プレミアリーグ第14節 マンチェスター・ユナイテッドVS.アーセナル〜ユナイテッドが見せたラングニックの影〜

 いやー、とてもいい試合を朝から見させてもらったと感じた人も多いかと思います。ということで、ユナイテッドとアーセナルの雑感、そしてまとめという形で今回もゆるーく書きたいと思います。

ジャーマン・ユナイテッドの強烈なプレッシング

 この試合、終始ユナイテッドが見せていたのが、いわゆる「ヘビーメタル」。前線からの強烈なプレッシングでボールを奪い、縦に速い速攻でゴールを脅かすことを即座に狙い、ボールを失えば、カウンタープレスでの即時奪回を狙うサッカー、いわゆる「ストーミング」である。もちろん、その強烈さはまだまだ改善の余地がありそうだが、ロナウド、ラッシュフォードなどいつもなら切り替えの遅さや守備の粗さが目立つ選手の献身的なプレー、いつも変わらず走ってくれるサンチョとブルーノによって、そのサッカーが機能していた時間帯も長かったと思います。

 4-2-3-1で入ったユナイテッドでしたが、守備時は右SHのラッシュフォード、右SBのダロトが一列ずつ上がることで、3-4-1-2と同数に近い形でプレッシングを行っていました。2トップ+トップ下で中央のスペースを消しながら、相手のCB、ボランチを見て、SBへの横パスをプレッシングのスイッチとしてWBのダロトとサンチョが強烈な縦スライドでSBの自由を奪いながら、スライドしたDFはそれぞれのマーカーへ、ダブルボランチは中央へのパスコースを制限することで網にかけることを狙います。序盤こそ、アーセナルのビルドアップに空転させられるシーンも多かったですが、「守備慣れ」、後方の選手の奮闘もあり、徐々に相手のボールを回収することができていました。

 ただ、それよりもアーセナルを苦しめたのが、ボールを奪われたあとのユナイテッドのカウンタープレス(いわゆるゲーゲンプレス)です。ユナイテッドの1点目も2点目もロングパス→即時奪回→ショートカウンターによる得点ですし、10分頃のロナウドの左足のシュートを生んだシーンはそれが顕著に現れた場面だったと思います。

 上述したように、ユナイテッドは4局面の中で「ボール非保持」「ネガティブトランジション」、「ポジティブトランジション」の面で上手く振る舞ったことで、勝利することができたといえるでしょう。

食い下がったアーセナルの完成度の高さ

 ユナイテッドをベタ褒めしたとはいえ、結果はシーソーゲームの末の3-2。この試合ユナイテッドの真新しさが目立っただけでなく、アーセナルの着実な強さの証明にもなったと思います。

 ユナイテッドの強さが際立ったのが攻⇄守の切り替え、トランジションであったのに対し、この試合でアーセナルが際立ったのは比較的、試合の中でコントロールできるとされる「ボール保持」(特にビルドアップ)、「ボール非保持」(特にプレッシング)の振る舞いでした。

 アーセナルはプレッシングではユナイテッドの4-2-3-1に対して、4-4-2での「数的同数プレッシング」(相手のトップ下は近い方のCBが見る)を敢行し、ユナイテッドのビルドアップを機能不全にさせていました。このプレッシングは強度・練度ともに高いものでした。

 ビルドアップではGKラムズデイルをビルドアップの始点にすることで+1を作りながら、中央のアーセナルのCB、ダブルボランチ(4枚)VS.ユナイテッドの2トップ+トップ下(3枚)という局面の数的優位を利用することで、中央突破や中央を経由してのサイドからの前進をうまく行えていたと思います。つまり、(GKを入れて)5対3のボール回しに成功すればアーセナルの定位置攻撃のフェーズへ、失敗すればユナイテッドのショートカウンター発動という状況だったわけです。その確率が当初はアーセナルの方が高かったですが、ユナイテッドのSHを絞らせることによる中央限定、マクトミネイの縦スライドによる「同数プレッシング」などの工夫により、時間帯によってはユナイテッド優位になったといえます。

 良いスカッドを揃え、良い内容の試合を見せたユナイテッドに対し、スカッドに関しては劣るアーセナルがここまで奮闘できたのは、間違いなく有望な若手の成長と獲得、そしてアルテタ体制での着実な積み上げがあったからだと思います。今季はこのリーグをかき回す存在になりそうです。

まとめ:ロナウド×ラングニックの新たな可能性

 これまで、私は散々にしてロナウドの守備意識について指摘してきたわけですが、この試合の彼は明らかに違いました。プレッシングでは再三、スプリントを繰り返し、ボールが逆サイドに行けば中央に絞り、プレスバックも献身的に行っていました。もちろん、他の選手のそれに比べると物足りない部分も多かったかもしれませんが、ロナウドのプロ意識の高さを感じました。これには、スタメンを外されたことによるロナウド自身の意識の変化もあるかもしれませんが、間違いなくラングニック就任(彼が指示したかは不明)による影響もあると思います。

 今まで、ロナウドにはモウリーニョ、アンチェロッティ、ジダン、アッレグリなどの多くの指揮官があらゆるアプローチを「チーム」に施しました。しかし、ラングニックの会見でも明らかになったように、彼はコンパクトな守備を行うという「チーム」へのアプローチの他に、ロナウド自身に献身的なプレーを促すという新たなアプローチを行なっていくのかもしれません。ラングニック×ロナウド、そしてラングニック×ユナイテッドはプレミアリーグだけでなく、フットボールに新風を吹かせるかもしれません。では。

 



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