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05_金太郎だらけの浮世絵マン③

【裏書き解説】

『金太郎だらけの浮世絵マン』の裏書きは、本家ビックリマンの金太郎キャラクターたち(一部例外あり)の裏書きから文言をサンプリングして散りばめるというコンセプトで組み立てました。

◆以下が元ネタシールです◆
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①金太ロボ神
②金太神
③聖金太魁
④金太ボット
⑤成駒金太
⑥金太ロボ神(スーパービックリマン)

⑦マサカリテクノ助(相撲つながり)
⑧聖露士(この方だけ金太郎と全く関係ありません)
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それでは今回もなるべくざっくり行きますよー!!


【E】金太郎(喜多川月麿)

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・なけなけとんび青空あおぞらにピンヨロー♪
童謡『とんび』の歌詞から抜粋。
小学校低学年のころ、書道の授業だけを担当していた中年の女性教師がユニークな方でした。
ある日の授業中、何故かその教師が『とんび』をビブラ~トを効かせながら金切声で歌い、それに合わせてわれわれ生徒が立ち上がって広げた両手を羽根のように上下させてとんびの真似事をしないといけない時がありました(※書道の授業です)。
クラスメイト全員が苦悶の表情を浮かべながらもその拷問を耐え抜き、何が起きたのか理解できないままに着席すると、その教師は紙粘土細工のような笑顔を浮かべながらさも嬉しそうに「とても上手なとんびさんがいたのでお手本を見せてもらいましょう」か何か言い放ったかと思うと数名を選出し教室の前に集めました(※書道の授業です)。
私は見事「上手なとんびさん」として選抜メンバーに選ばれたので、同じく選ばれた他のとんびメイトと前後に並んで列を組み、再び教師の歌う金切声の『とんび』に合わせて、「上手なとんびさん」として教室を死んだ眼差しで練り歩きました(※書道の授業です)。
今回の裏書きを書くにあたり、数十年ぶりに『とんび』を聴いてみたのですが、そのとき受けたトンハラ(とんび・ハラスメント)のせいか、いくら音量を上げても私の耳には何の音も聴こえてきませんでした。

・そらたかタカだったんだ?
⑥金太ロボ神(スーパービックリマン)【ふんどしのしたいき水玉みずたまパンツだったんだ?】の【だったんだ?】だけ拝借。
童謡『とんび』の「空高く~♪」を歌ってる最中に「とんびじゃなくて鷹だったんだ?」と気づいた感じです。かなり苦しい流れですね。
シールのもとになった月麿の「金太郎」をひと目見て「目つきがヤバすぎる…絶対にシール化したい!」と決心したものの、金太郎と鷹が戦うエピソードの出典どころかそういう場面を書いた一文すら見つけられず、裏書きを書くのにえらい苦労しました。その苦しみが裏書きの無理やりな展開に反映されています。

くまでもとらでも雷様かみなりさまでもドッカラでもかかってドスコイショ〜
これまで文芸作品の中で、金太郎は様々な動物その他と格闘を繰り広げてきました。熊、大蛇、大鯉、つよきけもの、妖怪、天狗、雷、大入道などなど。そのすべてに余裕で勝ち続けてきた金太郎は人類最強かも知れません。

童話どうわ角界かくかい横綱よこづな金太郎きんたろう今日きょうって十万連勝じゅうまんれんしょう
⑥金太ロボ神(スーパービックリマン)【ロボ相撲すもうかい横綱よこづな金太きんたロボじんは、今日きょうって10万連勝まんれんしょう!】から拝借。
10万連勝!って数字の設定が安易で良いですね。
先に書いたように月麿の「金太郎」は資料がなかったので深く編み上げることができず、ここでも解説すべきことが特にありません!これも『とんび』の呪いでしょうか…。


【F】金太郎(歌川芳艶)~本朝武者鏡より~

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大蛇うわばみ従者じゅうしゃ獣者けだもの丸呑まるのみされて
幕末から明治にかけて出版された豆本で金太郎は当たり前のように大蛇と戦いを繰り広げています。調べた限りではルーツが見つけられなかったのですが、江戸時代の浮世絵にもよく出てくる場面なので、金太郎が大蛇と戦うことは既に共通認識としてあったようです。
浮世絵師で大蛇と言えば・・・芳艶です(テストに出ます)。
芳艶も金太郎を好んで描いた浮世絵師の一人でした。雷様を踏んづけている『快童丸』(下図 ↓)もかなりかっこよくてシール化の候補に挙がっていたのですが、VS雷様は芳年に譲るかたちでVS大蛇の方をシール化しました。

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いか心頭しんとうさきがけサカリの金太郎きんたろう
ここはただの言葉遊びなので、「新党さきがけ」がどういう政党だったかは関係ありません。「真っ盛り」はマサカリにかかっています。

大斧マサカリかついでったナシの体当たいあたりだっ!!
④金太ボット【紅潮こうちょうホホにカツをったなしの体当たいあたりだっ!!】から拝借。地味に「かついで」と【カツをれ】もかかってます。
裏書きに使えそうな事柄を検索して探す中で、1992年に放映された『まったナシ!』という相撲ドラマを久し振りに思い出したのですが、森高千里の『私がオバさんになっても』が主題歌だったと知ってビックリしました。すごくどうでもいい話ですね。

蛇口じゃぐちひねりからアギトつかみ土俵際どひょうぎわいっぱいめて口裂くちさき~!
金太郎と大蛇の戦いの様子を想像して、その対戦を中継するつもりで相撲の技の名前ふうに言葉を並べてみました。決まり手は口裂き…まあ友だち丸呑みにされてますから。蛇が悪い!


【G】金太郎(月岡芳年)~和漢豪気揃より~ ※バラ在庫あり

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けだものたちとの飯事 ままごとあそび雷雨 らいう邪魔じゃまされキッチーンとあたまにきた
「けだもの」という読みは童謡「金太郎」の歌詞に使われていて印象的だったので度々使っています。
この場面の金太郎は、ままごとを邪魔されて怒っているので、頭にきた音は「カチン」ではなく「キッチン(台所)」にしました。

動物たちと遊んでいるのを雷雨に邪魔されて怒った金太郎が空を睨んで文句を言うと震え上がった雷様が落ちてくる、というエピソードは以前紹介した『きんときおさなだち』から登場します。

この作品以前は「鹿・狼・猪を引き裂きて積み重ね」たりしていた金太郎が『きんときおさなだち』から動物たちと仲良しになります。
動物たちと仲良くなった分、彼らの代わりに金太郎の怪力っぷりを読者に示すための生贄として登場したのが雷様だったり、芳艶が描いた巨大な蛇だったりしたのでしょうか。
関連して『きんときおさなだち』では、金太郎が動物たちの引く祭礼の山車に乗って山中を練り歩く場面が出てきますが、富国強兵政策が盛んになる明治時代に刊行された豆本になると、金太郎が動物を引き連れ行進する「いくさごっこ」という表現へと変化します。
これは絵本も含めた幅広いメディアが思想教育に利用されてきた事がわかりやすい一例ですが、ひとつの物語が語り継がれていくとそれぞれの時代の雰囲気も見えてくるのが興味深いですね。

金太きんた空睨そらにらハウルと雷様かみなりさまビビり神解ズッコケ!
「吠える」と遠吠えを意味する「ハウル(HOWL)」が上手くハマったな、と満足しています。
「神解ケ」に関しては雷が落ちる事を「神解かみとけ」と表現するそうです。日本語の豊かさは発見が尽きません。

強烈きょうれつアクションで金時山きんときやま界隈随一かいわいずいいつ怪力かいりき
③聖金太魁【合聖がっせいアクションで天聖界てんせいかい随一ずいいち怪力かいりきし】から拝借。
「金時山?足柄山じゃないの?」と思うかも知れませんが、Wikipediaによると「足柄山(あしがらやま)は、金時山から足柄山地の足柄峠にかけての山々の呼称である。山域の呼称であり、足柄山という単独の峰は存在しない。」ということです。
なので「金時山界隈」=「足柄山」ということになります。

「強烈アクション」はもとの浮世絵を見た時の印象です。この「金太郎(芳年)」シールと「武松(通俗水滸傳)」のシールを同時に購入してくださった方がいたのでもうバレているのだと思いますが、実はポーズがほぼ同じです(笑)

さえつけて仕置ポカスカジャン!!
芳艶の金太郎が大蛇を懲らしめたのは友達を丸呑みにされた仕返しでしたが、こちらは単に金太郎のわがままが炸裂してるだけです。なので「勇壮!」というよりも「てへぺろ☆」みたいな、後味の軽い響きにしたくてポカスカジャンにしました。


【H】金太郎(歌川国芳)~列猛傳「足柄金太郎」より~

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・はいどうどう♪くまおどりの稽古けいこ
「くまにまたがり おうまのけいこ はいしどうどう はいどうどう♪」
犬みたいな子熊の前足を取り後ろから踊らせて楽しんでいるような金太郎の姿から、童謡『金太郎』の歌詞をもじりました。

仲良なかよ小好 こよおおきくそだ
清長、歌麿に次いで国芳も「金太郎」浮世絵をたくさん描いています。武者絵を得意とした国芳ですから大半は勇ましい金太郎ですが、その中であえて可愛らしいこちら「列猛傳」の金太郎をシール化しました。
下の作品年表を見てもらうとわかるのですが、この金太郎は国芳が還暦を控えた晩年に近い時期に描いています。

年表new_国芳2

それ故に若いころよりも落ち着いた態度で観察したような、子供に対するより温かい眼差しを感じて好きなのですが、皆さまはどう思いますか?

もり平和へいわキャッチしてきんだキンダーパワーで困難トラブルをハネばす快童かいどうどう♪
①金太ロボ神【星目ほしめクロスでキャッチしてきんだへッドパワーで悪魔あくまをハネばす怪力かいりき天使てんし。】から拝借。
出ました!詳細不明の【きんだへッドパワー】。ここにドイツ語で幼児を意味する「キンダ―」を加えて力持ちの子供という部分を強調してみました。
ちなみに、幼子のイメージが強い金太郎ですが、山姥の子ども=快童丸として文芸作品に登場した当初は10代後半~20代前半の青年だったようです。
国芳は全裸の金太郎を好んで描いていますが、もしも青年の金太郎だったらちょっくら危険でしたね。

・ハイとうとうみやこ頼光らいこう四天王ビッグ・フォー!!
「ハイとうとう」は冒頭の掛声「はいどうどう♪」と直前の「快童どう♪」の流れを引き継いでいます。からの「ビッグ・フォー!!」で、ゴールイン!ヒャッハー!!!というノリで〆てみました。

・・・・・

はい。駆け足でしたが、これで『金太郎だらけの浮世絵マン』セットとして販売したシール全ての解説(雑感?)はおしまいです。
もしかしたらもう一回使って、業者のミスで発売できなくなった幻のシール「金太郎(歌麿)」の裏書き解説と、参考資料として大変お世話になった金太郎学の聖典バイブルを紹介するかも知れませんが、ひとまずこれにて終了です。

最後まで読んでくださった方がいらっしゃいましたら誠にありがとうございます。長丁場お疲れ様でございました。


またこんど!!

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