あの日のこと。、

お久しぶりです、みけです。

しばらくバタバタしていてnoteを離れてました、すんません。

実は、今年の五月末に妹のように大切な友人が用水路で自殺しました。

今までの人生で感じたことのない大きな動揺や虚無、無力感を覚えました。

十月に入ってやっと振り返れるほど落ち着いてきたので、覚書として。

いつもとは違ってかなり真面目な文章になりますが、それでも許してくださるなら、是非ともお読み下さいませ。


※今現在、激しい希死念慮や鬱状態にある方、精神的に揺らぎを感じている方はバックして下さい。



五月二十六日 夜九時


その日もシャワーをいつも通り浴びてた。

呑気に音楽なんて聴きながら。

LINEが来たのは気付いたけどその場で開かずお風呂あがりに読もうとのんびりと汗を流し続けてた。



夜十時


シャワーから上がって「さて、肌のケアをしつつメール整理」とラインを開く。

まだ髪も乾かしてない。

熱った身体に麦茶を流し込んでラインを開くと


「みけちん、落ち着いてね。

カナちゃん、自殺した。」


意味が分からなかった。

目に飛び込んできた「自殺」という単語の意味を理解できない。

頭が、身体が空っぽ。

時間が、空気が固まって動かない。

もう一度、意味を理解するために読み直した。


「カナちゃん、自殺した。」


自殺?自殺って自分で死ぬことだよね?

そうだったよね、確か、、、。


息を飲んでもまだボンヤリとしてた。

「頭を動かさなきゃ、自分。」

頭の中にいる冷静なもうひとりの自分が呆けた自分に言い聞かせる。


取り敢えず、お母さんに伝えよう。


そう思って震えながら転げるように階段を降りて、居間へ続く廊下の半分辺りから悲鳴のような声で


「お母さん、カナちゃん亡くなっちゃった!!!」


と母の元へ走って行く。


母はカナが自殺する前にあった騒動(カナが海で入水自殺しようとしてたのを通報して訳半日、我が家の玄関で警察官と二人でカナとやり取りしてるのを見てた)を知っていた。


「そっか、しょうがないよ。

あんたはやることきちんと最後までやって、後悔しないで済んだんだから、良いんだよ。

もう仕方ないよ」


そう言ったまま、メソメソと泣く私を眺めていた。



私はいつまでも泣く訳にはいかないとその場で涙を拭って自室に戻って机にスマホを置いて大きくため息を吐いて覚悟を決めた。


「よし、もう今回のことと徹底的に対峙してまたこれを越えよう。

これすらも強さに変えて生きてかなきゃどうしようもない、よし。やるぞ。」


そう言い聞かせて腹を括った。


その後、連絡をくれた友人に電話をして事実確認をすると共に「カナちゃんのお母さんが娘のことを少しでも知りたいから電話を」という伝言を受け、カナの母親とも通話して。


カナの母親は泣き崩れていたものの、気丈に「あなたはどうかこっちできちんと最後まで生きててね」と私に声を掛けて下さった。

私はと言うと、本当に月並みな言葉で自分でも溜息が出そうなほどではあったが「どうかお身体を少しでも休めて下さいませ」「どうかカナの分までこちらで一緒に生きていきましょう」という言葉と「今現在、自分自身ひどく動揺していてまだ訳がわからない状態。なんと声をお掛けすれば良いのか、言葉が出ない」と率直な気持ちを伝えて通話を終えるしかなかった。


こんな時は無理矢理な励ましなんて要らないってのは自分が一番良く知ってた。


「なんとお声がけすれば良いか分からない」

「私もひどく動揺している」


この言葉にある意味で救われた人間だから。



どうしようもない気持ちを引きずって震える手で髪を乾かして肌にテキトーにニベアを塗ったくって、その晩は眠れなくなるだろうと思い、徹夜するつもりで深夜三時くらいまで起きていた。



五月二十七日


朝居眠りから起きた後、また友人と連絡を取る。

互いに「こちらでまだ生きていようね」と確認し合うように、互いにストッパーとして命を此岸で堰き止める為に。


その後、数日かけて一連の儀式やその他必要なことについて事務的な連絡をやり取りしつつ、各々で葛藤・煩悶。


こんな時は一人で誰にも会わずに部屋に篭りたくなるもので。


莫大な虚無感や無力感、脱力をどうしていこう?

私は今まで散々死にたがってなんども自殺未遂をしたけどもう、私には生きる以外の道は残されていない。

この経験のない厚く高い壁をどう壊していこう?

あの子は何を考えて感じていたの?あの子の心に何があったの?


そんな終わらない問いを延々、堂々巡りだと知りつつ自分に問い続けて。


その間にも外から聞こえて来る明るい声に「なんでカナが死んだのにあなた達は生きてるの?」と嫉妬をしたり、「カナ、なんで死んだの?あんた何やってんの?何でこんなことしたの?」と故人に対して怒りを向けたり。


そういう、どうしようもない気持ちと共に日々を塗りつぶして最期の日までやり過ごした。


あんな砂を噛むような気持ちで葬儀までの数日を過ごしたのって、初めて。



五月三十日


火葬式当日。


朝起きてまずは倒れぬようにと無理矢理お腹にご飯を詰め込む。

昔なら食べたくないとシナッとした葉物野菜のようにくたびれていただろうと思いつつ、今日一日をしっかりと倒れずに過ごす為、と無言でご飯をかき込み続けた。


私も強くなったものだなぁ、こんなことで自身の成長を感じざるを得ないのはとても悲しい。


そんなことを考えながら式に向かう支度を始めた。


一緒に参列する、一番最初に連絡をくれた友人に


「今支度してる。

発達障害の極み過ぎてストッキング四枚破いたンゴね(´◉◞౪◟◉)」


「みけちん不器用すぎて草。」


なんて下らないラインをしながら。



こうでもしないと身体が拒否反応を起こしてトイレから出られなくなる。

こうでもしないと気持ちを保てない。


ストッキング四枚をダメにしつつも何とか用意を終えて父の車で最寄り駅まで送ってもらう。


最寄りから電車で約一時間、音楽を聴き、車内でパンを貪る男性に心の中で「生きてて偉い。しっかり食べてしっかり生きてね。パンは美味い?食べることは生きること。」なんて声を掛けながらどうしようもない虚しさと怒りと闘いつつ。


あの子はなんで死んだ?

あの子の心に何があった?

私、なんで歳下の子の葬儀にこんな形で出ないといけないの?

カナ、こんな形で葬儀の準備なんてさせないで。


そうこうしてる間に目的地。

「犬の首輪みてぇなパールネックレスじゃん」

と心の中で自分に吐き捨ててネックレスを着けて。


斎場までのタクシーの中でもぼんやりと外を眺めるしかできなかった。

明るく会話なんて出来やしなかった。


タクシーを降りると広大な緑を背に重厚な巨大な灰色の建物。


「◯◯カナさんの火葬式、ここで大丈夫ですか?」

係員に尋ねつつ、心の中では「こんなこと聞かせんじゃねぇよ、カナ。」とカナに呟いていた。


待合室で友人の到着を待つ間、緊張で吐き気と震え、頭痛、寒気、腹痛と闘っていた。


また身体化したか。

怖い、怖いね。けど闘おうね。


自分自身にいいきかせて。

こんな気持ちで葬儀の時間を待つのも初めて。

祈るように友人からのラインを待って、来るとすぐに友人の元へと飛んで行った。


友人と二人で玄関前の広間で待つ間、どうしようもない身のない空っぽな会話をしつつ、二人でずっとカナの到着を待った。

私達の他には約四十名ほどの参列者が集まっていた。

皆、ああでないこうでないとどうしようもない時間をやり過ごす為の会話をしていた。


「カナは友達が多いなぁ、こんな多くの人を置いて行くなんて、、、、、」


そんな風に思っていると、一台の白いミニバンが入って来た。

遺族、参列者が一斉にその車の方へ向かう。

グッと拳を握り、眉間に皺を寄せ、奥歯が割れない程度に歯を食いしばり私も友人と向かう。


真っ白な重厚な美しい棺。


「これが  カナの    棺    」


既に倒れそうになってる友人の真横で声を掛けつつ、棺の後について告別スペースへ。


「私、倒れるかも。その時はよろしく」

そう事前に伝えてきた友人は案の定、告別スペースに入った瞬間に卒倒しかけた。

こう言う時の為に

と私がとっさに片手で腕を掴む。

向こう隣の人も支えて下さっていたのがなんだか心強かった。


火葬式を主催するカナの元恋人、喪主の挨拶が終わり、いよいよ最期のお別れ。


カナの棺の周りで思い思いに別れを告げる関係者を見つつ自分達もお焼香を終えてカナの元へ。



カナは生前と同じ、お人形さんのように、お姫様のように可愛くて優美で美しくて可憐な姿で眠っていた。

パステルカラーの彼女らしい柔らかな花に埋もれて「カナ、おはよう。起きて。」そんな声を掛ければすぐにでも眠い目を擦ってムニャムニャ言いつつ起きて来そうな顔をして。


カナの鼻腔の周りに少し血が付いてるのと、真っ白なビスクドールのような顔と真っ黒な艶やかなボブカットが目に入る。




「なんで死んじゃったの?!?!?!こんな形で会いたくなかったよ!!!!!!!!」




半分悲鳴の混ざった怒鳴り声を上げた。

涙が一粒ぽろっと自分の頬を伝ったのがわかった。

こんな時でも一応、心なんて動いているんだ、へぇ。


それ以上カナの顔を見ることができなかった。

生前の温かなカナを憶えておきたかった。

必死に数珠を握って手を合わせる。



バカヤロウ、手を合わさせやがって。

こんなことあんたにしたくなかったよ。

大バカヤロウ。


何かを振り解くかのように壁際へ足速に向かう。

友人が私に縋り付くように腕を掴んでくる。

ハッとしてまた友人の腕を握り返して支える。



棺の蓋が係員によって閉められるのをただどうしようもない無力感に苛まれつつ見て、棺の後について火葬炉前に向かう。


火葬炉は前室が設けてあって焼け爛れた炉が見えないようになってる。

まるでタイムマシンみたいに近未来的で、ここならカナは怖くなく済む。

少しだけホッとして棺が炉に呑まれていくのを見る。



「最期のお別れです。皆様、合掌をお願い致します。」



係員の低い重い声がホールに響く。

私は右手に友人、左手に荷物を持って頭を一瞬だけ下げる。

転倒したら大変。

そう思ってすぐに正面に向き直した。

自分以外の関係者全員が深く頭を下げている。




これが  カナ  の  最期  

これが  自殺での   最後      なんだ  



勝ち目のない絶望と無力感、脱力に呑み込まれた。



その後のことは本当に勢いで終えた。


親族への友人の代わりの挨拶、自分自身の親族への挨拶、式を主宰したカナの元恋人達への挨拶。


終えると友人を伴い足速にその場を後にして駐車場の友人の車まで向かった。


濁った白い空に映える木々の緑

汗ばむような風


左腕に感じる友人の温かな腕の温もりに安心して空を仰ぐようにして、泳ぐように友人と歩いた。


こんなにも友の体温に安堵したことがあっただろうか?

この瞬間をきちんと魂に刻みつけて死んでも忘れないように。

この先も困難があっても友人らと手を取り合って生きて行くとカナに誓うように。


友人を無事に車まで送り届けた後、タクシーに乗り駅まで向かう。



「こんな暑い日じゃ黒い服で大変でしたね。」

「友人の、最後なので。

、、、、友人、自殺したんです。」

「それはそれは、長く悩まれましたね。」



そんな会話をして最寄りで降りて。

運転手の「それはそれは、長く悩まれましたね。」という故人を労うかのような優しい言葉に心が少し緩んだ。


ホームに着いてベンチで座ると共に


やっと一人になれた


とホッとして心の整理として気持ちを書き留め始める。


「カナはお人形さんのように」


そう書き始めた瞬間に大粒の涙が頬を伝う。

やっと一人きりになれた。

きちんとなんとか越えられた。

きちんと送ることができた。

安堵の気持ちと共に崩れ落ちるように泣き続けた。

電車の中でも人目を気にせずイヤホンを耳に突っ込んで音楽を流してひたすら大粒の涙を流し続けた。

たまに嗚咽が漏れたけれども皆、イヤホンを突っ込んでスマホを眺めているから大丈夫と泣き続けた。

一時間くらいずっと泣き続けた。


訃報を聞いた日からずっと一人で無意識に突っ張ってきた。

ガチガチに気持ちを固めて全ての女性性を封印して男のように気持ちを固くして崩れぬように、友人を支えられるように、最後までカナをしっかりと見送れるように。



その日は眠るまでパンッパンに腫れて痛い目でTwitterで思いを綴った。












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