったのか
ではプレナパテス時空において、先生が昏睡状態に陥ることとなった「とある事件」とはいったい何だったのだろうか。
判明している事実を並べると「シャーレが爆破され、先生は100日以上も昏睡状態となる重態を負った」「ホシノが死亡」「アヤネが生命維持装置なしでは生きていけない身体になる」「セリカが失踪」「ノノミがアビドスを離れて何らかの変化を遂げた」という恐ろしい事件であり、シロコが絶望して色彩を招きよせた原因となっている。
この事件とはなんだったのか。既存の事象に当てはめるなら、アロナの不在や補習授業部を救えなかったことでエデン条約を襲った巡航ミサイルから先生を防げなかった、とも考えられるが、それだとアビドスのメンバーが被害を受けた理由を説明できない。
となるとやはり「無名の司祭」が、名もなき神の復権のため、現在のキヴォトスを滅亡させるために何かしらの工作活動を取ったものと考えられる。そして、その事件は今この現在のキヴォトスにおける時間軸上からすれば未来に発生した可能性が高い。
つまり、色彩の襲来を退けた最終編4章後の世界でも無名の司祭は活動を続けており、今後、シロコを絶望に導いた事件を起こそうとしているのだろう。つまり今後のメインストーリー上では無名の司祭との戦いが繰り広げられるのではないだろうか。
反転したクロコの処遇、クズノハの正体、カイザー社と裏取引を続けるカヤ、FOX小隊がシャーレから盗み出したモノ、遺されたKeiのデータ、暗躍する無名の司祭、そして最後まで姿を見せなかったゲマトリアの今後の活動、死を迎えたデカグラマトンと遺された十の預言者。まだまだ語られていない内容が多いため、今後のシナリオにも期待が高まる
色彩とは何だったのか
結局色彩とは何だったのか。キヴォトスを滅ぼそうとしていたのは、あくまで色彩を利用していた無名の司祭の意思であり、色彩自体は「接触した存在を反転させる」という役割しか持っていない意思なき存在と取るのが妥当だろうか。
しかし「シロコの絶望や苦しみ、あるいは死」「先生の苦しみ」に反応して接触してきたこと。無名の司祭が「色彩が(神秘も恐怖も崇高も持たない)無価値な存在に接触する理由がない」と語っていることを考えると、ある程度の行動原理は持っているように思える。
つまり色彩は「神の苦しみ」に呼応して呼び出される存在であると考えられる。(先生の苦しみに反応したのは例外)。私はキヴォトスシミュレーション世界説を提唱しているが、その中における色彩を、自害用のウイルスプログラムと考えていた。しかしどちらかと言うと「今の世界が無価値だと神が感じた時、その存在を反転させることで詰みの状況からの脱却を図り、新たに価値のある世界の創造を促す」という役割を持つだけであり、今回はその対象が偶々死の神アヌビスだったがために結果的にその世界を終焉に導いたが、別の生徒が反転した場合はまた違った結果を招いたのではないだろうか。(セイアの肉体は崩壊していったが、あれは例外的な接触をしたためか)
しかし意思なき存在と断じてしまうには、ベアトリーチェが「ゲマトリアと先生の共通の敵」と語ったことに違和感が残る。ベアトリーチェが色彩の力を利用するために呼び起こそうとした「儀式」は、アツコを生贄に捧げることによって発動していたため、これはアツコ(高い神秘を持つ神)に苦痛を与えることで色彩を反応させ呼び起こそうとしていたのか。ベアトリーチェはアリウス生徒に対して「この世界は無価値だ」「苦しむために生まれてきた」といった概念を教え込んでおり、シロコも「苦しむために生まれてきた」という思想がトリガーになった可能性もあるので、正式には色彩の呼応条件は「神が自死を望んだ」「この世界を無価値に思った」ことが条件となるのかもしれない。だが神に苦痛さえ与えれば簡易的に条件は満たすため、アツコの代わりにサオリが生贄になっても機能したのか。色彩の力を利用するとはどういうことだったのか。まだまだ疑問は残る。
新たな考察の結果と今後
前回の考察から、間違っていた部分を修正して練り直した、現時点での自分の中での考察、ブルーアーカイブ世界における出来事の時系列を以下に残す。
・神の実在を証明するためのシミュレーション計画が始動する
・超高性能量子コンピューター、デカグラマトンがシミュレーションを開始する
・しかし、人類が信仰心を捨てたため、計画も破棄される
・だがシミュレーション自体は継続しており、デカグラマトンはついに神々の存在を証明するに至る
・その結果、無数のシミュレーション結果である神々の世界「キヴォトス」が誕生する
・キヴォトス内では様々な神の概念が争い合い、支配者が入れ替わってきた
・自然崇拝の概念である「名もなき神」を崇拝する「無名の司祭」が支配者として君臨し、超高度文明を築く
・「名もなき神」が「忘れられた神々」に敗れ、消滅する
・「忘れられた神々」が支配者となり学園都市としての今のキヴォトスが生まれる
・学園都市の管理者として連邦生徒会長が君臨する
・名もなき神やカイザー社が管理者権限を奪い取ろうと侵略をはじめ、ゲマトリアも暗躍を始める
・連邦生徒会長ではその侵略からキヴォトスを守ることができず、多くの並行世界で学園都市は消滅していった
・連邦生徒会長は「責任を取る存在」である先生を学園都市の守り手として招聘する
・しかし「責任を持つ者」としての在り方で意見が対立する
・その結果、先生は大人としての責務を果たせず、生徒の破滅を防ぎきれない
・そして無名の司祭の暗躍により先生は重傷を負い、シロコが色彩を招き寄せる
・色彩とシロコ・テラーによってその世界でのキヴォトスは消滅してしまう
・「私のミスでした」「貴方の選択のほうが正しかった」と連邦生徒会長が先生に語る(プロローグ)
・連邦生徒会長は自らの存在が破滅を招くと悟り、先生に全権を託して自らを消滅させ、最低限の権能をシッテムの箱に託して同一化し、A.R.O.N.Aはアロナに変質する
・連邦生徒会長が失踪し、先生とアロナが存在する世界線が(無数に)生まれる(ゲーム開始時点)
というのが現状判明している事実から推察される真相だろうか。まだまだ次のイベントも控えているため、それによって明らかになる事実もあるだろう。このまま時間軸が進んだ場合、今後一番問題となるのは「進級をどう扱うのか」という点だが……いずれにせよ楽しみだ。