GERA禁酒番屋
GERAという配信アプリで
『まんじゅう大帝国の落語良いとこ1度はおいで』
という、落語の紹介や落研での思い出等々、僕らと落語周りの話を中心にする配信をやっています。
7月3日(金)更新分で禁酒番屋という噺についてお喋りしました。
以下、粗筋説明がてら実演したものです。音だとあんまり分からなかった、とか、たまたま今度5~6分で落語をやらないといけないんだよね!という人へ向けて。
↓↓
ある二人の侍が酒の席で喧嘩になった。ただの喧嘩なら問題ありませんでしたが、侍同士でございます。刀を振り回して大立回り、仕舞いには一方の侍が斬られて死んでしまった。もう一方の侍はというと、明朝酔いが醒めまして、「とんでもないことをしてしまった、殿に申し訳が立たない、、」と自ら切腹をしてしまった。大切な家臣を二人も亡くしてしまった殿様は大変に悲しみまして「このようなことが二度とあってはいかん。余の藩では今後一切酒を飲んではいかんぞ。」と禁酒令が出されます。門の所に番屋を設けまして役人を置き、通る者の荷を改める。誰が呼んだか禁酒番屋なるものまで出来てしまう。しかし簡単に諦められない酒飲みもあったようで
近藤「番頭さん、ひとつ頼みがある。この酒を1升みどもの小屋まで届けてくれ」
番頭「近藤さま冗談じゃあありません、ここで飲んで頂くのでも、おっかなびっくりでございます。門の所にある番屋で調べられてしまいますから、届けることは出来ません。」
近藤「そこをどうにか、どうにか頼むぞ番頭。金銭に糸目はつけんぞ、」
番頭「近藤さま、ちょっと、あー、行っちゃったよ。どうしたものか、困ったなぁ。」
手代1「番頭さん届けてあげましょうよ、長年の付き合いなんですから」
番頭「そりゃお前にいわれなくても分かってる。私だって届けてあげられるなら届けてやりたいがなぁ」
手代1「私にひとつ考えがあります。向こう横丁にあります菓子屋で近頃売り出されている南蛮渡来のカステラとかなんとかいうお菓子があるようでして、そのカステラの折の1番大きいのを買いまして、中はこっちへ出して、そこへ五合徳利を2本入れて持っていけば分かりっこありませんよ。金銭に糸目はつけないってんでしょ?ですからカステラのお代も向こうで頂いて、残ったカステラはみんなで食べましょうよ」
番頭「お前そんな上手い具合に行くかね」
手代1「私に任せて下さい。大丈夫ですよ、行ってきまーす」
さあ、この男がすっかり菓子屋のナリを致しまして
手代1「お願いでございます」
役人「通れ。いずれへ参る?」
手代1「近藤さまの御小屋へ通ります。向こう横丁の菓子屋でございます。カステラのご注文で持参致しました。」
役人「ほぉ、カステラ、、ご同役聞きましたか、家中きっての酒飲み近藤が、酒を止められた途端カステラを食うかね、菓子屋、役目の手前、手落ちがあってはならん。中身を取り調べる。その包みをこちらへ出せ。」
手代1「いえ、あのー、これはカステラ」
役人「カステラは分かっておる。役目の手前じゃ。出せ。」
手代1「えー、どうもこれはご進物のようでございまして、ここで水引を取られたりすると困るんでございますが、」
役人「なに?進物?遣い物か、ははぁ、なるほど。よし。持って通って良いぞ。」
手代1「は、左様でございますか、では失礼致します。よっ、どっこいしょ」
役人「おい待て菓子屋、カステラはそんなに重くないぞ、こちらへ出せ。中を改める。控えておれ、何じゃこの徳利は、」
手代1「あのー、新発売の水カステラといいまして」
役人「何を言っておる。門番、湯飲みを持ってこい。いや大きい方が良い。控えておれよ。役目の手前じゃ。中を取り調べる。ん?(飲む)あー、久方ぶりの水カステラであるな(飲む)ご同役もいかがでございますかな?」
同役「良いところへお気づきでございますな。ありがとうございます。」
役人「湯飲みが空いたら再度こちらへお貸し願いたい。こら、このようなカステラがあるか、この偽り者め、たち帰れ!」
手代1「ごめんなさーい。番頭さん行って来ました。」
番頭「どうだった。上手くいったかい?」
手代1「初め上手くいったんですけど、口滑らせちゃって、偽り者、たち帰れー」
番頭「なんだい全く、じゃあ役人に1升タダで飲まれたのかい」
手代2「番頭さん、今度私が行ってきましょう。良い手があるんです。折りに入れて隠すから疑われるんですよ。今度は私が油屋になりましてね、油徳利に酒入れて、それで持っていけば分かりっこありませんから、私に任せて下さい。行ってきまーす。行って来ました。」
番頭「早いね。どうだった?」
手代2「お酒取られちゃって、偽り者ー」
番頭「一緒じゃないか、酒の番をする役人に2升もタダ飲まれて偽り者呼ばわりなんてこんなバカな話ないよ」
手代3「番頭さん、今度私が行ってきます」
番頭「もうよいもうよい。お前が行ったら3升だよ」
手代3「冗談言っちゃいけませんよ、酒なんか持っていきませんよ。小便持って行きます。」
番頭「バカなこと言っちゃいけない」
手代3「良いんですよ。敵討ちですから、行ってきまーす。、、お願いでございます。」
役人「とぉーれー、いずれへ参るぅ?」
手代3「近藤さまの御小屋へ通ります」
役人「こぉんどぉ?ご同役また来たよ。何だ貴様は」
手代3「へぇ、手前、向こう横丁の小便屋でございます」
役人「しょんべんや?その持っているものは何だ?」
手代3「えぇ、これは小便のご注文で、」
役人「バカモノ、世の中に小便を注文する奴があるか、」
手代3「何でも松の肥やしにするとか何とかで、上等なのを1升持ってこいと、」
役人「なーにを言っておる。出せ、ここへ、こっちへ出せ、控えておれ、何を笑っておる。役目の手前、手落ちがあってはなら、、ご同役、今度は燗をして持ってきたようである。控えておれこの偽り者。役目の手前中身を取り調べる、ご同役、いつもお先ですみません。頂きます。控えておれ、役目の手ま、、ん?けしからん、かような物を持参しよって」
手代3「いや、ですから、私ははじめから小便だと申しております」
役人「うー、この、正直者めー」
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