25.A Gift From IWAKI いわきからの贈り物(2)
■「いわきの船」がポスターになった
2010. 06.03
昨日の朝、仕事前に行われるいわきチーム恒例の体操に照れながら一人参加していた館長が、今朝もまたやって来る。“今日は体操をやらないのか”という身振りをする。みんなが輪になって体操を始めようとすると、美術館の女性スタッフがやって来た。館長が「一緒にやろう」と彼女にも参加を促す。フランス人にとって仕事前の体操は習慣にないのかもしれない。初日の体操はいわきチームと館長だけだったのが、2日目の今日は、フランス人作業チーム4人と館長と美術館の女性スタッフも参加することとなった。体操に参加する人が増えるといわきチームのノリも良くなってくる。朝の体操は体をほぐすと同時に心もほぐしてくれるようだ。
10時の休憩の後、タバコを吸う為に外へ出ていた記録係の菅野さんが携帯の写真を私にみせながら興奮して「凄いですよ!いわきの船が壁一面に張られています」と言う。見ると蔡さんの個展の案内が美術館の壁面全部にポスターになって張られている。菅野さんがビデオ撮影係の名和君と一緒に外に出た際、壁の上から下へポスターがさげ下ろされるところへ遭遇したそうだ。その瞬間のビデオ撮影が間に合わなかった名和君は、屋上にいるスタッフに「もう一度やってくれ」と伝わるはずもない日本語で声をかけたと興奮して話してくれる。聞いただけでワクワクしてすぐに見に行きたくなった。
巨大ポスターの前で精一杯ジャーンプ
朝会った蔡さんが「館長が他の作品の選択は蔡さんに任せますが、いわきの船はぜひ今回の展示にいれてほしい」と要望された、と言っていたのを思い出した。館長のいわきの船の作品に対する思い入れや壁面いっぱいの船のポスター、そして2011年1月9日までの半年以上の長い会期。そういった事実が私たちいわきチームの組立て作業に対するテンションをどんどん高めるのを感じた。
蔡さんが現場にやって来て、会場でながすために名和君が編集したこれまでのDVD(20分)をチェックしてくれる。私も興味があり、参加する。蔡さんは、この会場に来た人達の気持ちにどう反映するかが大事なのだと説明している。
いわきの船はワシントン、カナダのシャウニーガン、ニューヨーク、スペインのビルバオ、台湾と巡って来た。映像を見た人が自然にその訪問した国を感じられるようにしてほしいとの要望がでる。また、廃船組み立ての作業工程も訪問した国々で同じような感じでの映像ではつまらないので、展示された会場が狭いか広いか、高いか低いか、展示された作品の違いなども解るようにしてほしいとの話。そして蔡さんといわきチームの関係、来館した人達との関係なども入れてほしい、と盛りだくさんの要望をよどみなく話してくれる。
蔡さんのビデオ撮影を長く担当してくれている名和君は、後で感激したことを私に伝えてくれた。「今回初めていろいろなポイントを直接蔡さんから言ってもらえてうれしい。また、蔡さんから上手くなりましたねと言われて感激しました」・・・とも。蔡さんの仕事に携われることによって、いわきチーム全員、自分の仕事へのやる気も上がるようだ。
夜はホテルで藤田君の作った絶品のカレーを食べて、全員大満足する。前日買った卓上用カートリッジガスコンロでカレーを作り、3合と8合用の2つの炊飯器で炊いたご飯を腹一杯食べる。食べているうちに20代の頃、親友だった藤田君の作った野菜炒めの入った味噌ラーメンの美味さに感激したことを思い出す。日常から離れ、いつもの場所から離れることで、自分の気持ちまでリフレッシュされることを感じる。
いわきチーム全員、今回もニースでの船の組立てに呼んでくれた蔡さんと、ニースの美術館へ感謝の気持ちでいっぱいだった。
名和君の制作したDVDをチェックする
一足先に帰国する名和君へわざわざ蔡さんが挨拶に・・・