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WRC-Rリーグ ベスト16 観戦記【NAGA解析つき】
日本プロ麻雀連盟の新設タイトル戦、WRC-Rリーグベスト16 A卓・B卓の観戦記です。といっても全部で4半荘×2もあるので、印象に残っている局を5つピックアップする形となります。赤入りのタイトル戦ということと、先月のDPが手付かずで余っていたのでもったいないと思い、各局をNAGA解析にかけてみましたので結果も合わせてご覧ください。虎ならぬ、蛇の威を借りる狐作戦。試合そのものは見ていなくても読める内容になっています。
ベスト16 A卓
HIRO柴田vs木本大介vs香野蘭vs石井良樹
1回戦南1局 ~香野プロ、歓喜の4000オール~
東家 香野蘭 23800
南家 石井良樹 24800
西家 HIRO柴田 32600
北家 木本大介 38800
※30000点スタート
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好配牌を手にした木本プロ2巡目の選択。木本プロは三万切り。個人的には違和感のない打牌なのだが、解説はやや驚いていた様子だった。最近のトレンドは六筒切りだろうか。三万に二万か四万がくっつけば白のトイツ落としでタンピン狙い。リーチ宣言牌を六筒にしないことで、四七筒の出アガリ率が多少なりとも上がるかもしれない。
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3巡目、親の香野プロの手牌。三色と一通の選択。これは一通狙いが正解だろう。123の三色は四万を引くと崩れてしまうが、一通は確定形なので明らかに差がある。四筒を引けば今度はピンフ確定で234の三色があるので、一筒から切るのが丁寧。香野プロも一筒を選択した。
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一筒にチーが入り、二副露となったが上家から出た一万はスルー。直後に自力でテンパイが入ると香野プロはリーチをかける。この日の対局の全体を通して、香野プロはメンゼンでテンパイすると待ちが愚形でも積極的にリーチをかける選択が多かったように思う。
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NAGAに聞いてみると「ダマ寄りかな」とのこと。ただしこれはラス回避ルールでの選択なので、香野プロのようにリーチをかけて相手を押さえつけ、4000オールや6000オールを狙いに行くのも全然アリだろう。
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このリーチを受けて、「鬼ゼンツ」を必殺技とする超攻撃型の石井プロは一発目にはじっこの一索をブン!中筋の六筒の後は八筒をブン!
だいたい予想はついているのだが、NAGAに聞くと「元気良すぎない?」という反応が返ってきた。
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8巡目の木本プロの選択がなかなか難しい。一筒が3枚切れていて一四筒が弱く、逆に七筒は良さそうである。しかしトップ目なだけに、ラス目の親リーチにはかなり勝負したくない。現物の六筒を打ってとりあえずイーシャンテンにとり、テンパイしたら考えるというのが無難な着想か。
木本プロは小考の後--
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五筒を押していくー!八筒が通っていて三筒が3枚見え。確かに五筒はワンチャンスなのだが。・・・にしても攻めっ気が強い。NAGA先生も「真似できまへんわ~」と驚いていた。
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この解析結果で気になるのが、NAGAがわずかに正解の可能性があるとしているのがニ筒切りである点。一筒が3枚切れであるとはいえ、さすがに五筒切りの方が優れているように思える。二筒がシャンポンに当たることはないが、それを言うなら五筒だってカンチャンで当たらない牌である。謎。(③④⑥から➂を切ってリーチしていることになるからまずありえない)
南1局
— 日本プロ麻雀連盟 (@JPML0306) May 28, 2023
香野(親)がカン5待ちリーチ。
香野 4,000オール
リーチ ツモ 一通 ドラ pic.twitter.com/6mxFTPTWcG
この局の結果は香野プロが4000オールのツモあがり。五索をツモってきたときめちゃくちゃ嬉しそうな手つきだった。
3回戦南1局 ~木本プロ、気合の12000放銃~
東家 HIRO柴田 22800
南家 香野蘭 37400
西家 石井良樹 20900
北家 木本大介 38900
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石井プロの副露判断。元気よくポンを選択。チートイのリャンシャンテンなので鳴かないプロが多そうである。トイトイにするならマンズの並びシャンポンの部分が鳴きづらいようにも思える。NAGAの判定はギリスルー。
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赤五筒を引いた親の柴田プロ。一索を切るかと思ったらここは五筒を入れ替え。確かに四索引きでもテンパイするし、二索を引いたときノベタンリーチが打てるというメリットはある。かなり直線的な選択だ。
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NAGAは一索切りを強く推奨。ダイレクトの受け入れ枚数よりもピンズの伸びを重視している。おそらく柴田プロは石井プロの手をピンズのホンイツと想定しているだろう。ドラ色でかつ、仕掛けと色がかぶるピンズを伸ばしてもアガリにくくなるという判断だったのかもしれない。
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さてこの手牌であるが、三万、五索と引いて8巡目にテンパイが入る。特に悩むような場面ではないだろう。そう、八索を切ってリーチ…
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え・・・・そっち!? なんと鳳凰位は赤五万単騎でリーチ。何らかの考えがあってこの受けにしたんだろうけど、観戦者は知っている。五万はすでに空テンであること。そしてカン四万は山にまるまる4枚残ってることを。これは痛恨の選択になりそうだ。
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ところが。木本プロが「勝負だ鳳凰位!!」とばかりに五万を一発放銃。三万が2枚切れているだけに、三三四の形はないだろうという思考があったのかもしれない。しかし、これが大当たり。世の中気合だけではどうにもならないことがあるのだ。
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ベスト16 B卓
魚谷侑未vs小林正和vs早川健太vs黒田良
2回戦東3局 ~魚谷プロ、悔しい12000放銃~
東家 小林正和 32400
南家 魚谷侑未 20100
西家 早川健太 31500
北家 黒田良 36000
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この局は小林プロの選択が秀逸であった。一見、両面変化で問題ないように見えるが小林プロは二筒切りを選択。試合後のインタビューでは「魚谷さんの二筒切りで一筒がトイツ以上で持たれていると思い、それなら一筒はあっても残り1枚で、リャンカンの方が若干いいのではないかと考えた」とのこと。
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実際に読み通り一筒は山に1枚しかなく、次巡六筒を引いて見事なテンパイを入れる。
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直後、役役トイトイの満貫をテンパイしていた魚谷さんが八万をつかむ。かなり考えたが、結局勝負となり12000放銃。試合後のコメントでは「絶好に見える一四筒の両面ターツを外してのリーチだったので、ドラや赤をまたいだ両面待ちではないかと考えて勝負してしまった」とのこと。
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NAGAの解析結果を見ると打牌選択のバーは八万で上に振り切れている。ラス目で満貫テンパイかつ七枚が3枚見えてワンチャンス。完全に仕方ない放銃に見えるが、気になるのはNAGAは一筒を危険(青いバーが下に伸びている)と判断していることである。一筒は単騎にしか当たらない牌なので、この解析結果は極めて怪しい。NAGAの危険牌予測はこういうバグがちょいちょいあるので過信しない方が良いだろう。
2回戦南1局1本場 ~小林プロ、衝撃の12000放銃~
東家 早川健太 39300
南家 黒田良 27800
西家 小林正和 52000
北家 魚谷侑未 9000
苦しい状況の魚谷さんにドラ3のチャンス手が入る。
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NAGAは七万からガツガツ仕掛けていくらしい。しかし魚谷さんはこういう状況では鳴かないことが多い。というのは、ラス目で序盤からタンヤオで仕掛けるとドラ・赤が固まっていることが読まれてしまい、三者からマークをされて鳴いてもアガりが厳しくなってしまうからだ。であれば、メンゼンでのハネ満・倍満をギリギリまで狙う方が良いという考えだろう。
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10巡目でドラが打たれ、ここでポンしてイーシャンテン。五索を引いて四七万待ちのテンパイが入る。
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その後、赤五索を引いてタンヤオドラ5のハネ満テンパイになった。四七万は山に残り2枚。
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残り2巡というところで、形式テンパイを入れている小林プロのところに四万がやってきた。普段は魚谷さんの当たり牌を他家がつかんだ時は「出せ!出せ!出してくれ!!」と邪念を送っているのだが、この時はトップ目がテンパイ料でドラポンのド危険牌なんて打つわけがないと思っているので「打つわけないよ、こんなの」と完全に諦めていた。しかし、様子がおかしい。小林プロは四万を斜めに持ち上げ、すごく切りたそうにしている。いやいやまさかそんなことがあるわけ
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そんなことがあった。
小林プロの対局後の話では「六索が4枚見えていて、魚谷さんの五索は空切りか二索とのスライド。ソーズの面子が345の形であったことは確定。待ちは三六索か二五万か四七万か、レアケースでシャンポンか。当たる確率2割程度なら、満貫を打ち込んでもまだトップだしテンパイ料で2着との差を広げる方がトップ率は上がると考えた」とのこと。
しかし、三六索だとしたらは残り1枚の五索を持っていてる23445なのだが、この形なら河に五索五索と並ばずどちらかは二索になっていそうである。(たとえば23445から赤五索を引いたら二索を切るはずで、元々の形が34455とあるところに赤五索→二索と引いてこなければ五索五索と並ぶことがない)
二五万に関してはもともとカン五万でテンパイしていたところに三万を引いて、出アガリは期待できない状況なのでフリテンの二五万に変えたパターン。どちらも条件つきなので、特に制約のない、唯一の両面待ち四七万の濃度は相当高くないだろうか。
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テンパイ料の価値を高く評価するNAGAもさすがにトップ目だからか、四万は切らないらしい。ただ緑の円グラフを見ると、NAGAはこの状況でも魚谷さんのテンパイ確率を7割程度と見積もっているようだ。天鳳特上卓、ストリート育ちのNAGAさん、さすがに舐めすぎなのでは・・・?
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さて、早川プロに関してはドラポンに対して受けていたので特に何もないかと思いきや、NAGAから終盤で指摘が入る。六万を鳴いて形式テンパイ料を取りに行こうぜとのこと。なるほど、安全牌は足りているのでダメもとでもやるだけやってみる価値はあるだろう。こういった見落としがちな判断を拾ってくれるのはNAGAの良いところである。
2回戦南2局1本場 ~早川プロ、悪夢の12000放銃~
東家 黒田良 39800
南家 小林正和 35700
西家 魚谷侑未 9200
東家 早川健太 35300
黒田プロの5巡目の手牌から見ていこう。
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麻雀界には2つの流派がある。5ブロック派と6ブロック派だ。この手牌、5ブロックの流儀なら三索一索切りだし、6ブロックの流儀ならカン二索を残して八索切りだろう。黒田プロはどっちを選ぶのかと思ったら、九索を切っていた。それだけはないような気がする・・・一筒が良さそうという情報もあるのだから。
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NAGAに聞いてみたが、やはり九索には1ミリも反応がなかった。うーむ。
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この局、最初にテンパイを入れたのは早川プロだった。ここはヤミテンの選択。3人が3万点台で、抜け出すアガリが欲しいところ。この巡目でこの手材料なら高打点の手替わりを待つのは良い判断に思える。
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NAGAは即リーチを推奨。待ち取りは目に見えている枚数で四七万を選択している。実際は四七万だと2枚で四七筒だと4枚なのだが。
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この局は魚谷さんにも勝負手が入っていた。赤五索を引いてテンパイ。二五筒はフリテン、三四索待ちは三索が切られたばかりで目に見えて薄い。かなり悩んだが、良い手替わりの枚数もあまりないということでリーチを決断。
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NAGA解析を見ると、立直の判定がちょうど真ん中になっている。僕の感覚だとさっきの早川プロの手牌の方がリーチしたくない寄りなので、この結果はちょっと意外だった。
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ところが、この薄い三索を早川プロがすぐに引いてくる。絶好の三面待ち変化なのだが、この三索はとても通りそうな牌でもある。自分で二索を3枚使っているのでカン三索はワンチャンス。しかもラス目がドラが五索なのに六索を切ってカン三索に固定していることなんてあるだろうか?また早川プロは「リーチする前に考えていたのでピンズが危ないと思ってしまった」と語っている。待ち選択で迷ったと考えると四七筒は危なく見えてくる。しかし結果は最悪で、跳満の放銃になってしまった。
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NAGA「若獅子、そんな弱気じゃダメだよ」
若獅子「君はリーチ棒つきで放銃してるじゃん!」
NAGA「確かに!」
対局の最終結果については日本プロ麻雀連盟のTwitterやHPをご覧ください。