ゲラ読み感想『あなたの教室(仮)』
早川書房から9月に刊行される予定の『あなたの教室(仮)』。
そのゲラ読みモニターに参加しました。
(タイトルの(仮)はもう外して良いのかもしれませんが、ゲラ段階では付いていたので、そのままにします。)
『あなたの教室(仮)』は、フランスの作家、レティシア・コロンバニによる小説。
話題となった『三つ編み』、『彼女たちの部屋』に続く3作目です。いずれも翻訳は齋藤可津子さん。
前の2作がたいへんおもしろかったので、早川書房さんのnoteで本作のゲラ読みモニターを募集していると知り、「これはいちはやく読みたい!!」と、勢いで応募。しかしもう締め切り間近だし、選考があるようだから、落ちるだろうな……と思っていたら、想定以上の速さでゲラが送られてきて、驚きました。編集者さん、お仕事早い!
さて、間もなく刊行される本作。
ネタバレしない程度に、感想を記してみます。
さいきんは年齢のせいか、集中力が続かず、本を読むスピードが落ちたなあと感じることも多いのですが、本作はもうとにかく、物語に入りこんで、一気に読みました。
『あなたの教室(仮)』は、ひとりのフランス人女性が、ある悲しい出来事をきっかけにインドを訪れ、さまざまな困難を経験しながら、教育を受けられない現地の少女たちのために学校を創ろうと奔走するというあらすじ。
『三つ編み』の続編の位置づけではあるものの、前作を読んでいなくても全然OKだと思います。
『三つ編み』は、住んでいる場所も境遇もまったく違う3人の女性の物語が、それこそ編み上げられるように語られていき、最後にひとつに結ばれる、という構成でした。
『あなたの教室(仮)』にも、それぞれの個性をもつ主要な3人の女性が登場するのですが、今回は離れているわけではなく、密接に関わりあいながら、ストーリーが展開されていきます。
個人的には、あるエピソードの末尾、数行のシーンが『三つ編み』を想起させ、ひじょうにぐっと来ました。(引用ができないので、どうぞ本作をお楽しみに。)
また、トラウマを抱えた主人公が、それまで生きてきた社会とは異なる文化・考えかたの世界に飛び込み、差異を乗りこえ、同志のような女性たちとともに、みずからも再生しようとするすがたには、2作目の『彼女たちの部屋』との共通点も強く感じます。
そして、本作で印象的だったのは、苦しみ・悲しみ(その多くは男性中心の社会、因習からもたらされている)を抱えた女性たちのなかに、ひとりの男性が現れること。彼はやがて彼女たちと伴走するかのように仕事を進めていくのですが、わたしにはこの青年が、新しい風を吹かせる希望的な存在に感じられ、胸があつくなりました。
この作品には、海がよく描かれています。とくに、第2の主人公とも言うべき少女が、海辺で遊ぶシーンが印象に残ります。
ゲラを読みながら、なぜか頭に浮かんできたのが映画『ピアノ・レッスン』(1993年公開)。
ずいぶん昔に観たきりなので、記憶ちがいだったら許してください。ジェーン・カンピオン監督によるこの映画にも、困難を抱えた主人公(女性)の娘が、海辺で遊ぶシーンが登場したような……。正確ではないかもしれなけれど、偶然に思い起こした映画の女性たちのストーリーをも(勝手に)重ね合わせたりしながら、ゲラを読み終えました。
本作の装画は、前の2作に続き、イラストレーターの網中いづるさんが手がけるとのこと。『三つ編み』も『彼女たちの部屋』も、雰囲気がぴったりの素敵なイラストで、わたしはすっかり網中さんのファンになってしまいました。3冊目も期待が高まります。
今回、ゲラ読みモニターというものに初めて応募し、貴重な経験をさせていただきました。どうもありがとうございました。
おそらく完成形はゲラの段階から修正されたところもあるのでしょう。
『あなたの教室(仮)』が刊行されたら、また新たな気持ちで読みたいと思います。