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雨の匂いがする街で

雨の匂いがする

海が近いせいか気圧が低くなると
街中に潮の匂いが満ちる
たぶん明日は雨
まんぷく店主は雨の日の読書が好きだ

古書店は暇だ
はっきり言って繁盛はしていない
でも理想はある
しかしながら
この理想を追えば繁盛とは対局になる

急に降り出した雨に
駆け込む深い軒先のような存在の本屋

時代はモバイル書籍へ流れている
当然だと思う
それでも、まんぷく店主は紙が好きだ
古い図書館にありがちだった
カビくさいような匂い
新品の本の切れるようなインクの匂い
本ごとに違う手触り
ページを捲る音
電子書籍では拾いきれない
行間から見える情景
読書は五感と想像力を駆使してこそ楽しい
雑誌も辞書も新聞も紙でしか伝わらない
熱や風があると思う
この先の未来で、限りある資源の枯渇を憂えば
新刊にそれを望むのは
もう贅沢なのかもしれない
でも古書なら資源の有効利用という事で
許されるだろう

疲れた時しんどい時立ち寄って
寄り道出来る場所

お酒を飲まなくても
ケーキを食べなくても
猫と戯れなくても
本好きは本に触ると癒されると
まんぷくは知っている

紙の本ででしか得られない
生きている息吹を感じてほしい
そんな場所になりたい

今夜も雨の匂いのするこの街で
ひっそりドアを開けています

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