絶頂
この瞬間、全てが終わったと思った。
いや、その瞬間はまだその覚悟はできていなかったかもしれない。
他人事の様に"終わった"と思った。
これから起こることは想像ができた。
前例がありすぎるほどあった。
激しいバッシング、それから人が去り金が去る。
そして、すべてを失う。
世の道理に抗うことはできない。
なるようになるしかないと思った。
それから起こったことは、想像通り想像を絶していたが、それらを拒否することはできなかった。
そもそも、そのような余力は残っていなかった。
自分の心に残ったのは激しい後悔と喪失感だけだった。
ただ、あきらめてはいけない、すべてを否定してはいけないと、本能が教えていた。
全てを投げ出したい気分のままだったが、その声に従った。
できることは限られたが、できることに集中した。
途中、何度も何度も人生を投げ出したくなったが、そのたびに本能がささやいた。
待ち望めと。
希望などなかった。
ただ、あきらめてはいけないと言い聞かせた。
日々は暗闇の泥沼を進むようだった。
進む方向に自信はなかった。
一日の終わりには人生に疲れ果てた自分しかいなかった。
同じような明日が来るのが怖かった。
それまでの人生とは真逆の世界にいる自分に嫌悪した。
自分の小ささと無力さを思い知らされる日々。
それを繰り返す残酷な世界に留まることに疲れ果てていた。
それでもあきらめたくないと思った。
負けたくなかった。
もはや何が勝利かわからなかったが、何が負けかはわかっていた。
だから負けたくなかった。
負けずに耐えた4年。
ここまで来た。
ここまで来れるとは思わなかった。
ここで何かを成し遂げることを期待はしていない。されてもいない。
許されたわけでも、自分が許したわけでもない。
ただ、今ここに存在する事実。
ここから見える風景は、希望に満ちたものではなかった。
しかし、本能はまだ、あきらめるなとささやいている。