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冷蔵庫のうらに廻る

「最近、冷蔵庫で氷がうまくできない。全くできないというわけではないがバラバラの状態ではなく、大きな塊になってしまう。おそらく冷蔵庫の機能自体がおかしいのだと思う」と妻が言う。

氷塊

子供に水筒を持たせるため我が家は毎日それなりの量の氷を消費している。ましてやこの季節、氷はアルコールを美味しく摂取したり、冷たい麺料理を作るためにも潤沢に必要である。
「えー、アイスピックとか買ってこようか?」
僕の提案は的外れだったようだ。
「私は“冷蔵庫がおかしい”と言っている。氷塊をどうにか活用したいのではない。業者を呼ぶなどして根本的な解決を図りたい」
なるほど。
「ただ、先日インスタグラムのリールで冷蔵庫を動かし、側面から裏側までを掃除する動画を見かけた。排気口に溜まった埃を除去することで製氷機やアイスストッカーの温度が下がり、氷同士がくっつかなくなる可能性がある」
それでも改善しなければ業者を呼ぶということ?
「左様」

妻によると大抵の冷蔵庫には底部にキャスターがついており、ストッパーを解除することでそれを有効化できるのだという。よろしい。早速やってみよう。

最下部の白いカバーを外す
黒い小さいタイヤみたいのが出てくる

2枚目の写真(ピントがずれているが)、黒く丸い機構がストッパーである。冷蔵庫の左右にあるこれを反時計回りに回すことでキャスターが機能するとのこと。YouTubeで検索すると「女性1人でも軽々〜」みたいなタイトルの動画がトップに表示され、実際その動画では女性が悠々と巨大な冷蔵庫を動かしているのだが、しかし我が家はこのストッパーが全く回らないのだった。園芸用のゴム手袋を持ち出して指のグリップ力を上げてみたが、それでもびくともしない。

さて、この冷蔵庫を買ってから何年経つだろう。
家を建ててからだから、7年と少しだ。
ではその7年間、一度でも冷蔵庫を動かしたことがあったか。

ない。

ないのである。なにしろ冷蔵庫にキャスターがついていること自体つい最近知ったわけだし。
果たして、7年間一度も回転させたことのない金属の機構が、全くの思いつきのタイミングでいきなり軽々と動くものだろうか。うーん、なんだかパワーだけでなんとかなるものではない気がしてきたぞ。

「うちと同じように10年冷蔵庫を動かしていなかった人のブログを見つけた。経年で固まってしまったストッパーはパイプレンチで回すのがいいらしい」
早速妻が有用な情報を持ってきた。工具か。でもうちはあんまりDIYとかしないし、モンキーにしろパイプにしろ、おおよそレンチと呼べるようなものは持ち合わせていない。

オラ!

というわけで、ホームセンターで買ってきた。1500円。3点ホールドタイプで厳密にはパイプレンチではないんだけど、これでどうだろう。挟んで、回す………

いけた。人力ではぴくりとも動かなかったストッパーがどんどん回る。ストッパーを上げた状態で冷蔵庫を前後に揺らすと、動いた。動きました。7年以上その場にあり続けた冷蔵庫が今、その巨躯をゆっくりと……

うわあ〜!

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