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新型コロナウイルスを絶滅させるには?

この論文を書いているのは2021年の8月28日。東京では新型コロナウイルスの感染者が新たに4227人、死者が18人と報道され、変異株のデルタ種が猛威を振るっている。(東京新聞8月28日記事)
 著者は、幸いなことにリモートワークが許され家から出ることがほとんどないが、テレビで見ると街には人があふれている。不要不急の用事がある方がまだまだ多いのが実情で現場でないと働けない方も多いんだろうと想像される。そのような状況の中、菅総理大臣は、経団連、経済同友会に出勤者7割削減要請を行った。この7割という数字を見て著者が気になったのが、以前、8割おじさんこと、京都大学の西浦博氏(以下、西浦氏という。)はそのあだ名の通り接触8割減を進めていたことだ。今回の削減要請が西浦氏の8割ではなく7割であった理由は何かあるのであろうか。
 今回の連載では、多くの記事や論文で既に使われているSIRモデルを使用し、8割削減と7割削減、その他の新型コロナ感染者数の予想を比較してみて、8割でなく7割の削減率で本当に効果があるのかを分析してみようと思う。
 新型コロナウイルスの感染が拡大していく中で、緊急事態宣言や、蔓延防止を行い、接触を減らし、R_0 (アールノート)を8減らすと新規感染者数推移がどのように変化するかを観察する。

 R_0 とは、大雑把に言うと、ある人がウイルスに掛かって、そのウイルスから回復するまでに、何人に移すかという数字である。つまり、R_0 が2という事は、ある人がコロナウイルスに侵されて、完治するまでに、二人の人にコロナウイルスを移すというような意味である。

8割減らした場合

 まず、コロナウイルスのR_0の数値は、ウイルスの株の種類により異なるので、精緻な数値は出せないが、ここでは仮に2.5として計算し、30日後に、緊急事態宣言を実行し、8割R_0を減らした場合(接触数を減らした場合)として計算してみる。

R_0 (前):2.5 
R_0 (後):0.5 

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 30日までは、新規感染者が30日までは増加し、コロナウイルスが広がり始めてから60日目、つまり規制をかけてから30日後に0に近づいていく。つまり絶滅に向かう。

7割減らした場合

 次に、今回の要請通り、7割削減した場合はどうなるか。30日後に、緊急事態宣言を実行し、7割R_0を減らした場合(接触数を減らした場合)として計算してみる。

R_0 (前):2.5 
R_0 (後):0.75 

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 コロナウイルスが感染し始めてから60日後、つまり、規制をかけてから、30日後までに減少こそするものの、新規感染者数が、0には近づかず、0.005付近で留まる。つまり緊急事態宣言や、テレワークが続く30日間では、コロナウイルスは0にならず絶滅につながらない。

6割減らした場合

 次に、7割の要請を出して、実際には6割ぐらいになった場合のシミュレーションをしてみる。30日後に、緊急事態宣言を実行し、6割R_0を減らした場合(接触数を減らした場合)として計算してみる。

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 コロナウイルスが感染し始めてから60日後、つまり、規制をかけてから、30日後までに減少するものの、新規感染者数の減少が、途中で頭打ちになる。このような中で、次の波が来るので、コロナウイルスは撲滅されない。

 このような計算結果になったことをどのように受け止めればよいだろう。邪推になるかもしれないが、菅総理大臣の周りにいる研究者たちによってシュミレーションがなされた上で7割の削減の陽性がなされたのは、ワクチンが広がっている事により7割でも新規感染者が0に近づくという算段があったのか、あるいは、経済界への影響を忖度した結果なのかもしれない。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中の人々の暮らしや生命が危険にさらされている状況から1日でも早く解放されることを願ってこんな計算をしてみました。

今回SIRの微分方程式は以下を使用しました。

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x: 全人口に対する現在感染している人の割合
y: 全人口に対する感染から回復した人の割合

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