踊
8月3日
妻が窓の外を眺めながら「あれ何だと思う?」と訊くので目を凝らすと庭のオリーブの木の真ん中辺りになんか、蜂の巣みたいなのがあるじゃないですか。「蜂…… 蜂の巣だと思う……」「だよね」「駆除しないとね、やります」「ありがとう、気をつけてね」 分かりました。
ホームセンターでセールになってたやつを買って物置に放り込んだままになっていた高枝切りバサミを引っ張り出し、庭の裏手に回ってオリーブの木に近付く。ここら辺だったかな? ハサミを差し込むとひらひらとオレンジに黒の斑点模様の蝶が飛び立った。さっきまで蜂の巣に見えてたポツポツは果たして蝶々の翅の模様だったのだ。あー良かった〜。
せっかくなので高枝バサミを買った本来の目的であるオリーブの枝の伐採に取り掛かった。齢三十五、庭木をこんな風に剪定する人生になるだなんてね。四方八方自由に伸びる枝葉を落としていくとあっという間に30リットルのゴミ袋が3ついっぱいになった。あたりにフレッシュなオリーブの香りが漂う。時刻は11時前、汗を吸ってずっしり重くなったTシャツを脱いでシャワーを浴びた。
✴︎ ✴︎ ✴︎
今日は地域の夏祭りの日。妻と子供たちとで16時前に会場に向かったが、もうめちゃくちゃ暑い、こんな暑いわけがあるかってくらい暑い。暑すぎて人影もまばらである。全力の日光が降り注いで地面にも反射して全体的に視界が白い。もっと遅くに来れば良かったかな。でも、この時間にヒーローショーがあるというので見物に来たのだ。いや……でもこの暑さでヒーローショー? 死人が出るのでは……?
我々がステージの前にたどり着いたとき、既にショーは佳境に入っていた。ヒーローたちの殺陣も名乗りの立ちポーズも心なしかキレがないように見える。
今回、こういったショーにありがちな「ヒーローかなり負ける→子供たちの声援で復活→必殺技で逆転大勝利」の流れがなくなっていた。これ以上ヒートアップさせるのは良くないという判断かもしれない。暑すぎるから。
でも最後のダンスはちゃんとあった。「みんなも一緒に踊ろう!」って、今日はもう踊らなくて大丈夫だよ、早く控え室に戻りなよ、と思いながら、万雷の拍手で演者を労った。
✴︎ ✴︎ ✴︎
クレープやかき氷、立ち並ぶ出店の端に商工会主催のくじ引き屋さんがあったので最大本数購入する。当選番号の発表は祭りの最後の時間帯だった。子供たちが暑さでへばっていたので妻と先に帰ってもらい、僕は単独で会場に残った。
ビールを飲んでから盆踊りの輪に加わる。民謡保存会のおばあさんが櫓の上から振り付けを説明してくれた。コロナ禍もあったのでこちらに居を構えてからこれまで一度も地域の盆踊りには参加できていなかったのだけど、なんかここの踊りはちょっと難しいっぽい。
見よう見まねで何とかそれっぽい動きをしているうちに刻限になる。もっとこう、最低1時間くらいは踊り続けないと盆踊りの“芯”には到達できないので、今回はかなり物足りなかった(盆踊りには繰り返しの動きとリズム、そして円運動によって、盆踊りを踊り続けたときにしか得られない高揚と快楽、“high”が訪れる瞬間がある)(あるんですよ)。
肝心のくじは、あと2つ遅い番号を買えていればニンテンドースイッチを入手できていたことが判明して、なまじ箸にも棒にもかからないような結果より悔しい思いをすることになった。一緒にいた息子の分も合わせて購入しておけば…… まあ仕方がないか。
会場から20分かけて歩いて帰る。
シャワーを浴びて就寝。72.9kg、19.5%。