今年最初の中米移民キャラバン 強制送還

 1月15日、今年最初となる中米から米国を目指す移民のキャラバンが、ホンジュラス西部の都市、サン・ペドロ・スーラから出発した。スペインのEFE通信はおよそ800人がグアテマラ国境のコリントを目指して歩き始めたことを伝えている。

 参加した人の多くは、パスポートも証明書も持っていない。EFE通信はサンペドロスーラに程近いチョロマの街から参加した人々に取材し、仕事がない、貧しさから抜け出せないなどの経済的な理由を聞くとともに「ギャングに脅された」「父親が銃撃戦に巻き込まれた」など治安の悪化をあげている。

 しかし、キャラバンはその二日後に、グアテマラ国境で停められてしまう。国境の街コリントでは、グアテマラ警察が道を塞いでいた。数時間押し問答があったようで、グアテマラ当局が国に帰るように命じたのちに、トラックに乗せられて強制送還する様子がTelemundoにより伝えられている。

スペインのカトリック系ニュースサイトalfaro y omegaはこう伝えている。

 サン・ペドロ・スーラにいるスペイン人修道士のパトリシオ・ラロサは「学校はすでに2年間リモート授業をしている」が、多くの子どもはアクセスできない。2020年のハリケーン・エタとイオタの被災地はいまだに回復していない。「その結果、多くの村や集落から住民がいなくなった」

 ホンジュラスのカトリック系団体で中米移民の人道支援にあたるシスター、ナイゼル・ドンデは「理由はいつも同じで、治安の悪化、貧困、経済資源の枯渇、就労と教育の場がないこと」だと説明する。シスターは、ホンジュラスの新政権のシオマラ大統領に期待している。移民問題に対処する各種機関は、政権移行機関と会合を開いてきた。ホンジュラス人だけでなく外国人の移民を対象にした、短期的なものから長期的なものまで、百を超える政策提案を作成しているという。

ニカラグアの政情も影響

 キャラバンには、ホンジュラスの他に、33人のニカラグア人、さらにエルサルバドル、キューバ、ハイチ、ベネズエラ出身の人々もいたが、国外に追放された。

 alfaro y omegaはニカラグアの元国会議員Edipcia Dubonにインタビューし、キャラバンの背景を分析している。

 分岐点は2018年、ニカラグアの政治的危機だった。この年、オルテガ政権の政策に反対する大規模な抗議デモが起き、治安当局と反政府派の衝突が各地で発生した。これをきっかけに10万人以上のニカラグア人が保護を求めてコスタリカに出国した。さらに、大統領選を前にした2021年5月と6月に政治的な弾圧がピークに達すると、新たな移民の波が生まれたという。
 コスタリカ当局はニカラグア移民の亡命と労働許可の申請を受け付けていたが、市場は飽和状態だとのニュースが入り始めた。

 ニカラグアでは、去年、「サイバー犯罪特別法」なるものが制定された。表向きは、SNSのフェイク・ニュースやデマを取り締まる目的だが、現地では政権批判を抑え込むために恣意的に運用されるのではないかと恐れられている。先月、SNSで政権批判をした人物が、サイバー犯罪特別法に違反したとして、初めて告発された。

 ニカラグア人が国外に脱出する理由として、元議員は「弾圧が直接的な原因だったのか、あるいは被害を受けていないけれども、自分もいつ攻撃されてもおかしくないと思う恐怖感を感じているからなのか」いずれも可能性が高いという。

 もちろん経済的な理由もある。Dubon元議員が聞いた話では、マナグアから30キロのところにあるMatiareという村から、200世帯の家族全員が村を去ったという。コーヒー栽培が危機的状況に陥り、日雇いの仕事がなくなったことが理由だ。また、コロナ禍も相まって生活の状態は悪化。コメやフリホレスのような生活に欠かせない商品の価格は2倍に跳ね上がっている。



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