マンガとプロダクトプレイスメント第5章 後編
第5章後編:プロダクトプレイスメントの手法による効果の違い~分析結果~
前回はアンケートの内容について説明した。
今回は、アンケート結果について見ていこう。
Q1ブランド想起:あなたが知っているスポーツブランドまたはスポーツ用品メーカーをすべて教えてください。(記述式)
Q1では、プロダクトプレイスメントの手法の違いでブランド想起に影響があるかを検証している。結果は次のとおり。
なお、ミズノを回答に挙げているものを「想起した」として集計している。
手法間で「想起した」と「想起しなかった」の比率の差が有意であるか検定した結果、ミズノを想起した比率に有意差は認められなかった。 [p>0.05]
Q2気づきやすさ:この漫画の中に実在する商品ないしブランドが描かれていたことに気づきましたか?
Q2では、プロダクトプレイスメントの手法の違いで気づきやすさに差があるかを検証した。結果は次のとおり。
手法間で「気づいた」と「気づかなかった」の比率の差が有意であるか検定した結果、小道具とセリフ及び場面とセリフとの間で、プロダクトプレイスメントの気づきやすさに有意差が認められた。[p<0.05]
Q3阻害度:Q2で「気づいた」と回答した方に伺います。
実在するスポーツ用品メーカーの商品やロゴマーク等が作中に描かれたことによって、漫画を読む気持ちにどのような影響がありましたか?
Q3では、プロダクトプレイスメントの手法の違いで、マンガを読む気持ちへの影響度に差があるかを検証している。結果は次のとおり。
手法間で「影響はなかった」と「阻害された」の比率の差が有意であるか検定した結果、読書体験への阻害度に有意差は認められなかった。[p>0.05]
Q4自然さ:Q2で「気づいた」と回答した方に伺います。
この漫画における実在するスポーツ用品メーカーの商品やロゴマーク等の登場の仕方について、どのように感じましたか?
Q4では、プロダクトプレイスメントの手法の違いで、プレイスメントの自然さに差があるのかを検証している。なお、プロダクトプレイスメントの先行研究では、プレイスメントが露骨であると読者(視聴者)が嫌悪感を示すことが度々言及されており、プレイスメントの「自然さ」は重要な指標である。
結果は次のとおり。
手法間で「自然であると感じた」と「不自然であると感じた」の比率の差が有意であるか検定した結果、プロダクトプレイスメントの自然さに有意差は認められなかった。[p>0.05]
Q5興味:Q2で「気づいた」と回答した方に伺います。
この漫画を読んで、作中に登場したスポーツ用品メーカー及びブランドまたは商品(シューズやウェア)にどのくらい興味を持ちましたか?
Q5では、プロダクトプレイスメントの手法の違いで、商品やブランドに対する興味に差が生じるかを検証している。結果は次のとおり。
手法間で「興味を持った」と「興味は持たなかった」の比率の差が有意であるか検定した結果、手法間でプレイスメントしたブランド等への興味の程度に有意差は認められなかった。[p>0.05]
Q6印象:漫画を読む上で、あなたはプロダクトプレイスメントについてどのように思いますか?(自由記述)
Q6では、プロダクトプレイスメントの手法の違いで、プロダクトプレイスメントそれ自体に対する読者の印象に差が生じるか検証している。回答をポジティブなもの、ネガティブなもの、その他のものに分類して集計した。
結果は次のとおり。
手法間で各回答の比率の差が有意であるか検定した結果、プロダクトプレイスメントという手法自体への印象の程度に有意差は認められなかった。[p>0.05]
ふぅ…
ここまでアンケート結果を淡々と書き連ねたが、結局何が分かったのかというと、
手法間で効果の違いが確認できたのは「気づきやすさ」だけで、セリフは小道具及び場面よりも読者に気づかれやすい傾向にある
ということ。
これは、セリフを読み飛ばす人は少数であろうことから、気づく人が多かったためと考えられる。
その他の項目については、手法間で違いは見られなかった。
しかし、各手法ともアンケート結果は悪くなかった。
Q3の「阻害度」については、「影響はなかった」と回答した人の比率が、一番低い背景でも69%であり、その他の手法では80%を超えている。
Q4の「自然さ」についても、「自然であると感じた」と回答した人の比率が、一番低い背景でも69%であり、その他の手法では80%を超えている。
Q5の「興味」については、「興味を持った」と回答した人の比率が、一番低いセリフでも39%であり、決して低い比率とはいえない。
Q6の「印象」については、ネガティブな回答の比率は、一番高い背景でも6%にとどまっている。
以上のことから、
プロダクトプレイスメントは、その手法を問わず、マンガにおいて、読者の視点からは極めて有効な広告手法である
と考えられる。
これが結論。
異論は認める。ご意見のある方はぜひコメントをば。
今回はここまで。
あとは、アンケートの分析結果についてもう少し言及して、「マンガとプロダクトプレイスメント」についてまとめたいと思います。
次週、いよいよクライマックス
へのつっぱりはいらんのですよ!
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