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小説(SS) 「商店街に行こう!」@毎週ショートショートnote #ヘルプ商店街

お題// ヘルプ商店街


 おばあさんは目を覚ますと、今日は天気がいいから商店街にでも行こうと思い、ゆっくりと布団から這い出ました。
 身寄りのないおばあさんにとって、毎日はとても退屈です。楽しいことといえば、商店街に出かけて仲のいい知り合いとお話するくらいのものでした。

 商店街では、若い人が優しく話しかけてくれて、買い物したものを代わりに運んでくれたりします。おばあさんは、長年生きてきてこんなに老人に優しい街はない、と思っていました。まわりには言っていませんが、あまりにもみんなが親切でいろいろ手伝ってくれるので、おばあさんは心の中で勝手に、ヘルプ商店街なんて呼んだりもしていました。

 しかし、おばあさんが商店街のある場所に着くと驚きの光景が広がっていました。なんと、瓦礫しかなかったのです。すべての建物が倒壊していて、人の姿はおろか、動物も見当たりません。鳥の声すら聞こえません。決して、おばあさんの耳が遠いからというわけではありませんでした。
 おばあさんは、その光景を見てうろたえました。あたしの知っている場所ではない、そう思いました。別の街に来てしまったのだと自分に言い聞かせ、おばあさんは来た道を引き返そうとしました。

 振り返ると、黒いボロ布のフードを被った小さなこどもが立っていました。

「おばあさん、また来たんですね」

 こどもは、おばあさんのことを知っているようでしたが、おばあさんにとっては見知らぬ人でした。

「ぼうや、ここでなにをしているんだい?」

「食べ物を探しています」

「満足に食べられてないのかい? かわいそうに」

「いえ、いまは人類全員が助けを求めてますから」

「人類全員が……? それより、商店街をこのあたりで見なかったかい。道に迷ってしまってねえ」

「なにを言ってるんですか、おばあさん。この街は十年前に異星人の侵略に遭ってから、もう誰ひとりも住んではいませんよ」

「異星人だなんてそんな。老人をからかっちゃいけないよ。そんなこと、あるはずがない」

「おばあさん、何度言えばわかるんですか。第一、あなただって――」

 よく見ると、こどもの身体は半透明に透けていました。おばあさんは、頭がくらくらしてきました。
きっとなにかの間違いだと思いました。
 今日は、ただ道を間違えただけのはずです。
 おばあさんは疲れきって家に帰りました。明日こそは商店街に行こうと、ひとり布団の上で思いました。

 十年前に異星人の侵略? それじゃあ、あたしはいままでどうやって生活をしていたんだ? もしかしてすでに自分はこの世に――
 もう考えるのはよそう。今日のことは忘れよう。
 おばあさんは自らにそう言い聞かせ、再び眠りにつきました。

〈了〉1,095字



一週間あけての投稿です〜。
本日、新居に引っ越しまして、
ここ最近はずっとバタバタしておりました。
先週参加できなかったのが残念です……!

とまあ、気持ちを新たにこれからもやっていこうと思います。ではでは〜。

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