四則演算で分析してみた その7 ニーズ分析~日経ビジネスの記事はほんまでっか「電動車椅子編②」~
前回に続き、日経ビジネス電子版の「免許返納ラッシュにあえぐ車販売店 電動車椅子に熱視線」(2022年10月14日号 ※1)の記事について分析してみようと思う。
前回は市場の魅力度を分析してみたが、今回は電動車椅子の需要があるかどうかについて見てみたい。
需要の有無を調べてみた方がよいと感じたのは、電動車椅子によって不便な生活が便利になるのか疑問があったからだ。
記事によると、電気車椅子の時速は1~6km、スーパーマーケットまでの距離は3kmとのこと。最速の時速6kmで走行したとしても、電動車椅子を使ってスーパーマーケットを往復すると、片道30分、往復1時間もかかってしまう。こんなに時間がかかる生活が不自由のない生活と言えるのだろうか?
また、首都圏とくに東京都内のスーパーマーケットは店内が非常に狭い。電動車椅子でストレスなく移動できる広さではないのではないか?
その他にも、買い物の途中で電動車椅子の電池が切れてしまうのではないか?雨の日の買い物はどうするのか?荷物はどの程度積めるのか?など様々な疑問が浮かんでくる。
そこで電動車椅子の需要の分析に活用できるデータがないか調べてみたところ、株式会社ウェブクルーが「運転免許証の返納に関する調査」を実施していた。(※2)
注目すべきアンケート結果は、
Q. 運転免許証を返納後、生活に支障はありますか?
という問いに対し、
多少の支障はあるものの困っていない:56.7%
支障はなく快適だ:15.0%
不便だと感じる:28.3%
という結果になっていたことだ。
不便だと感じるのは全体の28.3%にすぎず、約7割の免許返納者は生活に支障を感じていないようだ。
前回の記事では、免許返納者数全体を市場を計算する際の根拠としていたが、不便だと感じる人達がターゲットであるとすると、市場は更に小さくなる。大雑把に不安を感じる人が30%として計算すると、
単価20万円の場合の市場規模
986億9220万円 × 30% = 296億766万円
単価40万円の場合の市場規模
1973億8440万円 × 30% = 592億1532万円
となる。
自動車販売代理店にとっては、余りにも小さい市場規模ではなかろうか。
データから需要がどの程度あるのかを見極めた上で、その需要の市場規模はどの程度であるのかを計算し、その市場が自社にとって魅力的な規模であるかどうかをしっかり分析する必要があるのではないか。
世の中ではデータサイエンティストがどうのこうのと言われているが、四則演算だけでもこのような分析が可能である。高度な能力が不要だとは言わないが、分析の基本中の基本となる足算、引算、割算、掛算を使いこなせる能力を身につけることも重要だと筆者は考える。
以上
※1 記事のURLは次のとおり。免許返納ラッシュにあえぐ車販売店 電動車椅子に熱視線:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)
※2 需要の根拠データのURLは次のとおり。【「運転免許証の返納に関する調査」をウェブクルーが実施(前編)】返納のきっかけは「運転への不安」が最多、高齢者の交通事故に関する報道から危機感を抱く人も|株式会社ウェブクルーのプレスリリース (prtimes.jp)