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小説(SS) 「メガネの行方」@毎週ショートショートnote #メガネ朝帰り

お題// メガネ朝帰り
 

 大切なメガネだった。
 ばあちゃんが誕生日にプレゼントで買ってくれたやつだったから、いつも大事に扱っていた。
 けれど現実は、残酷で非情だ。
 身体中がちくちくする感覚で目を覚ましたとき、おれは路上の植え込みでイチョウの木を抱きかかえながら頬擦りをしていた。朝になっていた。
 二十歳になって、初めて参加する飲み会だった。数種類のカクテルを飲んだあたりから、なにも覚えていない。誰と話したかもわからない。ここがどこだかも見当がつかない。口の中で、木の味がする。イチョウにかじりついていた可能性もある。そんなことはどうでもいい。二次会の場所はどこだったか友達に聞きたい。メガネを探さなければ。だめだ。スマートフォンもない。おれはいったいなにをしたんだ。頭も重い。かろうじて定期券だけはポケットに入っている。まずは家に帰って、シャワーを浴びよう。身体中が土臭い。口の中から木の枝まで出てきた。

 家に帰ったおれを待っていたのは、玄関横に丁寧に置かれたメガネだった。
 そうだった。なぜ忘れていたのか。
 絶対に失くさないよう、昨日は裸眼で行っていたんじゃないか。

〈了〉472字



2週間ぶりでございます。結婚式準備で大変バタバタしておりますが、今週は参加させていただきます。

感動的なオチにするつもりが、なんか変なギャグっぽくなってしまいました。
優しくてほっこりするやつも、たまには書きたいですね。

サムネイルの木が全然イチョウじゃない?
AI君が出力してくれないのです。泣き寝入りです。

ではではまた〜

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