マンガとプロダクトプレイスメント第4章
第4章 フィージビリティスタディ:プロダクトプレイスメントとWEB広告の比較
では、マンガにおけるプロダクトプレイスメントの実現可能性を検証するために、どのようなリサーチをすべきであろうか?
マンガにプロダクトプレイスメントを活用した場合のステークホルダーは誰かを考えてみる。大雑把に言えば次の3者になろう。
①読者
②漫画家(出版社)
③広告主
この中でまず重視すべきは誰か?当然のことながら
①読者である。
読者は、マンガというコンテンツを楽しむためにマンガを読むのであって、広告を見るためにマンガを読むのではない。マンガにプロダクトプレイスメントを用いることで、マンガを楽しむという本来の目的が害されれば、その広告だけでなく、そのマンガ自体に対する評価も低くなるだろう。
筆者の目的は、漫画家の新たな収益源を見出すことであるが、プロダクトプレイスメントによってマンガそのものの価値が下がるのであれば、漫画家の収益が逆に下がる結果になりかねず、それは本末転倒である。
したがって、プロダクトプレイスメントを用いることで読者がどのように感じるかは、マンガにおけるプロダクトプレイスメントの実現可能性を論ずる上で極めて重要である。
というわけで、マンガにおけるプロダクトプレイスメントの読者に対する効用についてリサーチしていくこととする。
では、第一のリサーチに移ろう。
第2章でも述べたが、マンガは電子が主流になりつつあり、その中でも一際存在感を増しているのがマンガアプリである。
そのマンガアプリにおける重要なマネタイズ手法として広告費モデルがあり、ポップアップ広告やバナー広告などのWEB広告が用いられている。
筆者は、マンガアプリユーザーであるが、予てからこのWEB広告を疎ましく思っていた。
マンガの前後に見たくもない広告が差し込まれると興が削がれるし、動画広告なんてものが流れた日にはマンガアプリをそっと閉じる。
個人的な感想は置いとくとしても、WEB広告を快く思っていない人が多いということは少し調べればデータとしてすぐに出てくる(例のごとくググってみてね)。
では、WEB広告とプロダクトプレイスメントを比較したとき、どちらがより読者の心象が良いのか?読書体験を邪魔しないのはどちらか?
筆者は、プロダクトプレイスメントの方が読者の心象は良いのでないかと考えた。
この仮説を検証するため、アンケート調査を行ってみた。
調査対象は一般の男女106人。属性は次の図のとおりである。
質問は次の2つである。
Q1 次の画像のように、漫画を読む前、あるいは読んだ後にバナー広告やポップアップ広告が差し込まれた場合、漫画を読む気持ちにどのような影響がありますか?
a 影響はない b 少し読む気が削がれる c 読む気を失くす(読まない)
Q2 次の漫画のように、作中に実在の企業の商品・サービスや店舗等が登場した場合、漫画を読む気持ちにどのような影響がありますか?
マガジンポケット ダイヤのA actⅡ (著)寺嶋裕二
登場箇所及び企業(商品):球場バックスクリーン 三菱電機、グリコ等
キャラクターが使用するグローブ ミズノ
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113058
コミックDAYS MFゴースト (著)しげの秀一
登場箇所及び企業(商品):レースをする車及びセリフ中 日産GT-R
https://comic-days.com/episode/13932016480029457425/embed#
a 影響はない b 少し読む気が削がれる c 読む気を失くす(読まない)
結果は次のとおりとなった。
差は明らかであるが、念のため有意差があるかを確認するため、「少し読む気が削がれる」と「読む気を失くす(読まない)」の回答を「邪魔に感じる」とまとめ、Q1とQ2の結果をクロス集計し、検定を行った。
検定の結果、WEB広告とプロダクトプレイスメントに対して、読者が邪魔だと感じる度合いに有意差が認められた。[p<0.05]
この結果から、プロダクトプレイスメントはWEB広告よりもマンガを読むという行為(読書体験)を邪魔しないということが分かった。
どうやら、プロダクトプレイスメントはWEB広告よりも読者に受け入れやれやすいようだ。
第5章は第二のリサーチとして、さらに読者目線でプロダクトプレイスメントのフィージビリティスタディを行う。
それまで皆さん、アリーヴェデルチ!(さよならだ)