文芸棟の椅子に座りながら活動を振り返る——続・編集後記

『Melt』編集部の学生がVol.2の制作を振り返る「続・編集後記」。本誌で書ききれなかったことや今改めて思うことをnoteに投稿します。

文:『Melt』編集部(N.N)

漫研のポスターが学内に貼られはじめた頃、その存在にはすぐに気づいたのですが、そこから参加を決めるまでに結構時間がかかりました。学科棟の入り口に貼られているポスターを見るたびに悩んで、参加希望フォームを送るギリギリまで迷っていました。

漫画も小説も好きだけど、かといってたくさんの作品について深く語れるわけでもなく、編集について本格的に勉強しているわけでもなかったからです。迷いに迷って、最後は「でもやっぱ編集やってみたい!」と、勢いでフォームの送信ボタンを押しました。

初回の編集会議の日は授業中からずっとドキドキしていて、好きなK-POPアイドルのトンチキソングを聴いてから文芸棟に向かいました。入学以来一度も入ったことのない文芸棟はまさしく未知の世界でした。緊張すると記憶喪失になるタイプなので初回会議の記憶はあまりないのですが、「文芸学科の椅子は背もたれがあっていいな〜」と思った記憶があります。

漫研編集部としての活動の中で1番記憶に残っているのは、長時間に及んだ掲載漫画を決める会議です。私は編集部で唯一のデザイン工学部の学生なのですが、この会議で芸術学部に所属している人たちとの違いを感じました。

それは、意見の衝突を厭わない姿勢です。学科の演習でもグループで話し合いをすることはありますが、自分の主張を貫くことよりも円滑に話し合いが進むことを優先する空気がありました。肯定が波風を立てないためのツールになっていて、私はそれを不満に思っていましたが、「学生同士の話し合いなんてこんなもの」という諦めもありました。

しかし、編集部の会議はそんな私の諦念を吹き飛ばしてくれるものでした。上級生に忖度することも、多数決の雰囲気に流されることもなく何度も意見をぶつけ合うのです。今までの人生で1番意見が衝突して、1番満足した話し合いを経験しました。

芸術学部の学生と一括りにして語るのは大雑把かもしれませんが、自分の考えや感性にプライドがあるからこそ、他者との衝突を恐れずに忌憚なく意見を言える人が集まっているのではないかと思います。学部学科の垣根を超えた活動ならではの発見ができて良かったです。

思い返すと、編集部への参加は大学に入ってから初めての主体的な行動でした。2年生の私は、それまでとにかく与えられた課題をこなすのが精一杯で、毎日ほんのり苦しみながら無気力に過ごしていました。

「成長しない1ヶ月がこんなにも積み重なって、あたしはもう19になってしまった。」

私が1番好きな小説「ひーちゃんは線香花火」(朝井リョウ『もういちど生まれる』収録)の一文です。漫研に入る前、私はまさしくこの状態でした。イラレやフォトショを使えるようになっても、授業のレポートで良い評価をもらっても、「成長している」とは思えませんでした。単位修得に必要だから仕方なくやっているのであって、そこに私の主体性はないのです。

そんな消極的な学生の典型である私ですが、漫研では「出来ることは積極的に引き受ける」をマイルールとして数ヶ月間活動してきました。編集部としての活動は、間違いなく私を成長させてくれたと思います。

初めての漫画編集の経験、議論が白熱した掲載漫画会議、3日間の校正大会など、課題との両立は大変でしたが充実した日々を過ごすことができました。自分の不甲斐なさを感じる場面も多々ありましたが、先輩方のフォローのおかげで楽しく活動することができたと思います。感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

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