『続く』——続・編集後記

『Melt』編集部の学生がVol.2の制作を振り返る「続・編集後記」。本誌で書ききれなかったことや今改めて思うことをnoteに投稿します。

文:『Melt』編集部(S.R)

まずは宣伝。わが東北芸術工科大学芸術学部文芸学科では『文芸ラジオ』という文芸誌を制作して全国の書店やAmazonなどで販売している。これは企画立案、各種依頼や記事の執筆、校正作業などの雑誌編集にかかる作業のおよそほとんどを学生が主体となって行うプロジェクトである。
東北芸術工科大学文芸学科|文芸ラジオの紹介 (tuad.ac.jp)

毎週水曜の17時10分に編集会議が始まり、忙しい時期は19時くらいに終わる。だというのにもらえる単位は1つ。わりと大変な作業である。私は1年生からこのプロジェクトに参加し、3年生で制作した『文芸ラジオ7号』では学生編集長として参加した。

7号はさまざまな人の手を借りて、歴代最高売り上げを記録した。今後も記録を塗り替えられたくないので、この記事を読んだ人はぜひ7号をAmazonでポチってほしい。

さて、私が『Melt』Vol.2の制作に参加したのは、声をかけてもらったからである。誰に誘われたかは忘れたけれど。立ち上げメンバーの3人が集まって何かしていたのは知っていた。そもそも彼らは個人で雑誌などを作っていたり、漫画を描いてジャンプの新人賞を受賞したりしていた。そんなメンバーが集まっているのだから、私がいる必要性はないと思った。
だから、誘いを一度断った。

冒頭の宣伝は、私の小心さの表れでもある。私という人間の消極的積極性。一人でなにかを成しえる人間ではない。それは今までの人生経験で分かっている。可能性を捨てたわけではないが、追い込まれない限り一人でなにかやってやろうとは思わない。しかしだからこそ、色々な人と積極的に関係性を作って、力を借りる。そういう生き方の人間。『文芸ラジオ』は、教員やその他の学生、多くの人の力を借りる。それによる成果の一部は自分のものとして誇ることもできる。『文芸ラジオ7号』の成果は、関わってくれたすべての人の成果であり、まぎれもなく私の成果でもある。

だからこそ、怖かった。正直、3人が怖かった。その活動に参加することが怖かった。なぜなら彼らは自分とは違う。やりたいことがあったら、まず自分一人でも動き出せる。そして妥協せず作品を完成させ、結果になっている。そんな強さがある。私にはない力がある。勇気がある。根性がある。
おおげさだと思うかもしれないが、本気でそう感じた。もはや私の人間性ゆえ、ご了承願う。

大学入学を機に、私は変わろうと思っていた。積極的に色々なことに挑戦しようと。一瞬のためらいのせいで参加を見送り、わずかな後悔を残してしまったことが高校までの人生で多々あった。ゆえに1年生のころから学祭の実行委員会に入ったり、『文芸ラジオ』プロジェクトに参加したりした。それらを経て、だいぶ自信がついてきた。

それでも尻込みするくらいには、私にとって立ち上げメンバーの3人は大きく、恐ろしく映ったのである。しかしそこで原点に立ち返る。こういうところに飛び込むことこそ、私が入学時に志したことではないか。

恐怖とは新鮮さと表裏であると私は考える。思い返せば入学当初、未来への期待感以上に未知への恐怖を感じていた。4年にもなると大学が立派にホームになる。新鮮さはなくなり、すなわち恐怖はなくなる。リラックスできる場所であることはいいことだが、刺激が薄れていくことも確かだ。

だからこそ私は、『Melt』制作への参加を決めた。怖いと思うからこそ、参加する意義があった。

一緒に活動することで、3人が自分にはないものを持っていると改めて実感した。同時に、私の役割も自覚できた。3人が作ったベースの上で、組織の中で、先導の下で、動く。120%の働きをする。諸々終わった今、それができたと思う。

3人とも、悩み、苦しみ、挑んでいた。私が加わり4人で色々話す機会もあったが、意図的に俯瞰でその会話を見ていた。意見をぶつけて悩みあい、方針を定めるために苦しみながらも手探りで挑んでいた。その内容のすべてを肯定できるわけじゃない。私にも私の意見があるし、それをぶつけることもあった。ミスも間違いもあった。

彼らの活動は大学でも噂になっている。すごいとか、やばいとか、そういうありきたりな言葉で形容されている。でもそれは、人間的かつ地味な葛藤や苦悩を無視することに他ならない。手放しで誰かをほめることは、無責任さと、無関心さを孕む。

制作を通して、私は改めて彼らのすごさを実感した。行動力、実行力、知識、経験、その他もろもろ、どれも私にはないものだ。けれど同じくらい、彼らの人間くさく、地味な部分も実感できた。すべてを知っているとうぬぼれるわけではないが、少なくとも彼らも苦しみ、喘ぎながら歩き続けているのだと。

だから私は、彼らをかっこいいなと思うのだ。

私の人生は続く。新しいところへ進み続けていく。また恐怖と向かい合う。そこまで培ったすべてで一歩を踏み出していく。

大学生活、最後の挑戦。この3人に立ち向かって、食らいついて、なんとか今があって、よかった。

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