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攻撃はオールドスタイルでも守備は"Up to date"なバンリーについて(PL32節MUNVS.BURより)
前回、1試合にフィーチャーしながら個人的見解を述べるということに挑戦してみてましたが、自分としては良い感触だったのでちょっと続けてみたいと思います(ただサボりたいからではありません)。
今回は前節ユナイテッドと対戦したバーンリーについて。タイトルにもあるように、バーンリーといえば4-4-2を基調とした「古き良きイングランドフットボール」というイメージがありますが、私の見解は少し違います。もちろん攻撃(ボール保持)の面ではウッドやバーンズへのロングボールを拾ってのシンプルかつ直線的なオールドスタイルなフットボールを特徴としていますが、守備面に関しては古き良き4-4-2がアップデートされ、洗練された戦術性を持つといえるのではないかと思います。まぁ言ってしまえばアンダードッグ式アトレティコですよね。以後、バーンリーの守備についてユナイテッド戦を材料に見ていきたいと思います。
この日は⑧ブラウンヒルをトップ下に据えた4-4-1-1のかたちで臨んだバーンリーですが、非保持時はそのまま列を上げたいつもの4-4-2で対応していきました。まずはそんなバーンリーのプレッシングの柔軟さについて見ていきたいと思います。
このブログでは結構書き連ねていますが、ユナイテッドは通常の4-2-3-1のかたちのビルドアップ(自陣深いエリア[ゾーン1])とダブルボランチの片方がCBとSBの間に落ちて3-1のかたちで行うビルドアップ(ピッチ中央付近のエリア[ゾーン2])の2つを使い分けます。バーンリーはその2つに対してしっかりと対応し、柔軟なプレッシングを見せます。
まずユナイテッドの4バックのビルドアップに対してはゾーンの要素を残しながらも、2トップ+4枚のMFで相手のビルドアップ隊を捕まえて、後方は状況に合わせてパスコースを抑える「同数プレッシング」気味に強烈なプレッシングを掛け、実際にボールを奪うなどユナイテッドのビルドアップに圧力を掛けることに成功していました。ブルーノに関しては嚙み合わせ的に「浮く」ポジションであり、そこに対しても全体をコンパクトに保つことで彼が使うスペースを最小限にとどめながら、状況に応じてダブルボランチのスライドやCBの迎撃守備によって対応しており、バーンリーの守備の練度の高さが垣間見えました。
ユナイテッドはゾーン2までボールを運ぶと、マクトミネイが右サイドに落ちて、フレッジがアンカー気味に振舞うダイヤ型の3-4-3のかたちをとるわけですが、このシフトに対してもバーンリーはまずボールの循環の起点となるアンカーを2トップで消しながら、ボールを片サイドに限定し、全体をスライドさせながらボールを持った両脇の「CB」(マクトミネイとマグワイア)に両SHの縦スライドを行うことで、ズレをなくしてプレッシングを掛けることに成功していました。言ってしまえば4-4-1-1に近い形で守り、SHの縦スライドを軸にボールに圧力を掛けていたということです。もちろんユナイテッドのこの3-1シフトはユナイテッドのプレーモデル的な部分であり、バーンリーは十分に研究しているのでしょうが、しっかりと2つのビルドアップに対して「ハマる」プレッシングのかたちを準備している監督とそれを試合の中でしっかりと遂行する選手のレベルの高さを感じます。
試合が進み、後半両者1点ずつを取り1-1のまま膠着した後半。バーンリは徐々にアンダードッグの意識から「引き分け=勝ち点1」の獲得を意識したボール非保持のかたちを見せます。60分過ぎからプレッシングを緩め、撤退守備をメインに行う形に移行したバーンリーはユナイテッドの3-4-3に対して、よりゴール前を固める別のかたちを見せます。
よく日本代表戦で格下の相手が見せてくるボールサイドのSHが相手のSBについていくかたちでDFラインに落ちる「5バック化」です。これにより、「人」を見ることで相手のズレを作る動きを防ぎながら、相手の横幅の利用の効果を薄め、中央のスペースを減らすことができます。もちろん単純な人海戦術としても効果を発揮します。ただ、これは逆にいえば、相手の後方の選手に「時間」を与えることにつながり、相手が逆に攻めやすくなる可能性も秘めています。しかしバーンリーは「撤退する」と決めたら、しっかりとラインを下げたり、前線の2人が懸命に走ったり、ときにはダブルボランチが縦スライドすることでボールホルダーに常に多少の圧力は掛けることに成功しており、ここにもバーンリーの守備の完成度の高さを見てとれました。
結局ユナイテッドの3得点で幕を閉じましたが、ユナイテッドの3得点は自陣からのトランジション攻撃が2つと、セットプレーからの流れが1つとなっており、このバーンリーの守備を完全に崩したとはいえないわけです。ただ逆にいえば、このような堅い守備を誇る相手に対してはトランジションが鍵を握るといえ、しっかりとその部分で勝ったことで試合に勝ち切ったユナイテッドは総合力が着実についてきているともとらえられますね。
以上のように相手のかたちや状況、時間帯に応じて4-4-2という1つのフォーメーションをマイナーチェンジさせることで対応することのできるバーンリー。失点は少ない方ではないですが、この"Up to date"な守備からのシンプルな攻撃が少ない戦力の中で残留を4シーズン連続で成功させる所以といえるかもしれません。(個人的には4-4-2というフォーメーションの万能さというところも痛感しました)
タイトル画像の引用元:Ronnie Macdonald"Sean Dyche 1"
なおこの画像はCC BY 2.0のもとに利用されています。