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2度目の緊急事態宣言が実効を上げるには厳しい対策とその実行が不可欠!

本日1月13日、緊急事態宣言の対象が11都府県に拡張された。私クレアは感染症数理学の専門家でも何でもない、単なる「ど素人」に過ぎないが、一応理工系の端くれということもあり、当該分野の基礎となるSIRモデルと実効再生産数には強い関心がある。そこで、ごく最近公表された西浦試算を参考に、簡単なエクセル上での計算の範囲で今後の感染予測に関するケース・スタディを試みた。

1.西浦試算の概要

先週、東京を含む首都圏1都3県に緊急事態宣言が発出されたが、その直前に、京都大学教授西浦博氏の私的見解がメディアで公表れさた。氏によれば、現状では、東京の実効再生産数Reは平均1.1で推移していて、それ以下に下げ切れないでいる。西浦氏は非常事態宣言の下での対策の強弱について以下の3つのシナリオを検討している。

1)弱い対策:飲食店の営業時間短縮を中心とした限定的対策。この場合、現状の90~95%で、人との接触率5~10%削減に相当し、実効再生産数Re = 0.99~1.05までしか低下しない。

2)中程度の対策:現状の80%程度で、接触削減率で言えば20%程度である。実効再生産数では、Re = 1.1 → 0.88への減少に相当する。

3)強い対策:飲食店以外の発声が起こる屋内の場で家族以外の人達と一定時間過ごす機会を積極的に削減し、現状の65%まで下げる。この場合、接触削減率は35%で、実効再生産数Re = 0.72を目標とすることに相当する。

昨年4月の第1波の折は、無防備な状態から20%まで一気に削減する、接触削減率8割、再生産数にして、2.5 → 0.5を目標とした。しかし西浦氏によれば、「今回の第3波では何らかのインセンティブがない限りこれは達成できない。ただこれまでの経験から、感染の確率が高い場面と低い場面を想定できるから、メリハリのついた対応はできるはずだ。」という。

西浦氏の試算結果は以下(図1)の通りである。

画像2図1.西浦氏の東京都に関する感染予測

1)の弱い対策では、2月末日でも1300人以上の新規感染者が出る。2)の中程度の対策では455人、3)の強い対策では80人と見積もられる。100人を下回る日付は、中程度の対策で3月末に228人、強い対策で2月25日となる。新規感染者数の目標値が100人以下とすれば、強い対策が不可欠となる。なお西浦氏は、2月1日にそれまでの弱いもしくは中程度の対策から厳しい対策に切り替える場合のシミュレーションも行っている。

西浦試算の結論は以下の通りである。1)飲食店の時短程度の弱い対応では、新規感染者数は減少しない。厳しい対応では2月末日には100人を下回る。2)軽度もしくは中度の対応からスタートしても、2月1日に厳しい強度な対応に変えれば、3月中旬以降〜3月末の本年度中には新規感染者数を2桁まで減少させることができる。

2.クレアの試算

さて、私クレアも、SIRモデル及びそれを拡張した以下のSIRDモデルを設定し、

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エクセル上の簡単な計算で本年度末までの感染状況を検討してみた。対象は日本全体とし、現状の実効再生産数Re = 1.1、人との接触機会を10% (Re = 0.99)、20% (Re = 0.88)、35% (Re = 0.72)削減した場合の新規感染者数、重症者数、及び死者数の向こう3ヶ月予測を計算した。1月9日までの感染状況は厚労省のオープンデータから得た。

下図(図2)は、現状どおり(Re = 1.1)、軽い対策 (Re = 0.99)、中程度の対策 (Re = 0.88)、強い対策 (Re = 0.72) をとった場合の新規感染者数の推移を示す。年度内にある程度の結果を出そうとすれば、中程度以上、好ましくは強い対策とその実行が必須である。

画像3図2.クレアによる日本全体の新規感染者数推移の計算

(注意)西浦試算の対象となった東京都についても同様な計算を行なった。結果を以下(図3)に示す。西浦氏の計算結果と定性的には一致している。ただ、西浦氏の計算では、感染→発症→診断→確定・報告の一連のプロセスに伴う時間遅れの分布が考慮されているようである。したがって、西浦試算の新規感染者数の推移は本計算結果より、10日ないしは2週間遅れて現れている。

画像6図3.クレアによる東京都における新規感染者数の推移の計算 (cf. 西浦試算の図1と比較)


下図(図4及び5)は、SIRDモデルのパラメータ値を、κ = 0.02、ε = 0.012、δ = 0.075としたときの、それぞれ日本全体の重症者数及び新規死者数の推移に関する計算結果を示す。

画像4図4.クレアによる日本全体における重症者数の推移の計算

画像5図5.クレアによる日本全体における新規死者数の推移の計算

以上の2枚のグラフからわかるように、何も手を打たなければ(Re = 1.10)、2月末の重症者数は2,300名、新規死者数は170名に至る。軽い対策(Re = 0.99) で 950名、70名、中程度の対応 (Re = 0.88) で 400名、 30名、強い対応 (Re = 0.72)で140名、10名と順次減少する。医療崩壊を防ぎ、死者をこれ以上のペースで出さないためにも、中程度以上の対策・自粛は絶対的に必要である。(注)日付については、これから10日〜2週間遅れる可能性がある。)

もしも最悪、これらの目標が達成されそうにない場合は、2月の初旬に改めて強い対策が要請されるものと考えられる。

以上の結論として、今回の非常事態宣言を実効あるものにするためには、政府及び地方自治体は人との接触機会の削減についてできる限り厳しい対策を要請し、我々国民は少なくとも今回だけは最大限の協力をすべきである。

陽はまた昇る!

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起きてほしくないことほどよく起こる/事態は着実に悪化する/遅かれ早かれ、最悪の状況が必ず起こる/危機に臨むと、人は最悪の選択をする/良くなる前になお悪くなる/事態はプレッシャーをかけると悪化する/役人は誰よりも長く待つことができる問題は当初に考えるよりずっと深刻であるーーー以上、「マーフィーの法則」より。

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