見惚れ

今日、席替えをした。僕は窓際の一番後ろで喜んだけど、仲のいい友だちとは席が離れてしまった。心の中では「勉強に集中できるからいいか」と自分に言い聞かした。

開いてる窓から入る風で前の方でなびく髪に気付いた。前の席はクラスいつもおとなしめなミスギさん。僕は女の子の髪をじっくり見るのは初めてだ。

ミスギさんの髪は長髪でストレートの黒髪そして、キューティクルがあってすごく綺麗だ。この日を境に僕は毎日ミスギさんの髪に見惚れ続けた。

しかも、毎日見ていると自分の好みも分かってくる。                    三つ編み△                 ポニーテール○               ストレート◎

僕の2ヶ月間半の調査でミスギさんの髪型は主にこの3つで回っている事がわかった。だが、やはりストレートの日が1番髪の見応えがある。

体育や移動教室であの髪を見れなくなる時が嫌で嫌で仕方ないとすら思えた。         そして、あまりにも僕がミスギさんを見ているからかミスギさんが僕の視線を感じて照れながら振り返って話しかけてきたり手紙を渡して来る事があった。

いや、違うんだミスギさん。僕はあなたと仲良くなりたい訳じゃないんだ。あなたの綺麗な髪を見ていたいんだ。               そのストンと真っ直ぐ伸びる黒髪、そよ風でなびく細い髪、揺れるとまるでブランコで遊んでいるみたいになる髪、ダイヤモンドぐらいの輝きをしている髪、わたあめ級にふわふわとしている髪。そんな髪を見ていたのに...

それなのに...それなのに今日の席替えでミスギさんと離れ離れになってしまった。

廊下側の前から2番目。今、僕の目の前にあるのは野球部副キャプテンで先週、甲子園出場決めたシゲタの丸坊主だけしか見えない。

これはさすがに見惚れないよなぁ...

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あおきしのぶ
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