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(51)ニューヨークでの生活の始まりーーchinko to america by mano

 翌日は朝8時から運転を再開した。
 ケンタッキー州からウェスト・バージニア州、ペンシルベニア州を経て、ハドソン川を挟んでマンハッタンの対岸に位置するジャージーシティーに到着する。休憩を含め、ここまで約12時間の道のりだった。
 マンハッタンへの入口となるホランドトンネルをくぐる前で高速を降り、大きなガソリンスタンドを見つけたオレは、駐車場に車を止めて車中泊をした。明日はいよいよニューヨークに入る。当面の間は市内のクイーンズに住むショーンの実家に居候させてもらう予定だ。
 
 翌朝、ホランドトンネルをくぐってマンハッタンに入ると、まずはブルックリンにある貸倉庫に向かった。車のトランクと後部座席に詰め込んだ家財道具を一時的に保管するために事前に小さな倉庫を予約しておいた。
 地図を見ながら現地に着き、オフィスでカギを受け取って敷地内の倉庫の前に車を止める。この辺りは、ブルックリンの寂れた倉庫街のような場所になっている。周囲を見回すと、ラテン系やアフリカ系の人たちがたくさんいて、それぞれが自分たちの車から荷物を倉庫に運び込んでいた。
 彼らに交じり、オレも荷物を移動させる。これまでにも多くの人たちがこうやって外部から大都市ニューヨークに移り住み、この土地に慣れ親しんでいったのだろう。オレも今、そんな彼らの中の1人となり、ニューヨークでの生活を始めようとしている。それを思うと、何とも言えずわくわくしてくる。
 残念なのは、ここにソフィアがいないことだった。新たなスタートを〝移民〟同士の2人で始められたら、どんなに感慨深かっただろう。だが今は、どうすることもできない。
 
 荷物の運び込みを終えると、ショーンの家に向かう。前回のソフィアとの旅行のときに会っているので、約3カ月ぶりの再会だ。
 ショーンの家の前の道路に車を止め、玄関前のステップを登ってドアベルを鳴らす。すぐにショーンがドアから出てきた。
「ヘイ、マーノ! とうとうやって来たな! 来てくれて嬉しいよ」
 大きな体を傾けて、がっしりと抱きついてくる。
「カモン・イン!」
 促されて家の中に入ると、ショーンのお母さんと妹のモニカが出迎えてくれた。

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