18.いわき・九十九の塔(2)制作風景
九十九の塔制作現場と参加者の言葉
アトリエKayaにて
粘土を用意して 床をふき、花を飾り、待つ
九十九の塔を作るという
きれいな薄墨の絵を持ってやってきた 協力者の手がけた土の塔を
仕上げとして、へらで 人の持つ意を削り、落とし 自然へ戻す
塔は窓の外の山を借景として、立ち光り輝く 龍は登る 天空へ 陶芸家・真木孝成
仏塔の歴史は釈尊の遺骨を崇高する有徳の王族によって建立されたことに起因する。紀元前四世紀ごろに仏塔が八人の王族によって建立されて以来、仏塔の思想はスリランカに渡り、ミャンマー、タイ、ラオス、チベット、中国、朝鮮半島を経て日本へと伝承され、建立された仏塔の数は無量数です。仏教国タイにあっては国中いたるところに仏塔がそびえ立っています。スリランカでも仏塔は日常生活のなかに確固として生きています。朝、学校に行く道筋に立つ仏塔に手を合わす子どもたちの姿は美しいばかりです。私たちの国では、観光旅行で古都・京都や奈良にでも行かない限り仏塔の意識は脳裏に浮かんでさえ来ません。それほどに日本人は心意識を欠落させて生きているのです。大人も子どもも…。蔡さんの仕事は衰退していく心意識を常に喚起させる東洋の光明のようです。 真言宗仏等庵々主 疋田千秀 仏歴二千五百四十五年
蔡國強は
自分の芸術への人との関係を大切にする
人がかかわることによって
彼が表現したい形が姿を現す 志賀忠重
九十九の塔を作るにあたり不安な気持ちで真木さんのアトリエに足を運ぶ。
すると「楽しんでやってください」と蔡さんが声をかけてくれた。
その一言で小さいころ、冷たい粘土で遊んだ感触を思い出した。
気持ちは小学校5年生か6年生の気分だった。
恥ずかしながら創作というよりは作ったというのが本音。
それでもとても楽しい時間を過ごさせてもらった。はまぐり屋店主・斉藤忠嗣
プロジェクトを作るとき、私は何か修行をしているような状態にいます。出家して解脱したときのような心境で物質の極限から離れ、一つひとつのプロジェクトのために思潮をうねらせます。
そして私に授けられるのは激動ととてつもない感動です。蔡國強
大きなプロジェクトで得た力を小さい作品に表現することだってあるのです。実際の制作条件がどうであれ、私はできるだけ力を尽くして作品との間に本質的な関係を発生させていきたいのです。蔡國強