[編集者座談会]『Melt』Vol.2の振り返りと漫研の行方(前編)

『Melt』Vol.2の制作に携わった編集部の学生が、制作の感想や編集後記には書けなかったことを座談会形式で語り合いました。(前編)

参加メンバー:佐藤タキタロウ(洋画コース4年)、和田裕哉(文芸学科4年)、足立大志朗(文芸学科4年)、鈴木龍之介(文芸学科4年)、佐藤雪名(文芸学科3年)、中居望々香(プロダクトデザイン学科2年)、山田風人(日本画コース1年)
構成:編集部


制作を終えて

和田裕哉(以下、和田):現段階としては、入稿までが終わって一段落という感じです。だいたい5か月間くらいありましたけど、みなさん、体感的にはどうでしたか? 

佐藤タキタロウ(以下、タキ):Vol.1を経験してるから、それに比べると今回は短かったよね。本当におかげさまで人が多かったからさ、いろんな人が書く仕事やってくれたからね。すごい楽だったし。俺、自分の仕事をしてたからさ。気づいたら出来上がってて、「えっもうできたんですか!」みたいな。

山田風人(以下、山田):思ったよりあっという間でした。

中居望々香(以下、中居):私も同じです。6月に初めて漫研の会合に参加して、「10月の芸工祭で売る」って言われて。ああ、めっちゃ長いじゃんって思ってたんですけど、いざここまでくると本当に短かったなあっていうか。特に私は9月に結構作業に関わらせていただいたので、そこが特に短く感じました。

足立大志朗(以下、足立):忙しかったねえ。

鈴木龍之介(以下、鈴木):大変でした。

和田:完全にストップしてた時間はなかったと思う。今回大きかったのが編集部を作ったことなんですよね。人数も集まったし、編集をやりたいっていう子もいたから、じゃあ別途で編集部作ろうってなって、プロの真似事じゃないけど著者に担当編集をつけてやるか、みたいなことにもなった。それが組織として、うまく回ることができた大きな要因かなと思うね。

タキ:担当もつけたことも大きいけど、あとはやっぱり対面で何かやるって場面が増えたよね。

鈴木:学校で会って話すって大事だなっていうのは多分この数年、いろんな人がひしひしと感じていることだと思うけど。特に編集とかって、作品の細かいニュアンスって言葉じゃ伝えきれないところが大きいじゃん。相手の表情を見たりとか声のトーン聞いたりとかしながらなんとなく「こっちかな」っていう舵を切れたのは対面で会えるようになったからっていうのも大きいのかなというふうには思うんですよね。

和田:今回は文章がメインで、しかも編集部の人が著者の学生に付いて、事務的な連絡の中間地点もこなしつつ、内容を見ていくっていう役割を行いましたが、どうでしたか?

佐藤雪名(以下、雪名):編集後記にも書いたんですけど、私がやっていいものなのかという意識が前に前に出ちゃって。

足立:基本はその人の文章があるからその人の書きたいこととか言い回しを残しつつ、けど修正したほうがいいんじゃないっていうところは発生してしまうので。そこの折り合いをね。でもなんか面白くなかったですか? 制限があるからこそというか。両方のバランスをとるっていうのが校正の醍醐味という感じがしましたね。当然、僕も指摘によって気づくことはあったので、そこはすごく助かったところがありました。

和田:山田くんは、特に校正で事実確認とかを多く担当してもらったけど、どうでした?

山田:そうですね。文章の良し悪しみたいなものを判断するのに自信がないので。正解不正解がはっきりしている作業のほうが、個人的にやりやすかったですね。

和田:めちゃめちゃ助かった。すごく大事なんだよね、そこが。今回は引用のルールとか誤字脱字とか、わりと厳しく見たと思うんだよね。もちろん人数がいたからできたっていうのはあるんだけど。これ、悩みどころではあって、学生の作る同人誌だから、どこまで追い求めるべきかっていう。プロと同じレベルにするのは無理でも、そこに近づけることはしたいなと思っていたから、みんなが協力してくれてありがたかったです。

鈴木:自分たちが世に出すものだからって、現実的なところの折り合いをつけつつ。三校、念校をしているところを見ていたんですけど。すごいプライド高くやっているなと感じたし、じゃないとこの短期間でこんな形にならなかったし、それに引っ張られて3年生とかもいろいろ意見を言ってくれるようになったりしたし、というのがあると思う。

和田:初校、著者校、再校、三校、念校と何回もゲラを刷ったから、それだけ印刷代が必要だったね。だけど、ここはあまりおろそかにしなかったよね。

足立:組むのはPCだったので、紙に刷る大切さは感じたよね。改めて。

和田:これでバンバン誤字脱字みつかったら恥ずかしいよな(笑)

タキ:でもそれは特色なわけでさ。編集者って人たちがいて、実際に書いた作者としての名前を出している人いるわけだけど。校正って作業を通して、確固たるものにしてくれるわけじゃん。校正っていう作業によってはじめてみんなで作ったことになる。

足立:世間の出版物って、まずは作者の名前が表紙に出て、編集者は一部を除いてあんまり表に出てこない。そういう意味では、同人誌や自主制作物は、編集者が前に出るというか、わりとそういう力があるのかなと思っていて。だからこそ、編集の立場を経たからこそ、いざ自分の創作に結び付けられることがあると思うし、生かせるところがあると思う。そういう意味では編集も校正も含めてクリエイティブなんだと思うんですよね。

中居:私は再校期間に参加して、自分でも校正したし、マンガレビューはデザインを担当して、校正をしてもらったんですけど、第三者の目が入ってくれてありがたかったです。あと批評に関わったのは校正だけだったんですけど。『Melt』は漫画批評がメインだったので、もしかしたらそこに関わらずに終わっちゃうかなと思ったんですけど。関われてよかったなと思います。

正しい揉め方

和田:編集やってて印象的な出来事とかあった?

雪名:本誌に掲載する漫画を決める会議ですね。その時に結構意見が分かれたじゃないですか。それで揉めて揉めて。それもなんか編集会議っぽくていいなって後になって思いましたね。

和田:最初から漫画は5本っていうのは決めてた。あくまで今回は批評がメインだから、漫画で紙面を埋めつくすのは方針と違うから。事前に投票だけして、ちょっとコメントつけて、それを元に会議、対面で話し合うと。

タキ:「自分だったらこうするなあ」とか「自分だったらここは絶対にこの人には賛同できないな」って思っていたんだけど、あれが一番創造的な時間だったのかな。編集って事務的な行為なんですよね、基本的には。でもやっぱり選ぶっていう、編集会議をやってる時間が、個人的には編集者側が創作にすごく携われるし、かつ携わらなきゃいけないっていう責任を感じるようなところとして、正しい揉め方ができたと思って。正しい揉め方っていうのもあれだけど。

和田:しかも、完全に外から切り捨てるんじゃなくて、担当編集として編集会議に参加している側面もあるわけじゃん。ネームをずっと見てきて、話を最初から見てきた作家の作品を会議にかけるって側面もあったから。

タキ:自分が担当編集の作家に対しては、ちょっと態度が変わってるなあっていう風に見てるのが一番楽しかった(笑)。

鈴木:中居さんとかも担当あって会議に臨んだわけだけど、どういう心持ちで挑んだ? 「絶対に通してやろう」みたいなのはあった?

中居:できれば通したかったし、めちゃくちゃ自分の担当を擁護してた記憶があるんですけど。やっぱり他のみなさんよりちょっと、漫画の知識は劣っているので、うまく自分の担当さんの漫画の魅力を伝えられなくて、ちょっと悔しかったなあ、と思ってました。

足立:編集部員によって、それぞれ見ているところが違ったっていうのが、人が多くいて良かったというか。編集部という組織があったことの効果というか。それこそやっぱり文芸学科の人間はストーリーを見ていたりするけど、絵を描いている人は当然、絵を見る。それはたぶんこれまでの規模だったら見れなかった部分だよね。視界が広がったというか。それこそ学科が横断的に活動できるサークルだからこそできたことなのかなっていうのがあって。それはすごくいい経験だったなと思います。

和田:美術科だけが作る雑誌でもないし、文芸学科の人だけが作る雑誌でもない。そうじゃなくなったところは、この掲載会議が一番象徴すると思う。

〈後編に続く〉


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