小説(SS) 「道ばたの虹」@midjourney
#midjourney
AIがはじき出してくれた絵を見て、そこから得たインスピレーションで、ショートショートを書いてみました。変な物語ですが、悪しからず!
両腕が伸びてしまった。
ついでに、腕の毛から炎まで出ている。
ちょっとした、契約ミスだった。
おれが道ばたに寝転んでいたら、通りがかりの悪魔が「力が欲しいか」と囁いてきた。
怪しいと思って無視していたら、「そう邪険に扱うなよ。お前は孤独になるが、力を手にできるんだぞ」と悪魔が言ってきたので、「うさんくさいな、できるもんならやってみなよ。先に力をくれたら、孤独にでもなってやるよ」とからかってやった。
そしたら、「いいだろう、どんな力が欲しい」と意外にも悪魔が乗っかってきた。
おれは、息子が最近家で練習している合唱曲のフェニックスって曲が耳だこになっていたので、「じゃあ、フェニックスみたいな両翼をくれよ」なんて適当なことを言ってしまった。
これがよくなかった。
悪魔はにこにこと笑うと、その獰猛そうな爪の生えたドス黒い両手をおれの胸にかざした。
すると、みるみるおれの両腕が伸びていくではないか!
背中に翼が生えるわけでもなく! 腕が!
この悪魔、翼を背中に生やすんじゃなくて、鳥みたいに腕を羽にしやがったのだ。
待て待て待て、間違えてしまったのはおれか。
フェニックスはそういえば、天使や西洋のドラゴンみたいに背中に翼が生えてるんじゃなくて、鳥だ。炎をまとった神聖な鳥なのだ。だがもう遅かった。
腕は、まだまだ伸びてゆく。
やがてそれは弧を描き、虹のようなカーブを作った。腕の毛が火を噴く。傍目から見たら、燃えているような虹が、なんてことない道ばたで架かってしまっていた。
虹は、みんな好きだ。それは知っている。だから、まもなくして、おれの姿を虹と勘違いした野次馬が近づいてきた。
「た、助けてくれ! 悪魔と契約してしまったんだ!」
おれは、すかさず叫んだ。だが、見に来たものが虹ではなく、腕がフェニックスみたいになってしまった人だとわかるなり、野次馬どもは逃げてしまった。
それからは、こんなおかしなことになっているというのに、マスメディアどころか、人だかりができることもなかった。
おれがフェニックスになっても、誰も心配したり、関心を持ってくれないのか。そんな風に、おれは自暴自棄にすらなり始めていた。
だが思い出した。
おれはどんな形であれ、力を手にしたのだと。
それにより、悪魔のせいで孤独になってしまったのだ。
ああ、今日からどうしよう……。
FIN
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よい反応がいただけたら、また書こうかなと思ってます。とはいえ、まだまだ読者の方も少ないのでそもそもの話なんですけど……笑