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FAカップ5回戦 マンチェスター・ユナイテッドVS.ウェストハム〜接戦を演出した策士モイーズ〜

 今度こそはユナイテッド。ということで、FAカップにおけるユナイテッド対決、そしてモイーズとの古巣マッチ。エヴァートン戦は生で見れなかったので、まず先にこの試合の軽めのレビューを書いていきたいと思います(前回ほんとに書きすぎた[反省])。

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 シェフィールド戦の敗戦以来、いまいち波に乗れないユナイテッド。4回戦ではリヴァプールを退けただけに、プレミア上位対決とはいえ負けられません。ただ、ELもそろそろ始まるのでTOしないとということで、リーグ戦からメンバーを6人入れ替え。それが吉と出るか凶と出るか。一方のウェストハムはリーグでは着実に勝ち点を積み重ね、6位と健闘。直近のリーグ戦(VS.フラム)からは所属元のため出場不可のリンガード、欠場のアントニオに代え、退場処分取り消しとなったソウチェク、ライスをIHとし、アンカーにノーブルを据えた4-1-4-1を採用し、ワントップにはヤルモレンコ、左SHはベンラーマではなくフォルナルスを起用しました。このウェストハムの4-1-4-1へのフォーメーション変更が、この試合の最初の様相をかたちづくりました。(ソウチェクとライスは頻繁にポジションチェンジしていたので勘弁)

ウェストハムのゲームプラン=がっつり「人」をみるスタイル

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 ウェストハムはこの試合、ターンオーバーもあってノーブルを起用。ただ、ノーブルをアンカーに据えることで、相手の4-2-3-1のフォーメーションに対する「噛み合わせ」を合わせ、リーズの「後方の数的優位を担保したマンツーマン」に近い守備を敷いてきました。リーズほど、「人」に対する基準度は高くなく、(つまりマンツーマンの度合いが低く)、選手の受け渡しやゾーン的な要素も多かったのだけど。話は少しそれますが、ウェストハムは対ユナイテッド戦はいつもこの戦い方(中盤の選手をマンツー気味にする)をしていて、モイーズの頭の中ではこれがユナイテッド対策として最善の手と考えられているのかもしれないです。そんな守備プランはプレッシングにおいては6',10',33'に成功、撤退守備においては19',40'にボール奪取に成功とある程度は機能していたかもしれないですが、ユナイテッドのビルドアップはその解答をしっかりと携えていました。

ユナイテッドのボール保持攻撃。ダブルボランチのタスク

 上述したハマーズの非保持時のゲームプランに対し、ユナイテッドはダブルボランチを横並びにするのではなく、縦関係にしたり、崩しのフェーズではマティッチをCBとSBの間におろしたりと、ダブルボランチのポジショニングを工夫することで対応できていたように思います。

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 まず、ユナイテッドは上の図のような配置、約束事によってビルドアップを試み、2',9',30',31'にビルドアップを成功させています。そして、ユナイテッドは崩しのフェーズにおいてもウェストハムのブロックを崩すシーンがありました。

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上の図のようなかたちで、特にマグワイアからの配給が多かったですが、11',18',19',20',35',と効果的な攻めが出来ていたと思います。

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中でも、この上の図で示した25'のシーンでは、「IH落ち」したマティッチにソウチェクが釣りだされたスペースをラッシュフォードが上手く使ってボールをもらい、直接的ではありませんが、この一連の崩しで得たコーナーキックからリンデレフの決定機が生まれるということもありました。

このように、最後の最後の人海戦術やマンパワーによってウェストハムが0点に抑えていましたが、ウェストハムの用意したボール非保持時のプランがお世辞にも機能しているとはいい難く、ユナイテッドはいつも通りの「噛み合わせを活かした」プレッシング(7',16',18',19',21',23'×2',27'に成功)も機能し、終始ユナイテッドペースの前半となりました。

ウェストハムの後半の修正、膠着した試合

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この試合では、ディオップ、マルシャルが頭部への衝撃を受け脳震盪の疑いがあるため、新ルールが適用され交代枠が2枚追加されました。ウェストハムはそのディオップ、ボーウェンに変え、フレデリクス、ベンジョンソンを投入。この交代よって、上の図のような5-4-1にフォーメーションを変更。このフォーメーションの変更でウェストハムはボール非保持時の修正を行いました。

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ハマーズは後半に上の図のようなかたちでのプレッシングを敢行。このかたちは、チェルシー×トッテナムのレビューでもチェルシーのプレッシングとして紹介した「数的同数プレッシング」というやつで、中央のパスコースをすべて封鎖しながら、ボールをサイドに誘導し、DFラインがスライドすることで後方に数的優位を確保した状態で強烈なプレッシングを可能とするものです。この修正によって、46',52',63',79',90+1',108',117'にハマーズはプレッシングでボールを奪っており、この修正が機能していたことがわかります。

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ウェストハムは撤退守備においても、DFラインを5枚に増やしたことによって、前半に使われていたSBとCBの間のスペースを両脇のCBで対策することに成功し、ユナイテッドはどうしてもボールが外→外の循環に終始してしまっていました(83',85'など)。

 この修正に対してユナイテッドはというと、ビルドアップの成功は53',55',93',102'とビルドアップできていましたが、なかなか前半のようにはいかず、上述したようにプレッシングにつかまるシーンもありました。それは崩しのフェーズも同様で、ユナイテッドは効果的なボール保持攻撃をできないまま終始したと思います。ただ、53'に後半最大のチャンスがラッシュフォードに訪れたわけですが、これはこの前にウェストハムのプレッシングをうまく交わせたことがつながったチャンスで、ユナイテッドがもっと効果的にビルドアップや崩すことが出来ればしっかりとチャンスが作れるということを物語っていました。

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このシーンでは一度ウェストハムのプレッシングに引っかかったボールを取り返してのビルドアップだったため、ソウチェクが前に出ていて、ウェストハムの中盤が2枚になっています。AWBの運ぶドリブルから、その2枚の中盤をAWB→フレッジ(1-2列目間)→ファンデベーク(2-3列目間)→マルシャル(2-3列目間)→フレッジ(1-2列目間)と小気味よくボールを回し、フレッジが長い「時間」を得て、逆サイドフリーのテレスにパスを出し、ビルドアップを成功させます。若干の偶発性はありましたが、それを見逃さずに成功させたビルドアップから、後半最大のチャンスは生まれたということです。

 ウェストハムも、ウェストハムで噛み合わせのズレによりユナイテッドのプレッシングがはまりづらくなり、ビルドアップはそれなりにできていました(67',80',105',110')が、定位置攻撃では大きなチャンスは作れず、恐らくサイドを突破して、クロスにソウチェクなどの中の選手が合わせるというシーンを多く作りたいのだろうけど、サイドで2対1をつくり、うまくクロスを上げられたとしても(50',58',61',62')、ユナイテッド側のクロスに対する対応も集中していて、チャンスにつながるシーンは少なかったです。

この試合のまとめ

 ユナイテッドはマクトミネイ、ブルーノ、ショーと主力に加え、AWBのターンオーバーだからなのかウィリアムズが久々の出場。ウェストハムもベンラーマや若手のオドゥベコ、そのオドゥベコに変えてランシーニを入れたりと、両チームともにメンバーを入れ替えますが、局面の大きな変化はありませんでした。その均衡が破れたのは98'のマクトミネイの一発。ライスのトラップミスを奪ったテレスからのカウンターにMFとFWの6枚全員が関わっての得点で、ユナイテッドのネガティブトランジションでの縦への意識の強さ、個々の技術の高さがこのチームのカウンターの強さにつながっていることがわかります。

 ウェストハムはこの試合だけを見た感想でいうと、スパーズと似ている側面がある気がしていて、ボール非保持時の型はしっかりしているのだけど、自分たちのボール保持のフェーズで何ができるのかということがこれからのプレミアでの順位も含め、結果に左右しそうな雰囲気。一方のユナイテッドは今回の試合のように非保持時のプランがしっかりしているチームに勝ち切ったということはトーナメントを戦う上で重要ですが、90分で得点を奪えなかったことを踏まえると、やはりビルドアップの再現性、再現性のあるボール保持攻撃がこれからも課題となるのではないかと思います。

 それにしてもツイートもしましたが、あの一件以来モイーズ=無能というようなレッテル張りがありますが、今日の試合でもわかるように、モイーズさんはボール非保持のプレーモデルづくり、ゲームプランの遂行に関しては長けている監督で、だからこそ、今シーズンのウェストハムの結果につながっているのかなと思います。今回はこの辺で。

 

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