第1回限築杯参加レポート~ヒルと駆け抜けたかったINV構築
ひょんなことから始まったINVブロック構築のオンライン大会、限築杯。20年も前のプールで戦うというオールドスクールにも負けない懐古っぷりのフォーマットは非常に人気が高く、最終的には100人近くが参加するという大盛況な大会となりました。
とはいえ、私はINVブロック当時は小学生であり、思い入れなど全くなかったので、スルーを決め込むつもりでした。あのカードと出会うまでは。
インベイジョンに存在する、自身と同じ色の呪文を1マナ重くしてしまうデメリット持ちのヒルサイクル。その白担当である《あられ石のヒル》。このヒルサイクルは、緑の《翡翠のヒル》だけは構築でも使われたのに対して、他のものはカスレア扱いされてしまうという結果に。
某鯖でINVブロックの話題を目にしたとき、このヒルサイクルも話題に上がっていたのですが、「白ヒルだけはどうやっても活用できない」という意見を目にして、自分の中の変なスイッチがONに。どうにかしてこの白ヒルを使ってデッキが組めないかと模索して、そのまま大会にも参加しました。
1.使用デッキリスト
[土地]
4:《デアリガズのカルデラ/Darigaaz's Caldera》
4:《コイロスの洞窟/Caves of Koilos》
4:《戦場の鍛冶場/Battlefield Forge》
4:《山/Mountain》
4:《沼/Swamp》
3:《平地/Plains》
[クリーチャー]
4:《あられ石のヒル/Alabaster Leech》
4:《モグの歩哨/Mogg Sentry》
4:《貪欲なるネズミ/Ravenous Rats》
4:《シヴのゾンビ/Shivan Zombie》
4:《ファイレクシアの憤怒鬼/Phyrexian Rager》
[スペル]
4:《狂った怒り/Maniacal Rage》
4:《悪意ある力/Sinister Strength》
4:《ウルザの激怒/Urza's Rage》
4:《暴行+殴打/Assault+Battery》
1:《秩序+混沌/Order+Chaos》
[サイドボード]
2:《頭の混乱/Addle》
2:《焦熱の溶岩/Scorching Lava》
2:《終止/Terminate》
2:《ネクラボルバー/Necravolver》
2:《十二足獣/Dodecapod》
2:《くすぶるタール/Smoldering Tar》
3:《増進+衰退/Wax+Wane》
完成したデッキがこちら。各カードについて説明していきます(長い上に、ぶっちゃけ大した内容ではないので、読み飛ばしてもらって構いません)。
・1マナクリーチャー
《あられ石のヒル》
このデッキの主役。1マナ1/3という非常に優秀なサイズを持つものの、代償として白い呪文のコストを白マナ一つ分重くするという厄介な能力を持ちます。このデメリットを軽減するために、白い呪文は極力入れていません。
能力の厳しさに対してサイズが見合っていないと言われますが、それでも1/3というサイズはこの環境において驚異的です。INVブロックでは1マナクリーチャーがほぼ1/1しかおらず、2マナでも最大2/2でパワー3はいません。3マナも2/2が標準サイズであり、パワー3は《怒り狂うカヴー》などのごく一部のみと、全体的にサイズが小さいです。つまり、白ヒルを戦闘で討ち取れるクリーチャーは殆ど4マナ以上ということです。また、2マナ3点火力が存在しない環境であり、確定除去も《終止》を除いて3マナ以上なので、《終止》を除く2マナ以下の除去も効かないという点も見逃せません。これらの点から、非常に殴りやすいクリーチャーと言えます。
また、この環境は初動2ターンであることが多く、1ターン目からクリーチャーを出されることがほぼありません。何なら初動3ターンも普通にありえます。つまり先手1ターン目にヒルを出せば、確定で一回、高い確率で二回は殴れます。環境のゲームスピードを考えれば十分脅威的であり、このデッキの強みにもなります。
《モグの歩哨》
ヒルを生かす都合上、アグロにならざるを得なかったので、追加の1マナクリーチャーが欲しくて採用。相手が呪文を唱えると+2/+2されるものの、基本的には1/1です。これでも、この環境における1マナクリーチャーとしては白ヒルを除いて最強格です。
相手の場にタフ2が出るだけで殴れなくなるという点ではヒルに劣るものの、相手の呪文に反応して+2/+2される性質上、2点火力では落ちないというメリットがあります。また、隣のサイズが大きいクリーチャーへの除去をメインで撃つことも強要出来るので、ある程度相手の動きを縛れます。
・2マナクリーチャー
《貪欲なるネズミ》
色が合ってるから雑に入ってる枠。線の細さが致命的なデッキなので、出るだけでアドを稼げて殴れるクリーチャーはそれだけで優秀です。後述するオーラとの相性も良く、デッキには噛み合っています。
ただ、所詮は1/1であること、サイドボードに(下手すればメインから)《十二足獣》が標準装備されている環境であることから、サイド後は基本全部抜きます。
《シヴのゾンビ》
友好二色の2マナ2/2プロテクションサイクル。赤黒はプロテクション白です。アグロキラーとして名高い《幽体オオヤマネコ》を抜けれる点、名誉回復が当たらない点が大きく、白くない相手でも2/2になるのは大きいです。
・3マナクリーチャー
《ファイレクシアの憤怒鬼》
色が合ってるから雑に入ってる枠その2。このデッキの貴重なフラット受けかつリソースを稼ぐ手段です。土地しか引かないときは大体これを欲している。
手札を減らさず盤面展開出来てバウンスにも強く、サイズも2/2とそこそこあるので、枠を埋めてるカードとしてはかなり頼りになるほう。実質殴れる《予言》です。反面、重いカードなので、クリーチャーがこれしかないハンドは基本マリガンになります。
・オーラ二種
《狂った怒り》
《悪意ある力》
このデッキにおいて打点を稼ぐのは、これらのオーラの仕事です。1ターン目に着地したヒルを2マナのオーラで強化して殴ることで、環境最速の打点を叩き出します。代わりに、除去に対するリスクがかなり大きくなります。特に《排撃》が天敵で、手札を減らすことなく処理されて、アドでもテンポでもかなりのロスを強いられます。貼るタイミングでの除去もきつい。
《狂った怒り》は+2/+2修整を与える代わりに、ブロックに参加できなくなるデメリットを与えます。タフネスの修正値が高いので、相手のブロッカーに討ち取られるリスクが減り、火力にも耐性ができます。ヒルに貼れば3/5となり、《火炎舌のカヴー》が効かない上に一方を取れます。歩哨に貼ると3/3になる上に、こちらも自身の能力により火炎舌で焼かれなくなります(戦闘すると相打ちですが)。
《悪意ある力》は+3/+1修整を与え、色を黒くします。環境にはプロテクション黒持ちがあまり使われておらず、一部の除去は黒いクリーチャーを対象に取れないので、色変更能力は多くの場合メリットとして機能します。パワーへの修正が大きく、ヒルに貼れば4/4になるものの、タフネスへの修正が低い分火力や戦闘での耐性は落ちます。特に歩哨に貼った場合、4/2となってしまうため、環境に蔓延る2/2と相打ちになってしまう点が非常に厳しいです。場合によっては《溶岩の撃ち込み》だと割り切る必要も出てきます。
・除去
《ウルザの激怒》
色が合ってるから雑に入ってる枠その3。打ち消されない3点火力であり、このデッキだとブロッカーを排除できる点がとても重要です。勿論、最後の一押しとしても重宝します。反面、3マナと重いため、連打してデカブツを落とすような運用も出来ず、ブロッカーをどかしたせいで追加のアタッカーを展開できなくなる場合も多いです。
《暴行+殴打》
赤緑の分割火力。赤のモードはソーサリーのショックで、小粒クリーチャーはこちらで大体処理できます。軽さが優秀なものの、その分落とせる範囲も狭く、クリーチャーを展開してこない相手だとうまく扱えない場合が多いです。緑のモードは4マナで3/3を出します。除去の枠に入るアタッカーはありがたいものの、緑マナ供給源が《デアリガズのカルデラ》しかないので出せる場面が少なく、バウンスに滅法弱いなど、あまり使いたいモードではありません。
《秩序+混沌》
お洒落枠。赤白の分割カードです。白のモードは4マナで攻撃クリーチャーを追放します。メインに入る唯一の確定除去で、デカブツを出されると大体これ頼みになります。赤のモードは3マナインスタントで、唱えたターンのブロックを禁止します。睨み合いをしているときや、トレンチのような大量ブロッカーを出されたとき用に採用しています。……もっとも、《混沌》のモードで撃てた試しがありませんが。
・マナベース
4《デアリガズのカルデラ》
4《コイロスの洞窟》
4《戦場の鍛冶場》
4《山》
4《沼》
3《平地》
マナベース警察に喧嘩を売るかのようなマナベース。このデッキは序盤にタップインが許容できず、後半は土地が要らない都合上、《アーボーグの火山》の代わりに《デアリガズのカルデラ》を採用しています。その分《モグの歩哨》が出しにくいものの、このデッキは《あられ石のヒル》から入るほうが圧倒的に強いので、《平地》の枚数も減らせず、このようなマナベースになりました。色事故が多発してマリガンが増える原因になっているものの、そもそもオーラビートの時点で事故を避けられないので、多少は割り切っています。またダメージランドが多く、タップインが少ない代わりにライフがかなりハイペースで減るのも厳しいです。とはいえ、こちらのライフが減るのは敗色濃厚なときなので、あまり気にする必要はありません。
・サイドボード
《焦熱の溶岩》
《終止》
除去枠。《終止》は再生禁止つきの確定除去。BBBのようなデカブツを入れてくる相手に入れます。《焦熱の溶岩》は2マナ2点火力で、キッカーで追加の赤マナを払うと再生禁止と死亡時追放が付与されます。こちらは主に《幽体オオヤマネコ》対策です。《終止》でも対策できますが、《幽体オオヤマネコ》が入るデッキの代表格であるドロマーコントロールに《終止》を入れたくないという理由で、本体にも撃てるこちらも採用しました。
《頭の混乱》
2マナハンデス。事前に抜きたいカードの色を指定する必要があるものの、数少ないピーピングハンデスです。主にコントロール相手のバウンスやカウンターを抜くのに使います。1、2ターン目の動きが決まっているデッキなので、可能な限り3ターン目に撃ちますが、後手だと間に合わない場合もあるので、その辺は状況次第になります。
《ネクラボルバー》
追加のクリーチャー枠。ネズミをサイドアウトしたい都合上採用。黒のボルバーは3マナ2/2で、白を含む4マナで出すと3/3と魂の絆を得ます。基本はこのモードで出しますが、《デアリガズのカルデラ》から緑マナが出るので、6マナ5/5トランプル魂の絆として出すこともあります。
《十二足獣》
ハンデス対策。相手のハンデスで墓地に行くと5/5になって戻ってくる強い子。主に青黒系コントロールの《はね返り》対策です。
《くすぶるタール》
4マナの赤黒エンチャントで、毎ターン相手に1点、ソーサリータイミングでのサクリファイスでクリーチャーに4点のフレキシブルなカード。コントロール、特にトリコ系の《稲妻の天使》対策にもなるダメージソースとして採用。これがあるので、ドメイン対策の《不寛容の仮面》は入れていません。
《増進+衰退》
緑白の分割カード。メインになるのは《衰退》のモードで、1マナでエンチャントを破壊します。白い呪文なのでヒルで重くなるものの、ドメインの《集団監禁》を対策しないとやっていけない環境なので採用。似た役割の《オーラの旋風》は2マナであり、ヒルで重くなることも考えると軽いこちらを優先しました。《増進》は1マナで+2/+2のバットリですが、緑マナ供給源が少なく、ドメイン相手ではクリーチャー同士の戦闘が発生しにくいので、最後の一押し以外で使うことはほぼないです。
2.大会結果
R1 BBB 後手 ××
G1 《シヴのゾンビ》と《ファイレクシアの憤怒鬼》が除去され、相手の《疾風のマングース》が止まらず。
G2 《ネクラボルバー》を全力キッカーするも《神秘の蛇》で消されて負け。メインも合わせてヒルを引けず。
R2 ドメイン 後手 〇×〇
G1 《シヴのゾンビ》に《悪意ある力》を二枚貼り、相手が土地事故している間に殴り切り。
G2 《破滅的な行為》で盤面を流され続けて、ロングゲームになって負け。
G3 お互いにトリマリスタート。2ターン目にならないと《モグの歩哨》を出せないキープをするも、《シヴのゾンビ》が降ってきたのでオーラを貼りつつ殴り、集団監禁の返しに五枚目の土地を無事引けて勝ち。
R3 青黒コン 先手 ××
G1 ネズミスタートしたら《十二足獣》がこんにちは。
G2 ダブマリ後、黒マナなしハンドをやむなくキープしたところ、黒マナ引かず負け。
R4 緑入りマシーンヘッド 先手 ×〇×
G1 《モグの歩哨》にオーラ貼りながら殴るも、ブロッカー二体いるところを強引に突っ込んで相打ち。以降は後続がサイズ負けしてどうにもならず。
G2 ダブマリ除去のみハンドをキープしたところ、相手が事故ってくれて勝ち。
G3 《シヴのゾンビ》キープしたものの、他のクリーチャーを引けず負け。
R5 ステロイド 先手 ××
G1 《シヴのゾンビ》スタートするも何も引かず。
G2 トリマリ後、《モグの歩哨》にオーラ貼るキープして殴り合うも、《スキジック》を出されて突然死。
R6 大釜のダンス 先手 〇〇
G1 《モグの歩哨》に《狂った怒り》貼って殴り続けて、相手の対応がなく。《調査》からデカブツを捨ててたのでデッキ判明。
G2 《シヴのゾンビ》をひたすら並べて殴り勝ち。
R7 WBGミッドレンジ 後手 ×〇〇
G1 ヒルとネズミ連打するも《魂売り》に削られ、なんとかダメージレースしてお見合いに持ち込むも《死のわしづかみ》で突然死。
G2 《シヴのゾンビ》連打で、相手が腐った《名誉回復》を土地に撃ってくるもそのまま勝ち。
G3 トリマリでヒル、《デアリガズのカルデラ》、《頭の混乱》、《悪意ある力》をやむなくキープ。トップから《コイロスの洞窟》が降ってきたお陰で今大会初のヒル→オーラムーブを達成。相手が《頭の混乱》を外した返しに《頭の混乱》を撃ち返して《破滅的な行為》を抜き、相手の土地が詰まり続けて投了される。
3-4、58位でした。負け越しはやむなしとしても、ヒルにオーラ貼る動きが最終ラウンドの最終ゲームでしか出来なかった(しかも2ターン目にハンデス挟んだ)ことがとても悔しいです。
3.感想
人気のブロックだけあって、個々のカードが強く、色々なデッキに可能性があるフォーマットでした。反面、低マナ域のクリーチャーがあまり強くなく、アグロヘイトの高いカードが多いので、アグロ好きな人にはあまり向かないフォーマットかもしれません。とはいえ、アグロが厳しい分、環境が遅いので、きちんとした構築が出来れば意表を突いて不意打ち気味に勝ちに行くことも出来るのは良いと思いました。
次回もINV構築なら是非とも参加したいところですが、次回もヒルデッキを使うかは未定。あまり活躍させられなかったのでもう一度トライしたい気持ちはあるものの、別のデッキ案もあるので悩ましいです。
最後に、主催の添削さん、スタッフの方々、対戦してくださった皆さん、楽しい時間をありがとうございました。練習期間も含めて、充実した日々を過ごせました。
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