犠牲者急増 コロンビア抗議デモ深刻化
コロンビアではドゥケ政権が進めようとする税制改革に反対して、4月28日から全国ストが始まり、抗議デモおよび道路封鎖が7日連続で行われ、治安部隊との衝突で死者が増えている。政府の人権擁護機関は、3日までに全国で19人が亡くなったと発表した。その原因については、管轄する行政当局が調査すべきとしている。
特に西部の都市カリでは、略奪・放火が起き、食料や医薬品が不足するなど、事態が悪化の一途をたどっている。
連日、デモ参加者と治安部隊の激しい衝突が起きているカリでは、3日に市内で5人が死亡し、33人が怪我をしたと市の治安当局者が発表した。
主要紙の一つEl Espectadorは 4日付でカリ市内の治安当局の暴力を告発するSNSの動画を引用し、デモ隊に発砲する複数の動画のほか、バイクに乗った一団が、歩行者に対して発砲する様子を掲載した。
カリでは28日の時点から、デモ隊の一部が暴徒化し、ショッピングセンターや商店などの略奪が起きていた。治安当局はデモ隊に対して、徐々に催涙弾を使用。デモ隊が投石したり、タイヤを燃やすなどの行為に対して、
実弾を発砲して対抗している。
3日夜には、市の中心部にあるホテルが放火され、破壊されてしまった。4日朝のNTNの記者の報告では、カリ中心部で、路線バスの駅が破壊され、中心部の商店街は閉鎖されている。
ホルヘ・オスピナ市長は「街は攻撃されている」「無政府状態を望んでいる人たちがいる」と暴徒を非難する一方、市内には交通を封鎖するバリケードが17存在していて、食料や医療用物資を運ぶのに支障が出ているとしている。
またモラノ国防大臣がカリに国軍の兵士700人を投入すると発表し「犯罪組織と対峙する」と述べた。国軍の投入により、治安や人権状況が悪化するのではないかと懸念する見方もある。
一方、首都ボゴタでも抗議活動は続いている。日中のデモ行進は平穏に行われているが、夜になると市内の複数の箇所で、略奪が起きているため、治安部隊が発砲しているものとみられている。現地メディアはその現場近くから中継をしていて、機動隊の車両が数多く出動し、発砲音が聞こえる。
ボゴタ市民の足として親しまれている、BRT(専用レーンを走るバス)の駅はほとんどが破壊され利用できず、2時間かけて徒歩で通勤せざるを得ない人が続出している。
この1週間の間、ドゥケ政権は国民の強い反発を受け、審議中だった税制改革法案の撤回を表明した。
3日には法案の提出者であるカラスキージャ財務大臣が辞任すると発表した。しかし、
ドゥケ大統領は、新型コロナの感染拡大で政府支出が増大し、財政が悪化しているとして、
新たな税制改正案を策定するよう国会に求めている。
抗議デモを主催している労働組合のリーダーは翌5日もボゴタ中心部でデモを呼びかけている。
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