
片おしどり
私のお客様、いくこさん(仮名)
70代後半の方だけど、歳の離れた友人のように仕事をしつつかなりの時間、いろいろな話をする。
その時間をとても楽しみにして下さっている。
↑そのお客様との他のエピソード
月に1度お会いするけど、どうしても諦めきれないように
ご主人が亡くなったことに今も慣れない話をされる。
男の中の男!みたいな人だったのよ。
緒形拳に似てたのよ。
森田健作にも似てたかな。
アウトドアが好きな人だったの。
定年して今からたくさん好きなことしようねって話してたの。
車で日本一周する約束してたの。
医療事故だったの。
こんなはずじゃなかったの。
諦めきれない気持ちで10年過ぎてしまった。
切々と語るいくこさん。
私にはどうしてあげることもできない。
「私が6歳の時に母を亡くした後、誰が教えてくれたのか忘れてしまったけど、今も強く残ってることがあります。」
と話すといくこさんは、身を乗り出してこられた。
「この人生めいっぱい生きていつかあの世で会える時に、山ほどのお土産話を持っていけるように、生きなさいって教えてもらったんです」
いくこさんはしばらく黙ったあと、涙が止まらなくなった。
「ほんとに。そうね。お父さんにいっぱいお話作っていけばいいわよね」
前に友達がからかうように、お父さんはもうあっちにいい人出来てて、おばあちゃんになったいくこさんは相手にされないかもよ?って言われたの。とご本人も笑いながら話されるので
「そんなことは絶対ないです。
お父さんは天国のドアの前でテント張っていくこさん来られる日までキャンプしてます。
この間お空に旅立ったゆずちゃん(老猫)と、前に飼ってたバンちゃん(柴犬)と一緒に。
焚き火してのんびり待ってますから。
大丈夫だから楽しみましょう。
私もお父さんに会ってみたかったです。
私の話もお父さんにしてください。
その日までいっぱい思い出作りましょうよ。」
と語り合った。
片おしどり、さだまさしさんの曲のタイトルをお借りしました。
いくこさんとの日々は私にとっても宝物。