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明け方一度だけ鳴り響いた雷鳴
一度きりで後がなかった季節外れの雷
朝起きたら冷たい雨
寒い一日だった
今日はまんぷくの
お客様から聞いた話
そのお客様は
代々小さな社を守る神官の一族に生まれたそうだ
そこのお家では
季節外れの雷は『神様のお清め』と言って
とてもありがたいものだと教えられたらしい
特に前触れもなく不意に鳴り響く雷鳴は
地上の穢れを忌む
神様の鉄槌なのだそうだ
一度だけの雷鳴は気が付かない事が多く
聞こえた者は神様に選ばれた者なので
地上の穢れを祓う使者として
甘酒などが振舞われた
お客様はそんな事を話して
甘酒の代わりにと
飴をひとつ手のひらにのせてくれた
大きな黒糖飴
今は亡き父の大好きだった飴だ
とてもうれしい
久しぶりに口にした黒糖飴は
私の中の穢れを払ってしまうほどに
懐かしく甘かった
店主は幸せ者だ