対価を払うという態度——続・編集後記
文:『Melt』編集部(A.D)
『Melt』Vol.2は1,000円で売る。
この結論に至るまで、編集部内で何度も話し合いを重ねた。芸工祭での販売にあたり、価格の設定は重大な問題点として浮上した。果たして、私たちはこの雑誌をいくらで売るのか。
学生はお金がない。私自身も学生だから当然分かっている。アルバイトで必死で稼いだお金も、生活費や制作費ですぐになくなる。娯楽に使えるのはほんの一部だ。
現在の山形県の最低賃金は(値上げしたとはいえ)1,000円に届かない。1,000円あれば、Netflixで1ヶ月間動画見放題だ。学食のカレーライスを3杯食べてもお釣りがくる。
1人でも多くの人に読んでほしい。
それが編集部の願いだ。そりゃそうだ。執筆者の学生が頑張ったのは知っている。編集も校正も時間を掛けた。せっかくの制作物だ。みんなに読んでほしい。
ならば、無料で配布すればいい、というのは1つの意見かもしれないが、そうはいかない。雑誌はタダでは作れない。
特に、Vol.2はVol.1に比べて学生の原稿が多い。プロ(教員)にも依頼している。その全員に原稿料を支払っており、もちろん、印刷費やその他経費も掛かっている。何よりも、「多くの人間が時間と労力を最大限費やしたもの」を、あたかもチラシのようにばら撒くことはできない。
創作者のあなたなら分かってくれるはずだ。
別に、私たちはお金儲けをしたいわけじゃない。というか正直、自主制作はお金儲けには向いていない。手元に残るお金が欲しかったら、編集や校正の時間をアルバイト等に費やしたほうがいい。その方がよっぽど効率的にお金が手に入る。
だが、違う。私たちは利益以外のものを求めて制作に臨んでいる。それは、Vol.2に掲載されている序文や編集部員が書いた続・編集後記を参照してもらえるとよく分かると思う。
私たちは何かに突き動かされていた。衝動だ。利益以外のものを求めて制作したものに、値段を付けなくてはいけない。仕方ない。これはもう、避けられない。
繰り返す。
『Melt』Vol.2は1,000円で売る。
私たちはやれることはやった。後は来場してくれる人、読者の判断に委ねよう。それまで、最大限、私たちのことを知ってもらおう。そう決めた。
これは態度の問題だと思う。価値のあると思ったものに対価を払う。その態度だ。それは何も今回に限った話ではない。絵画も、小説も、音楽も、映画も……何だってそうだ。サブスクリプションや安価な代替品によって、私たちはそれらが費やした時間や労力、本当の価値から目を逸らしてはいないだろうか。創作を行う立場にいる人間こそ、その態度を他者に対しても同じように向けるべきではないだろうか(もちろん、自戒の念も込めて)。
もし漫研に少しでも興味があるなら、購入を迷っているなら、1度、ブースに来てみてほしい。その目で見極めてほしい。対価として1,000円を払う価値があるのか、あなたの目で吟味してほしい。見本を置いているから、手に取って、触って、ページを捲ってほしい。ブースには編集部員が常駐している。一緒に話をしよう。分からないことがあれば何でも聞いてほしい。
そして、もし、あなたが私たちの雑誌に価値を感じてくれたら、対価を払ってくれるのであれば、本当に嬉しい。励みになる。
「作って良かった」
心からそう思える。
あなたの態度を、私たちは全力で受け取る。
※芸工祭当日は『Melt』Vol.1、Vol.2それぞれ1,000円で販売を行います。なお、Vol.1とVol.2のセット販売を1,500円で行います。詳細は追ってツイートしますので、しばしお待ちを!
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