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骸muqro屍cavane

遥か世界の果てから続く遠い砂漠を超えて現れたのは見窄らしい老人だった。
それでも眼光だけは力がありなにより強い言葉で話しかけてくるのだ。
彼は遠い世界から弱く庇護のない人々を救う事が目的であると言い触るだけで病を治し水をワインに変える事が出来た。
やがて多くの虐げられ搾取され続けていた人々が彼の周りに集まるようになっていた。

彼は言う
この世界は何処をどう煮詰めても必ず不幸な人達を生み出すだろう。
教育も医療も福祉も全てを救済する事は出来ない。
それでも世界のほんの一握りの人間だけが富を簒奪しているのが現実世界であり彼等の極端で不必要な贅沢の為に残りの圧倒的多数の人達が飢えなければならないというのはあまりにも理不尽な事なのだ。

この世界の有り様を根底から見直し徹底的に破壊しより多くの人達ができる限り公平に幸福に暮らせる世界を作ることは未来に向けての我々の責務なのだ。

金など所詮よく出来た印刷物に過ぎないものだし土地など本来誰のものでもない。

金持ちの持っている財産の全て彼等の立場を利用して弱者から簒奪したものに過ぎないのだ。

彼等はその大半を巧緻と暴力により支配しその配下となる事で利益を得ようとする自尊心のない愚かしく卑劣な人間達を従えそれを成し遂げてきたのだ。
そして差別と分断をすすめ恫喝と暴力と策術を駆使して自らの立場を強化し続けてきたのだ。

もう良いだろう。

我々は立ち上がり未来の為に闘わなければならないのだ。

聖者の闘いは苛烈を極め多くの命が消え去った。

それでも闘いはいつ終わるのかわからない果てしないものになっていった。

それは聖者と一緒に闘う事が自らの存在に一切の甘えを許さないものでありそれに耐える事が出来ず結局仲間を裏切り権力の側へと走り去る者が少なからずいたからでもある。

だがそれでもおそらくただ1人となっても聖者は闘い続けただろう。

でも闘いは拍子抜けするように突然終局を迎えた。

聖者の最側近である男がそれまでずっと隠し通され守り続けられていた聖者の居所とその弱点を権力に売ってしまったからだ。

それで得た富などたかがしれていたがもういつまで経っても明日の見えない闘いに疲れ果ててしまっていたのだ。

聖者は捕まり多くの人々の前で火炙りにされる事になった。

その日はまだ朝だというのに空は暗く低かった。

火をつけるのは彼を売り渡した何人かの男のうちの1人だ。

聖者は命乞いしたがそれでも闘いをやめることはないと断言した。

積み上げられた薪と藁に火がつけられ燃え盛る炎が聖者の体を焦がした。

すると聖者の体は風船のように膨れあがりやがて皮膚のあちこちが裂けると鳥の羽のようなものが火に煽られて暗く低い空に舞い始めた。

人々の目がその燃えながら空をまう羽に吸い寄せられていると突然なにかが弾けるような音がして見れば聖者の体が弾けて中から大きな何かが飛び出そうとしていた。

それは羽だらけのとても醜い大きな鳥だった。

なんの感情も感じられない真丸のガラスのような目が人々を見据えると沢山のバラバラに並んだ羽を不器用に震わせて鳥は抜け殻となった体から飛び出しやがて低く暗い空に消えて行った。

人々は慌てて火を消し止め燃え残った聖者の皮を濡れた地面にねかせた。

それにはまだ沢山の羽が残っていてそれでやっと自分たちが奇跡と共にあった事を自覚したのだ。

我々は神と居たのだ。

そして奇跡は終焉を迎え

神はもう空へと還ってしまったのだと。

人々は残された皮を聖堂へ飾り神に祈りを捧げたがそれからそう長い時間を待つ事もなく人類は自らが生み出し支えた選民意識とそれによる差別で滅びそこからようやく新しい世界が始まったのだ。


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