よちよち ちよが来た
もう一ヶ月経ったのか!
カレンダーを見て、びっくりした。
我が家に犬が来てから、もう一ヶ月が過ぎていたのだ。
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話は半年前に遡る。
当時、我が家は人間2頭、猫3頭。にゃんにゃんにゃん天国だった。
しかし、幸せな時間は突然失われた。
我が家の大きな子猫、メインクーン種のハルマチくんが、病気で死んでしまったのだ。
ハルマチくんは、我が家のムードメーカー。毎日お腹が痛くなるほどの笑いを提供してくれていた。今でも、我が家で彼の話題がのぼらない日はない。
そして大きな子猫だった。メインクーン種の成長期は、普通の猫の3倍の、三年間。成長すると、人間の大人が腕を広げたくらいに長く大きくなるのだ。
ハルマチくんの腕は、他の猫の1.5倍。骨もがっしり太かった。これはさぞかし、大きな大きな猫になるのだろう。毎日その日が楽しみだった。
それが、病気で死んでしまった。闘病期間、わずか2ヶ月。冬の晴れた夜に、彼は身体を抜け出した。
まぶたが溶けてしまうんじゃないかと思うほど、泣いた。庭の隅に、ハルマチがいないのが寂しかった。他の猫と寄り添うように眠る姿が見られなくなって、苦しかった。
けれど、彼の残してくれたものは、悲しみばかりではなかった。
彼を偲び、語り、笑い合って、わたしたちは少しずつ元気になっていった。
そして春になって、わたしたち人間は、新しい家族を探すことにした。
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なぜ、犬なのか。
一番大きな理由は、「散歩がしたいから」だ。
わたしは在宅で仕事をしている。家で仕事をする、つまり、通勤が無いことと、ご飯が美味しいことは良し悪しだ。
要するに、運動不足で太ったのだ。
また、この街に越してきて一年。車で移動する生活となり、以前ほど街を歩くことがなくなった。東京にいた頃、通勤中に感じていた季節の移ろいが、田舎に来て遠のいてしまったのだ。これはちょっと寂しいよね。
そこで、犬の出番。犬と言えば散歩でしょう。
それに、猫2頭との落ち着いた生活もいいけれど、新しい家族と一緒に、やっぱりワイワイ騒ぎたい。
心が決まってから、さっそく犬を探しに行った。
ペットショップにも犬はいるけれど、生き物を買うのは、ハルマチのことも思い出されて抵抗があったので、里親募集の掲示板や譲渡会をまわることにした。
意外というか、当たり前というか、犬の里親募集は、猫のそれと比べて少ない。それはそうだ。街に野犬はなかなか居ないからね。
いくつかの団体と交渉し、紆余曲折があって、2019/5/19に、我が家に犬がやって来たのだ。
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インターネットの里親募集サイトで、わたしはその子を見つけた。
「ブリンドル柄の茶々ちゃん」
それが、その子の名前だった。
山口県の野犬の子犬で、約1ヶ月。大きさは中型犬になると思われる。
ブリンドル柄とは、黒茶白まだらのような柄。ある団体でわたしが一目惚れした犬と、同じ柄だった。
いちばん大事なのは、猫との相性。我が家には先住猫がいるので、彼女たちとうまくやっていけなくてはならない。
猫と犬と一緒に住んでいる(保護している)人は少ないので、どの団体に行っても、
「猫との相性は、よく分からないですね」
という回答ばかり。
それが、茶々ちゃんを保護している家は、犬も猫も保護しているそうで、
「この子は、猫と一緒にいても大丈夫」
と太鼓判を押してもらった。
決まらないときは全然だけれど、うまくいくときには物事はスルスルっと進んでいく。
「明日、譲渡会が中止になりそうなので、そちらのお宅に茶々ちゃんを連れて行っていいですか」
金曜日に電話を受けて、土曜の昼には、茶々ちゃんがやって来た。
山口県から福岡県の長旅で、その日はぐっすり眠ってしまった茶々ちゃん。
今度は長生きしてほしい、そう願いをこめて、名前は『ちよまち』とした。
我が家の子は、名前に『まち』をつけると決めている。たまたま、博多に『千代町』という地名もあって、ぴったりな名前だと思っている。
いまは犬も室内飼いが基本だという。ちよちゃんも当然室内飼い。トイレを成功したり、失敗したり、猫を追いかけたり、猫に怒られたりしながら、ぐんぐん成長中。
家に来たときには、2.4kgだった体重も、今や3.8kgに増えて、猫の大きさも越えてくるようになった。
ワクチンをあと1回、狂犬病の予防接種を1回受けなければいけなくて、まだ外を散歩できる日は遠い。
けれど、今日はお庭をプレ散歩してみた。いろんなにおいに、興味津々。
人間2頭、猫2頭、犬1頭。そしてハルマチ。
令和も騒がしいわたしたちを、どうぞよろしくお願いします。