#05サスティナブル調査隊
飢餓を無くし、貧困も救う養殖技術?
今日からは、「飢餓をゼロに」という目標を追いかける企業や技術を追って行きます。
本題に入る前に、この目標の中には8つのターゲットがあり、その一つに下記の内容があるのでご確認ください。
2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼 児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料 を十分得られるようにする。
この安全で栄養のある食物を人々に届けることは、日本人に取って出来て当たり前のことです。
しかし国外を見ると急激な人口増加の影響や、ライフラインの未整備、そして産業やそのサプライチェーンなどが整わないなど、実行する仕組みが整備されていない国も多いのです。
そこで、日本で成功させたモデルケースを世界の国々に広めていく事が先進国としての重要な務めだと思います。
食余りの中の飢餓
前回のお話で、豊かと思われる日本ですら、貧困がある状況をお伝えしましたが、飢餓も同様です。
労働に就くことができない事から貧困となり満足に食事をすることすらできない事もあります。
周りには食糧が有り余るほど、有ったとしてもそれを貧しいという理由から手に入れることができないということです。
また国外に目を向けると、産業がなく国の経済が発展途上にいて国民の暮らしが豊かにならないという問題もあります。その中には、水や土地など自然資源に恵まれていないという国もあるのです。
例え日本には、豊かな自然環境から与えられる肥沃な土壌や水資源が豊富にあると言っても、それは分け与えたくても不可能な事です。
しかし、技術という形ならばそれを共有することが可能です。
日本の養殖技術
日本には有り余るほどの食糧があるというお話をしていましたが、それを食糧に困る国々に提供するという考えもあるかも知れませんが、それは食糧としてできる期間を持つ僅かな物です。
サスティナブルな食糧供給への一筋の一つが、作る技術を提供することです。
例えば先進国では、野菜栽培ではあれば、水耕栽培や屋内での人工的な土壌・日照環境での野菜工場、肉であれば代替え肉や培養肉、水産では養殖などで新たな仕組みや食材にチャレンジされています。
それらを持って、劣悪な環境やこれといった産業を持たない国々で事業を起こしたり技術そのものを共有するのです。
過去の日本も多くの産業で技術を移転し、中国など開発の遅れていた国々でその経済の成長を手助けしてきた実績があります。
その技術の中でも、今回は養殖について見て行きます。
食糧を調達しにくい地域や雇用を生む産業がない地域でも、条件が整えば、養殖という手段で必要とするものを得られるかも知れません。
日本では養殖というと、近代のマグロや鯛、ブリ、えびなど海水での養殖がありますが、うなぎやニジマスなどの淡水の養殖も盛んです。
そんな様々な養殖となる魚の種類ですが、養殖の技術そのものにも変化があります。それが「アクアポニックス」という生産手法です。
アクアポニックス を理解する上で、身近なところでのイメージとして「株式会社おうち菜園」という会社のサイト動画が分かりやすかったので、リンクを貼っておきますね。
簡単にいうと、養殖に水耕栽培をミックスし、魚を育てながら野菜も収穫できるという特徴があり、生産能力として単純計算で食物を2倍生産できるメリットがあると考えればいいと思います。
そして、魚が排出する糞尿も廃棄物とはならず、野菜の堆肥となる点が、生産サイクルの中で廃棄物を減少させる仕組みでシステムとして非常に期待されるものとなっているのです。
機器製造メーカーが養殖?
またチョウザメという魚を養殖をしているフジキンという企業が、この養殖にアクアポニックス を取り入れようと研究を進められている様です。
フジキンは、日本で初めてチョウザメの人工ふ化に成功したそうで、水を制御する技術も非常に高く、その技術をこの養殖に導入されています。
例えば養殖に使う1日の平均注水量は約1トン、家庭用風呂換算で5~6杯分しか使用しておらず、一般の掛け流し方式だと、同一規模で、1万8千トン/日の注水量が必要になるらしく、その節水効果も高いのです。
ちなみにフジキンの本業は、バルブを製造する機器メーカーです。
どう養殖やアクアポニックス 事業と繋がるのか、ご興味ある方はメーカーサイトをご覧ください。
栄養価の高いキャビア・食用にもなるチョウザメ
ここで登場したチョウザメですが、この魚の卵が高級食材として名の高い「キャビア」となるのは有名ですね。
このキャビアの栄養成分としては、ビタミンB2、B6、B12、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンC、ミネラル、たんぱく質、抗酸化物質、オメガ3などが含まれているとの事です。
またチョウザメの肉は脂肪分が少なく、ソーセージやハムなどの加工品されたりもします。
また洋食レストランで食材として取り扱いされる事もあります。
世界において、チョウザメから採れる食品は、キャビアやその肉に限られません。腸や皮などの他の部分も、食品や医薬品、化粧品などに利用されています。
チョウザメの皮は、皮の製造に用いられ、軟骨はゼラチンやクリームを作るのに利用されるとの事。
捨てるところがないのですね。
栄養源として見ても、他の魚に比べて良質のタンパク質が非常に多く、そして二次加工品として利用できるチョウザメは、飢餓の問題と共に暮らしに役立つ資源と言えそうですね。
アクアポニックス長岡プラントとは
データセンターは言わばサーバーの倉庫。
年々増加するデータ量を処理するために、無数に設置されるサーバーは高性能・小型化しています。これにより、データセンターの単位面積あたりの発熱量も増加し続けています。
そして地震、雷害、風水害などの自然災害に備えるとともに、熱処理にも配慮しないといけません。
そのな設置環境に配慮しないといけないデータセンター が新潟県長岡市に建設されました。
このデータドックが運営する寒冷地型データセンター「新潟・長岡データセンター」の敷地内に建設されたのが「アクアポニックス長岡プラント」です。
国内最大規模のアクアポニックス農法を実践する植物工場で、電力供給量など高いスペックを備えた寒冷地型データセンターの運用から生じる雪冷熱、地下水、IT機器の廃熱などの余剰エネルギーをアクアポニックス農法に活用するということです。
最後に
ここまで見てきた技術により、アクアポニックスやデータセンターが食糧を調達しづらい地域や産業を必要としている地域で運用される様になると、「飢餓をゼロに」するという目標や前回見てきた貧困という問題も含めて解決の一助となるのではと考えます。
皆さんはどう捉えられましたでしょうか?