GERA後生鰻
GERAという配信アプリで
『まんじゅう大帝国の落語良いとこ1度はおいで』
という、落語の紹介や落研での思い出等々、僕らと落語周りの話を中心にする配信をやっています。
6月26日(金)更新分で後生鰻という噺についてお喋りしました。
以下、粗筋説明がてら実演したものです。音だとあんまり分からなかった、とか、たまたま今度5~6分で落語をやらないといけないんだよね!という人へ向けて。
↓↓
せがれさんにご家督をゆずったご隠居さんが大変に信心のなさる方で、本当に心から殺生というものを嫌い、夏は蚊も殺さないという、そういう方ですから、毎日毎日観音様へお参りに行って、その帰り道、いつもとは違う道を行ってみますと向こうが川でこっちが鰻屋という所に出ます。鰻屋の親方が、蒲焼きをこしらえようってんで、鰻を裂こうとしている
隠居「これこれこれ、これ」
親方「へい。いらっしゃい。お二階へどうぞ」
隠居「何だい二階って、わたしゃ客じゃないよ、お前は何をしてるんだ」
親方「えぇ、この鰻を裂くんです」
隠居「裂く?鰻の命を取ろうってのかい?」
親方「命を取ろうってそんな、、、お客様の注文で蒲焼きに、、」
隠居「蒲焼きにしてもいいが殺してはいけない」
親方「そうはいかない、どうも困りましたな」
隠居「前の川へ放り込んでやりな。助けてやりな。鰻は喜ぶよ。」
親方「店は潰れるんですよ」
隠居「んー、では、その鰻を私が買って逃がすのは構わないかい?そうかいそうかい、その鰻はいくらだい?二円?二円か。さ、ここへ置くからザル入れてこっちへよこしな。全く、かわいそうなことしやがって、なぁ。おい鰻、あんな奴に捕まるんじゃないぞ。嬉しいか、うん?もう捕まっちゃいけないぞ」
ってんで、前の川へぼちゃあん。あぁいい功徳をした。とその日は帰りまして翌日、また前を通りますと、向こうも商売ですからまた鰻を裂こうとしている
隠居「これこれこれ」
親方「あぁ、また来たよ。うー。昨日はどうも。」
隠居「昨日はどうもじゃないよ。どうしてそう殺生をするんだ」
親方「そう言われましても、お客様の注文で蒲焼きに、、、」
隠居「また蒲焼きかい。え?私が買う。買って逃がしてやろう。いくらだい?二円?昨日と同じ?昨日より小さいけどねぇ。いやいや、大きさは関係ない。同じ命だ。二円出すからザルへ入れて、全く。いいか、あんな奴に捕まっちゃいけないぞ」
ってんで前の川へぼちゃあん。あぁいい功徳をした。その翌日通ると今度はすっぽんの首を切って血を採ろうとしている
隠居「おいおいおい、何してんだ!なーにしてんだ!」
親方「あ、また来た。これ今血を採るんですよ」
隠居「冗談じゃない。血を採るなんて、お前の血を採れ、本当にぃ、かわいそうに、それはいくらだい?八円?金のことは言っちゃいけない、こっちへよこしな。かわいそうなことしやがって、お前なんざ今にロクな死に方しないよ、全く。いいか、あんな奴に捕まっちゃいけないぞ」
ってんで前の川へぼちゃあん。あぁいい功徳をした。なんてんで毎日のようにすっぽんは八円、鰻は二円と買って逃がすので鰻屋の方じゃ、安定した収入だと喜んでいたのですが、そのうちに、ぱったりとご隠居さんの姿が見えなくなりまして
親方「どうしたんだろうなぁ、あの隠居。ちっとも来なくなっちまったなぁ」
おかみさん「そりゃあそうよ。来ないわよ」
親方「何で」
おかみさん「何でったってそうじゃないのよ。悪どいことはしちゃいけないよ。向こうが二円なら二円で大きな鰻を逃がしてりゃ気持ちがいいよ、それがだんだん小さい鰻になって、この間なんざドジョウを一匹二円で売ったのよ。違うとこ行ってんのよ。来ないわよ。」
親方「そんなぁ。嫌だよぉ。あの人が来てくれないと俺は一生懸命鰻を裂いて、一日中蒲焼きにして、人に食べてもらって稼がないといけないじゃないか、」
おかみさん「それでいいのよ。それが普通。おかしくなっちゃってんのよ。」
親方「おい、おい、あれご隠居じゃないか?」
おかみさん「あら本当だ。驚いた。歳だから患ってたのよ、ちょっと痩せたみたいね。」
親方「そうだな。さあさあ鰻だ鰻。鰻出せ。」
おかみさん「ないわよ」
親方「なんでだよ。なんで鰻が無いんだよ」
おかみさん「なんでったってあなたがどうせ今日も隠居は来ないだろうからって買い出しに行かなかったんじゃない」
親方「あーしまったそうだった。ドジョウは?」
おかみさん「ドジョウはお付けの実にして食べちゃった」
親方「おいおいどうするよ。活きてる物置かないと稼げないよ。何でもいい、金魚は?」
おかみさん「金魚は三日前に死んじゃったじゃない」
親方「あぁそうか。猫は?ミケはどこ行った?」
おかみさん「ミケ、、、はいないどころか、猫をそもそも飼ってないわ」
親方「あぁそうか、そうなのか。そうだとしたら、何で出てきたんだろう?まあいいや、とにかく活きてる物ないか?あ、赤ん坊がいた、これにしよう」
ヒドイ奴があるもんで、赤ん坊を裸にして裂き台の上へ乗っけて
親方「坊や、おとなしくしててくれよ。一儲けするから。へいらっしゃい!」
隠居「おーい!おいおいおい!久しぶりに来てみたら!何してんだ!」
親方「えぇ、お客様の注文で蒲焼きに、」
隠居「バカ野郎、どんな店だ!今助けてやるからな。私が買う。いくらだい?百円?命が助かるんだ安い安い。ほら持っていけ、赤ん坊をこっちへよこせ。泣いてるじゃないか、かわいそうに、よしよし、泣く泣くな。いいかい?あんな奴に捕まっちゃいけないぞ」
ってんで前の川へぼちゃあん
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