05_金太郎だらけの浮世絵マン②
【裏書き解説】
今回こそ駆け足で裏書き解説していきます!
と、その前に(おい)
『金太郎だらけの浮世絵マン』の裏書きは、本家ビックリマンの金太郎キャラクターたち(一部例外あり)の裏書きから文言をサンプリングして散りばめるというコンセプトで組み立てました。
◆以下が元ネタシールです◆
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①金太ロボ神
②金太神
③聖金太魁
④金太ボット
⑤成駒金太
⑥金太ロボ神(スーパービックリマン)
⑦マサカリテクノ助(相撲つながり)
⑧聖露士(この方だけ金太郎と全く関係ありません)
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それでは今回はなるべくざっくり行きますよー!
【A】金太郎(鳥居清長0番)
・金時が稚立の時代を経て剛士と雑るうちに
それまで坂田公時の幼少期の名前は快童丸とされていたのが、明和二年(1765)に刊行された草双紙黒本『金時稚立剛士雑』で、初めて金太郎という名前になったとか。
セット名が『金太郎だらけの』なので、金太郎の名前を生み出した作品のタイトルをプロローグとして入れました。
・「図らずも発気ヨーイ!」と
⑦マサカリテクノ助の【当たらぬもハッケ良ーイ!!】から拝借しています。
「はっけよい」の語源には諸説あり、⑦マサカリテクノ助は風水などの「八卦」から採っているようです。浮世絵マンでは日本相撲協会の審判規定の「発気揚々」説を採用して漢字を当てました。
また、これは偶然の産物ですが、セット一枚目のシールで金太郎キャラクターよりも先に行司キャラクターの掛声を抜粋して始まるのは面白いですね。
・その名を快童丸から金太郎へ大変化後創正期
名前の変化は金太郎史的に大きな事件なので大袈裟なビックリマン言語がないか探している時に⑧聖露士【環象大変化後創聖期】を見つけて拝借しました。
金太郎とまったく関係ないのですが、この強引な字面の誘惑に勝てませんでした。今思うと頭に「環境」をつけた方がオマージュとして良質だったかも知れません。ただし時数限
・猪を熊に乗り換えて
このシールのもとになった浮世絵『熊に跨がる金太郎(仮)』を境にして金太郎の乗る動物のイメージがそれまでの猪から熊に塗り替えられたことで、より私たちの知る「マサカリかついだ金太郎」に近づきました。これも金太郎にとっての大変化ですね。
・マサカ童謡姿の金雛型ここに誕生 !!
「マサカ童謡姿」はかなりビックリマンっぽさがあるのでこれも何かをもじったのかも知れませんが思い出せず…「マサカ」は⑦マサカリテクノ助の摺り込みでしょう。
雛型を表すテンプレートという言葉に金の字を足して「キンプレート」と一ひねりできたのが嬉しかったです。
【B】金太郎(鳥居清長1番)※バラ在庫あり
・金太郎わるく育つと鬼になり、すくすく育つと本の鬼ナリ?
1778年刊の『柳多留十六編』に掲載された「金太郎わるく育つと鬼になり」という川柳に②金太神の【すくすく育ち】を付け足して絵の内容に絡めました。1765年に初めて草双紙に登場した「金太郎」という呼称が1778年には庶民の川柳に吐かれるほど浸透していたのでしょうか。
・熊の机に頬杖ついて
清長の描く金太郎浮世絵ではクスッと笑ってしまうような役割で熊が登場する作品が多いのですが、ここではとうとう家具になりました。似た構図でフキダシの代わりに鬼がマサカリを持って立っている作品もあります。
・初金忘れず見る夢は
②金太神【初聖心を忘れず】から拝借。「初金」は初々しかったころの金太郎という意味の造語です。
・金キラ金にさり気なく技モ磨いてはっちゃき大相撲で金星!
⑤成駒金太【金キラ金にさり気なくカブと冠ってとっぱり大相撲!】から拝借。そこに元ネタであるゲーム『つっぱり大相撲』のメーカー「テクモ」の名前を「技モ磨いて」に重ねています。
・立身出世~
この「立身出世~」という最後の抜き方はビックリマンっぽいので本家のシールを参考にした可能性があるのですが思い出せませんでした。
裏書きを組み立てる際に参考にした資料はブックマークやスクリーンショットなどで残しておく方なのですが、『金太郎だらけ』の時は9種類の金太郎ネタを空いた時間に同時進行で進めていて、「このネタはこっちの金太郎からあっちの金太郎に変更」のように内容の交換などもしていたので記憶がかなり曖昧です。
【C】金太郎(鳥居清倍)
・シャルウィ丹絵?
もとの浮世絵を初めて見た時に相撲というよりダンスしてるように見えたので、映画『Shall we ダンス?』を絡ませたいと考えました。いちおうダンス用語も調べたはずですが、ひとっつも織り込めなかったのでいつかダンスネタ縛りでリベンジしたいと思っています。
『丹絵』というのは、この清倍の「金太郎」にも使われた初期浮世絵の彩色技法のひとつで、墨一色で摺った版画に丹(紅殻)の朱色をメインに黄色や緑などを筆で手彩色したそうです。
・アラ熊さんトッ捕まって足も足も出ず熊ったちゃん。
ルビは「てもあしも」なのですが、熊なので前足も後ろ足もってことで漢字表記は「足も足も」にしてます。
・丸金だパワーアップ怪力に軍配アップ!!
②金太神【丸金だパワーアップ怪力を聖卵に注入】から拝借。
元ネタの【丸金だパワーアップ怪力】は①金太ロボ神の【金だヘッドパワー】が強化されたんだろうな、ということは想像できるんですけど言葉の並びが意味不明で解読し切れないところが本当にかっこいい。
軍配上がってギブアップは我ながら見事な技あり表現だと思います。
・決り手は突出し押出しからーの絵具はみ出しで
『丹絵』には「絵具の塗りが輪郭から激しくはみ出したことで生まれる迫力」という特徴があるということなので、決まり手の名称を畳み掛ける中に「カラーの絵具はみ出し」を混ぜ込んでみました。
・勝星キラリ☆
スピッツの曲名からですね。
スピッツは「良いんだろうな~」と思いながら結局まともに聴かずに今まで来たのですが『涙がキラリ☆』という曲名表記に衝撃を受けた記憶だけいつまでも付きまといます。
好きな表現なのでまた使うかも知れません。
【D】金太郎(勝川春好)
・ゟ目と瞠目で睨んだら
春好の「金太郎」は伝承や物語の中に登場する金太郎を描いたのではなく、芝居の中で金太郎を演じている役者の姿を描いています。考えたら『浮世絵マン』初の役者絵シールになりますね。
ただのヨリ目ではなくて片方の目は正面を見ている、というのが「目の血管が切れることもある」と噂の『にらみ』です。浮世絵ではよく見られる表現ですが、歌舞伎役者が芝居の中でやる「見得」とは違い、『にらみ』は成田屋(市川團十郎家)のみに受け継がれて正式な場で披露される邪気払いの演目(?)です。
なので、この裏書きで「睨んだら」と書いてますがこれは歌舞伎を連想させるために使っているだけで『にらみ』とは直接関係ありません。
オリンピックの開会式直後も無駄に荒れてましたけど、「見得」との違いがわかりにくいので成田屋が『にらみ』をする時は「元祖!」と書いた鉢巻をするなど「見える化」してほしいものです。
「ゟ」という文字は、「よりめ」を漢字に変換しようとした時に候補に出てきて初めて存在を知りました。
スマホの予測変換は的外れなことも多くて普段は当てにならないものですが、おっちょこちょいだからこそイメージの飛躍を手伝ってくれることがあるので言葉探しの手段としてはなかなか有用だと感じます。
・鬼も逃げ出す演技者!
吉凶の「縁起」と芝居の「演技」をかけました。
金太郎は厄払いや立身出世を連想させるので自然と裏書きにも前向きな表現を選びがちだったように思います。裏面を朱色にしたのも「坂田怪童丸」と同じく魔除けの意図がありました。
・ど根性丸見得で激四股熟達踏み鳴らし紅潮ホホに隈を入れれば
④金太ボット【剥身ど根性】【聖魔の激突に必達四股を踏みならし紅潮ホホにカツを入れ】から拝借。
歌舞伎役者なので頬に入れるのはカツではなく隈取りにしました。
ツイッターにも書いたのですが「シコリティ」というルビは下ネタに寄りすぎで後悔しています。「四股を踏む技術が高い」という意味で使っているのですが本来の意味と切り離すことができていませんでした。反省!
・写楽も描いた滝乃屋門之助mk2
ここでようやく描かれた役者の紹介をしています。
この浮世絵で金太郎を演じているのは二代目の市川門之助(1743-94)。屋号が滝乃屋で二代目なので上記のようになりました。
下の画像はアノ東洲斎写楽が描いた二世市川門之助です。
※向かって左側の大首絵『伊達の与作』が「三世」門之助となっていることがありますが、二世と三世は顔の特徴が全く異なること、また年代的にも「二世」が正しいものと思われます。
・待ってましたの一本戉土俵入
④金太ボット【待ったなしの体当りだっ!!】【一本刀土俵入り】から拝借。
「待ったなし」を役者ならではの「待ってました」にすり替えてます。
【一本刀土俵入り】は力士が主役の有名なお芝居のタイトルです。マサカリの漢字は複数ありますが、「刀」によく似た「戉」という文字を見つけたときは嬉しくてホクホクしました。
この『一本刀土俵入』。中村勘三郎が主役を務めた舞台が二代にわたって映像化されて残っているのですが、自分としては18代勘三郎(勘九郎時代)の当たり役っぷりを是非観てほしいところ。
↑ 18代勘三郎(勘九郎時代)の『一本刀土俵入』はこちらのDVD-BOXに収録されています。ちなみに同時収録の『コクーン歌舞伎 三人吉三』は椎名林檎が主題歌を書き下ろした時のではなく、石野卓球の曲が使われているバージョン。賛否両論間違いなし(笑)
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もはや解説というよりも雑感でしかない気もしますが、ひとまず今回はここまでにします。
こんなに長いのにまだ半分も終わってない…。
またこんど!!